FIREとは? お金の専門家が教えてくれない資産を増やす運用の秘訣


「FIRE」(ファイア)というワードを耳にする機会が増えてきました。まとまった資産を形成し、早期退職を目指すムーブメントのことで、書店によってはFIREの特設コーナーが設けられているほどです。

この記事ではFIREの基礎知識のほか、FIRE実現のために必要な資産規模やアクションについて説明していきます。特に資産を増やすための方法のひとつとして、大きなリターンを狙える中小型株投資への集中投資についても、後半触れていきます。

目次

  • FIREが注目される理由とは?
    • そもそも「FIRE」とは?
    • 「経済的自立」とは?
    • 「4%ルール」とは具体的にどんなもの?
  • FIREのメリットとデメリット
    • FIREのメリット1:労働から解放される
    • FIREのメリット2:時間の自由度が増える
    • FIREのデメリット1:経済動向や相場環境によって資産が減ることもある
    • FIREのデメリット2:キャリアを伸ばすことができなくなる
  • FIREを実現させるために必要な準備とは?
  • お金の専門家が教えてくれない資産運用のコツ
    • 資金管理を徹底する
    • リスク資産の中でも目的を分ける
    • リスク資産の一部で集中投資をする
  • 中小型株投資の魅力とは?
  • 中小型株投資の注意点
    • リスクを回避するためにできること
  • まとめ:FIRE実現には戦略的な集中投資も検討しよう

FIREが注目される理由とは?

そもそも「FIRE」とは?

FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の略語で、日本語では「経済的独立による早期リタイア」といった意味です。英語では単語を略すときに「.」(ドット)を使うので、「F.I.R.E.」と表記されることもあります。元々は欧米の若者の間でFIREを目指す動きが活発になり、最近になって日本でもFIREを目指す人が増えてきたという経緯があります。

日本でもFIREを目指す人が増えてきた理由は複合的ですが、背景としては働き方や生き方に対する考え方が多様化しつつあることや、日本でも「貯蓄から投資へ」といった風潮が強まり、資産形成で目指すゴールとしてFIREを掲げる人が増えたことも要因と言えるでしょう。

「経済的自立」とは?

FIREの実現のためには「経済的自立」を果たすことが前提となります。ここでいう経済的自立とは、大雑把に言えば、「一生働かなくても、資金が生涯枯渇しない状態」のことを指します。

一生働かなくても資金が枯渇しないためには、それだけの資産がすでに形成されているのか、もしくはリタイアしても収入が入ってくる仕組みを構築することが必要になります。FIREを目指す多くの人が、基本的には後者の仕組みを構築することを目指しています。

リタイアしても収入が入ってくる仕組みとして、まず考えられるのが「投資・資産運用」です。ある一定程度まで投資資金を膨らませれば、「利回り」(リターン)だけで生活していくことが可能になります。記事の後半、この投資の手法について詳しく説明していきます。

「4%ルール」とは具体的にどんなもの?

FIREに関連して「4%ルール」という概念がよく紹介されますので、説明しておきます。4%ルールとは一般的に、年間で支出する金額の25倍の資産を築けた場合、資産が年間4%増えれば生活費をまかなっていけるという考え方のことを指します。

仮にあなたが年間で支出する金額が500万円だとします。その場合、500万円の25倍は1億2,500万円ということになります。1億2,500万円の4%は500万円であるため、資産が年間4%増えれば、投資の元金を取り崩さずに生活し続けることが可能になります。

ただし、この4%ルールには、注意点があります。それは、米国の投資市場を対象とした学術研究を理論根拠としていること。研究では株式と債権を一定割合で保有することを前提にしていること、4%という数字には米国のインフレ(物価上昇)が考慮されていること、税金や為替の影響を考慮していないこと、などです。

そもそも日米の株式・債券市場の成長率やインフレ率には差があるため、一概に4%ルールが当てはまるとは限らない点を理解しておきましょう。

FIREのメリットとデメリット

ここまでの説明で、FIREについて基礎知識は身についたかと思います。続いて具体的に、FIREのメリットとデメリットを比較していきます。あなたがメリットの方に大きな魅力を感じれば、FIREを目指す意義は十分にあると言えるでしょう。

FIREのメリット1:労働から解放される

FIREを実現するメリットのひとつは、「労働」から解放されることです。基本的には築いた資産を元手に生活費をまかなっていくため、労働によって定期収入を得る必要がなくなるわけです。

厳密には、「したくない労働から解放される」と表現した方が正確かもしれません。人によっては、自分がしてきた仕事にやりがいを感じているケースもあります。中にはFIREを実現できる状態にあっても、その仕事を自ら好んで続ける人もいます。

一方、投資や資産運用を続けるうえでは、相場の状況を確認したり、経済の先行きを予想したり、運用商品を見直したりと、一定の「手間」は掛かります。労働とは言えないまでも、こうした手間からは逃れられないことも、頭の片隅に入れておきましょう。

FIREのメリット2:時間の自由度が増える

FIREを実現すると、時間の使い方の自由度が増えます。会社員として企業に勤めている場合、仕事のスケジュールが1日の時間の使い方のベースとなります。しかし企業に勤める必要がなくなれば、1日の多くの時間を自分の好きなように使えます。

家族との時間を大切にしたいなら、自由にその時間を増やせます。趣味に時間を多く使うことも可能になるほか、健康管理のために毎日数時間ゆっくりとジムで汗を流すことも難なくこなせるはずです。FIREを実現できれば、いかに自分の人生が仕事に縛られていたかを実感するかもしれません。

FIREのデメリット1:経済動向や相場環境によって資産が減ることもある

FIREを実現した場合、基本的には投資や資産運用のリターンで生活費を捻出していくことになります。そのため、投資や資産運用で当初想定していたリターンが得られなくなったり、むしろ資産が目減りしてしまったりすると、その後の生活に黄信号が灯ります。

