注目のAI関連株3選 投資時の注意点や注目ポイントは?


株式の投資手法のひとつに、注目を集めている分野や業種などを重視し、その関連企業に投資する「テーマ株投資」があります。テーマ株投資は資金流入が起こりやすく、市場の成長が期待できるといったメリットがありますが、投資先企業の経営状態に加え、テーマ自体をよく選別することが重要となります。

テーマ株投資のなかでも、近年投資家の注目を集め続けているのが「AI(人工知能)」です。AIは過去に何度かブームとなってきましたが、ここ数年間のブームが以前と異なるポイントやAI関連市場の今後の展開などを考察していきます。

目次

  • AI関連株とは?
    • AI関連株とは?
    • 2000年代に始まった「第三次AIブーム」
    • AI関連株の特徴
  • AI関連市場の将来性は?
    • AI市場の規模
    • AIの活用分野にはどのようなものがある?
  • AI関連株に投資する魅力
    • 魅力1:AI市場の伸びしろの大きさ
    • 魅力2:投資対象領域の広さ
    • 魅力3:株価上昇余地が大きい
  • 注目の中小型AI関連株3選
    • FRONTEO(マザーズ/2158)
    • Appier Group(マザーズ/4180)
    • ALBERT(マザーズ/3906)
  • AI関連株に投資する際の注意点
    • 注意点1:注目市場のためGAFAなどの大手が参入する可能性がある
    • 注意点2:2022年は新興市場が荒れており、有望銘柄でも市場の影響を受けやすい
    • 注意点3:市場評価(PER)が高く、業績成長が追いついて伸びてこない可能性がある
  • まとめ:AI関連株は業績を見極めて投資しよう

AI関連株とは?

AIとは人間の思考・判断などを部分的にコンピュータやソフトウェアによって再現したものですが、人間のそれとは異なり体調やメンタルなどに左右されないため、確実性が必要なさまざまな事業分野への応用が進められており、画像解析や言語処理などAIの発展を支える事業を行っている銘柄がAI関連株となります。

AI関連株とは?

AIは単独の技術ではなく、AIを有効活用するためには裾野の広いさまざまな技術が必要となります。その例として、自然言語処理・画像認識技術・ビッグデータに関わるICT(情報通信技術)・深層学習(ディープ・ラーニング)などがありますが、これらの技術は種々の産業でさらなる発展・拡大が見込めるため「AI関連株」の範囲は今後も変化していくと予想されます。

2000年代に始まった「第三次AIブーム」

AIはコンピュータの普及がはじまった1950年代後半から何度かブームを迎えています。2000年代 からはじまったAIブームは3回目と言われていますが、今回のブームは過去のものとは異なり、一過性のもので終わらないと見込まれています。

第一次AIブームはコンピュータの活用により「推論」と「探索」といった人間の知的活動を代替できると期待されており、特に自然言語処理による自動翻訳が注目されていました。しかし、事前に入力されたプログラムに沿ってゲームの対戦相手や計算を行うなどの単純な問題には対応することができましたが、コンピュータの性能が低く複数の前提条件が絡まり合う複雑な現実社会の問題には対処できないことがわかりブームは終息していきました。

第二次AIブームは専門知識を入力することで専門家のような推論を行うことができる「エキスパートシステム」が登場したことで1980年代にブームを迎えます。エキスパートシステムは画期的なプログラムでしたが、自らで専門知識を集めることができず、人間がプログラムとして入力する必要があったため、日々発生する膨大な情報を処理・入力し続けることが困難となり1990年代の半ばにはブームの終息を迎えてしまいます。

第三次AIブームは2000年代に入り情報化社会が到来したことによってビッグデータの構築・利用が本格化したことでAIが自身で成長のための情報を獲得する「機会学習」が行えるようになりブームが始まりました。そして2010年代には、ビッグデータから得られる情報のなかで特に着目すべき特徴をAIが把握する「ディープラーニング(深層学習)」の利用が急速に進んだことでAIの研究・開発は飛躍的に進み、現在まで続くブームの原動力となっています。

AI関連株の特徴

AI関連の技術は新しいものも多いため、マザーズ市場のスタートアップ間もない企業や中小型株規模の企業も参入しやすく、成長性が期待されている銘柄が多くなっています。

開発の成功や業務提携・大手企業の製品への採用といった好材料により株価が値上がりしやすくなっていますが、期待先行により急騰し実態以上の株価まで上昇してしまい、過熱感が冷めるとともに株価も本来の水準まで急落する恐れがあります。

AI関連市場の将来性は?

過去のAIブームはコンピュータの性能やAIの学習に関する問題で期待していた目標に達することができずブームは終息してしまいましたが、第三次AIブームは過去の問題に対応しさまざまな分野への応用が進められており高い将来性を秘めています。

AI市場の規模

AI市場は、企業のDX推進なども追い風に拡大を続けています。2021年2月時点で、米・International Data Corporation(IDC)は2021年の市場規模を約3,275億ドルと予測しています。

また、世界的流行となっている「COVID-19」(新型コロナウイルス)の影響により、ウイルスの解析や予防といった分野での活用も進み、経済活動の自粛や人流の制限といった環境下でもプラス成長を維持しています。

AIの活用分野にはどのようなものがある?

AI技術はビッグデータやディープラーニングなどの周辺技術と組み合わさり、さまざまな分野での導入・利用が進められています。投資判断において重要な要素となる、AIの活用分野(セグメント)について確認しておきましょう。

▽主なAIの活用分野

自動車関連自動運転や製造工程における検査工程などでAIの活用が進んでいます。特に自動運転技術は運転者を不要とする完全自動化の実現に向けて各国の競争が激化しています。市場規模も大きいことからAIの将来性を左右する重要なセグメントといえます。
コンシューマーエレクトロニクスロボット掃除機やスマートスピーカーなどの身の回りの家電でもAIが身近となっています。例えば、エアコンは冷暖房効率と天気予報を組み合わせて運転条件を決定できるものも登場しています。
ヘルスケア新薬の開発だけでなく、ディープラーニングを活用したがんの早期発見や画像診断処理技術によるMRI画像の高精度診断などでAIが活用されています。このほかにも、着けているだけで歩数や脈拍・血圧などの健康状態を測定・記録できるスマートウォッチにもAIが組み込まれ、心臓の健康状態をチェックできるようになるなど既存の商品分野における利用も期待できます。
農業農業は種まきや収穫のタイミング、病気の発生の見極めなど自然に左右されることが多く、人の経験や知識が重要となる分野でしたが、現在はAIの活用により気象データや衛星画像を解析して病気の発生・土壌の栄養状態・収穫量の予想などが行われています。このほかにも自動運転技術を応用し、農薬の散布や収穫作業などが自動化され、AIにより徐々に農業は人手を必要としなくなって行くと予想されます。
運輸・物流運送業では必要なものを・必要なタイミングで・必要なだけ送る必要があるため、スムーズな物流が行えないと荷物が倉庫に滞留してしまったり、消費者や工場に商品・原材料が届かないなどの問題が生じます。AIの活用により人員配置の最適化や配送ルートの適正化といった取り組みが進められています。
小売小売業では商品の仕入れ量を不良在庫や商品の不足による機会損失を避けるため適切な量の商品仕入れを行う必要があります。商品にはトレンドや季節性があるほか、その日の天候によっても販売量が左右されるため、商品の発注にはさまざまな情報を考慮し行う必要がありましたが、現在は大手スーパーマーケットなどでAIによる発注管理システムが導入され、ビッグデータやディープラーニングを活用した最適な販売予想を行うと期待されています。

AI関連株に投資する魅力

テーマ株の常として、注目を集めている間は資金を集めやすく株価も良好な場合が多いのですが、ひとたびブームが去ると株価が急落してしまうケースは少なくありません。しかし、AI関連株はすでに長期間のブームを維持しており、導入事例についても一定の成功を収めつつあるほか、さまざまな分野に波及していく将来性が魅力となっており、息の長いテーマと言えそうです。

魅力1:AI市場の伸びしろの大きさ

市場規模の大きい自動車関連のAI利用は、自動運転の完全自動化に向けて現在も発展途上の段階にあり今後も継続した市場の成長が見込めます。また、AI市場全体としても引き続き、拡大していく見込みです。IDCは世界AI市場が、2021年は3,275億ドルのところ、2024年には5,543億ドルに到達すると見ています。

魅力2:投資対象領域の広さ

AI技術は現在でも数多くのセグメントで利用されていますが、未だ可能性を秘めた新しい技術であるため、その利用範囲は今後も拡大していくと予想されています。AI関連株は複数のセグメントにまたがった広い投資対象領域を持つことができるため、分散投資の効果も得ることができます。

魅力3:株価上昇余地が大きい

AI関連技術には比較的規模の小さい企業も多く参画しています。中小型株は発行済株式数の点から材料によって変動しやすい特徴があり、武器となるAI関連技術の開発や導入に成功した場合には大きな株価の上昇が期待できます。

注目の中小型AI関連株3選

中小型のAI関連株のなかで、安定的な成長を行っている企業や独自の強みをもつ企業をピックアップし、決算や株価の推移について解説していきます。

FRONTEO(マザーズ/2158)

FRONTEOは、2021年に注目を集めたAI関連株で主に自然言語処理に特化した独自開発のAIエンジンを用い、ヘルスケアやリーガルテック事業に参入しています。2022年3月期 第2四半期の決算発表では、リーガルテックAI事業の好調を受け、売上高が59億2,500万円(前年同期比+17.4%)、営業利益は12億600万円となっています。

株価は2021年11月26日に上場来高値となる5,300円まで達したものの、その後は調整に入り、2022年1月28日現在は半額以下の2,225円となっています。

Appier Group(マザーズ/4180)

Appier Group は、AIコンサルティングやカスタマーエンゲージメントなど、企業の課題を解決するAIプラットフォームの提供を行っています。2021年12月期 第3四半期の決算発表では、売上高は87億5,600万円(前年同期比+41.8%)、営業損失は9億6,800万円。前年同期(第3四半期連結累計期間)の営業損失は13億8,400万円であったため、前年同期比で言えばプラス4億1,600万円となり、赤字幅は縮小していることになります。

2022年1月28日現在、株価は一定の範囲内での変動を繰り返しています。黒字転向に備えて株式を取得する場合は、チャートを確認し、底値付近での取得を狙うことをおすすめします。

ALBERT(マザーズ/3906)

ALBERTは、ビッグデータの分析技術や高性能AIチャットボット「スグレス」を提供する企業です。同社のソリューションは製造業の工数削減に効果を発揮し、大手企業への導入も進んでいます。2021年12月期第3四半期の決算発表では、売上高は23億9,900万円(前年同期比+25.5%)、営業利益は2億7,100万円(前年同期比+215.5%)。今後は、安定した成長を維持できるかがポイントと言えそうです。2022年1月28日現在、株価は調整局面が続いており3,525円となっています。

AI関連株に投資する際の注意点

AI関連株はさまざまなセグメントでの活用が期待されており、将来性に優れたテーマ株ですが、投資にあたってはリスクもあるため、AI関連株の注意点について把握しておきましょう。

注意点1:注目市場のためGAFAなどの大手が参入する可能性がある

AI市場は世界的な注目を集める成長産業ですが、Google、Amazon、Facebook(現Meta)、Appleなどの大手IT企業が本格的に参入した場合、IT市場構造が一変し、現在用いられている技術が陳腐化してしまい、所有しているIT関連株の業績が悪化する可能性があります。GAFAを始めとした大手IT企業の動向に注意が必要です。

注意点2:2022年は新興市場が荒れており、有望銘柄でも市場の影響を受けやすい

2021年は、年初にマザーズ市場が大きく躍進しましたが、その後は下落に転じ、2022年はその流れを引き継いで大きく下落する荒れた市況となっています。こうした相場では有望銘柄も市場の影響により、経営状態とは無関係に株価が乱高下する恐れがあります。

注意点3:市場評価(PER)が高く、業績成長が追いついて伸びてこない可能性がある

PERは「株価÷1株当たりの利益」によって算出され、倍率が高いほど市場が企業の成長性を高く見積もっていることになります。中小型のAI関連株のPERは100倍を超えているものもあり、多少の好決算では株価に織り込み済みとなり反応しないばかりか、成長が鈍化した場合は株価が大きく下落する恐れもあります。

まとめ:AI関連株は業績を見極めて投資しよう

AI技術はさまざまなセグメントで活用されているため、AI関連株も数多くの種類があります。以下のようなポイントを押さえつつ、業績を見極めたうえで銘柄を吟味することを心がけましょう。

・ビジネス基盤の強さ、ビジネスモデルにどれだけ堀(MOAT)があるか確認しよう
AI技術そのものは古くから研究されているものの、産業への本格的な導入は歴史が浅いと言えます。まだまだ大手IT企業の本格的な参入も顕著ではありませんが、市場の成熟に伴い、大手企業が参入する可能性はますます高まるでしょう。その際、参入障壁の低いサービスを提供しているAI関連株の場合、業績に大きな影響を及ぼしてしまう恐れがあります。

複数のセグメントでの導入実績や、大手企業との取引事例など、先行者利益を充分に確保することが見込めるか。強固なビジネス基盤や競合優位性にもとづく参入障壁、つまり“堀”を築けているかを確認しておくとよいでしょう。

・業績の先行指標となるユーザー数やチャーンレートなどのKPIを確認しよう
業績の成長は現在だけでなく、将来の見込みも合わせて確認する必要があります。業績を見極める際のポイントとして、ユーザー数やチャーンレート(解約数)の推移や事業計画に対する進捗状況などのKPI(重要業績評価指標)を重視することをおすすめします。

・市場に左右されず良い銘柄に投資して成長を待つスタンスが求められる
企業の成長には時間が必要となるため、その間には市況によって業績と無関係に株価の下落が生じることもありますが、有望銘柄を取得しじっくりと成長を待つことが重要です。

・市場評価(PER)が高く、業績成長が追いついて伸びてこない可能性がある
PERの高い銘柄は投資家から高い成長性が期待されているため、成長が鈍化した場合などは株価が足踏みしたり下落に転じる恐れがあります。またAI関連株を選ぶ場合、投資先企業の業績だけでなく、AI技術の発展や市場規模の拡大などを合わせてチェックしていくようにしましょう。

文・菊原浩司