米国の株式市場は中長期的に右肩上がりの状況が続いています。そのため米国市場で分散投資をすれば、安定したリターンを確保し続けることができる可能性は高めであると言えます。しかし投資に「絶対」はあり得ません。長い下落基調に陥る可能性もあります。

仮にいま安定してリターンを得られ続けているときでも、上記のようなことが将来起こり得る可能性を考えると、労働で定期収入を得ていないことが心理的なプレッシャーとなることもあります。そのため中にはFIREを実現できる状況であっても「保険」として労働を続ける人もいます。

FIREのデメリット2:キャリアを伸ばすことができなくなる

FIREを実現して労働することをやめると、当然、キャリアを伸ばすことができなくなります。キャリアアップを目標として、そのために頑張ることに生きがいを感じてきた人も少なくないはずです。仕事をやめてその生きがいが失われると、次第にメンタルヘルスに不調をきたす人もいます。

せっかくFIREを実現したのに精神的に参ってしまっては本末転倒です。FIREを目指す人は、FIRE実現後の自分の生きがいについて、一度じっくりと考えてみる必要があるでしょう。

FIREを実現させるために必要な準備とは?

FIREを実現するためには、まず年間の生活費を算出することが第一歩です。このことにより、FIREを実現するために必要な資金がいくらなのかが可視化されます。

続いて、資産運用のシミュレーションを作成します。資産運用は「FIREを実現するまでの資産運用」と「FIREを実現してからの資産運用」に分けて考えると良いでしょう。FIREを実現するためには、最初はある程度のリスクを取りながら、大きなリターンを狙うのが一般的です。一方でFIREを実現してからは、大きなリターンより安定的なリターンを目指すことが重要となります。

シミュレーションを繰り返し、自分なりの資産運用の計画ができたら、あとはそれを実行に移すのみです。また、日々の暮らしでの節約や貯金も堅実に行っていくことで、FIREの実現は早まります。

お金の専門家が教えてくれない資産運用のコツ

資産運用に初めて挑む人は、どういう姿勢で臨んで良いのか分からず不安なはずです。そんなとき、ファイナンシャル・プランナーなどのお金の専門家に相談するのもひとつの手ですが、どうしてもリスクの大きい資産運用や、そのコツはなかなか教えてくれません。

しかし、前述のとおりFIREを実現するためには“一生働かなくても困らない経済状況”を手に入れる必要があります。そのためには、ある程度のリスクをとりながら、資産運用でハイリターンを狙っていくことが避けられない場合がほとんどでしょう。

ここでは、お金の専門家が教えてくれないFIREを実現するための資産運用のコツを3つ紹介します。

資金管理を徹底する

まず「現金」と「リスク資産」の割合を決め、全資産をリスク資産に投じないことを徹底しましょう。ここで言うリスク資産とは、株式や不動産など、価値が変動する資産のことです。

一般的には、若いうちほどリスク資産の割合を大きくとれます。若いということは、その先の投資可能期間が長いということ。たとえリスク資産の価値が大きく目減りしても、新たな労働収入を元手に挽回が可能と考えられます。

リスク資産の中でも目的を分ける

リスク資産におけるリスクを「分散投資」で軽減させる視点も重要です。

例えば、「積立投資」をすると、投資のタイミングを分散させることができ、相場の下落直前に一括投資をしてしまう、といったことが回避できます。日本では税制優遇が魅力の「NISA」(ニーサ)や「iDeCo」(イデコ)でも積立投資が可能です。

一方、リターンとリスクは表裏一体で、リスクの軽減を重視し過ぎると、大きなリターンを実現するのが難しくなります。リスクをとって大きなリターンを得るためには、日本市場や米国市場に上場している個別株に投資するのが一般的な方法です。

リスク資産の一部で集中投資をする

前述の通り、ある程度大きなリターンを得るためには、あえてリスクをとって個別株などに投資することも必要となります。早期にFIREを実現するためには、リスク資産の2割前後などを個別株に集中投資するといった戦略も検討する必要があるでしょう。

もちろん、個別株投資を始める際は入念な下調べが必要という前提はありますが、FIREを目指すのなら特に時価総額が300億円未満の中小型株への投資は魅力的でしょう。中小型株は株価の上昇余地が大きく、場合によっては株価が10倍、さらには100倍になるケースもあるからです。

中小型株投資の魅力とは?

前述の通り、中小型株は株価の上昇余地が大きく、短期間で急激な上昇が起こることもあります。世界が注目する技術を発表したり、業績が大きく向上したりすると、一気に個人投資家や機関投資家からの注目が集まり、買いが殺到するからです。

株価は需給関係によって決まります。買いの需要が売りの需要を大きく上回れば、株価は基本的に上がります。時価総額が大きな大型株の中には、中小型株の時代に株価の大幅な上昇を何度も繰り返した銘柄が少なくありません。

中小型株投資の注意点

一方、中小型株投資には注意点もあります。最も注意すべき点は、大きなリターンを得られる可能性もある一方、暴落に見舞われるリスクも高いことです。その背景には、中小型株の株主は個人投資家中心であるため、資金の出入りが激しいことなどがあります。

リスクを回避するためにできること

中小型株投資でこうしたリスクを回避するためには、その企業の成長可能性を自分なりに分析し、これまでの業績や今後の決算発表の内容をチェックすることが求められます。

その企業が有望な事業領域でビジネスを展開していたり、ニッチな市場でトップシェアを誇っていたりする場合は有望性が高まります。民間調査会社が発表している市場調査の結果などを参考に、自分なりに分析してみましょう。

上場企業であれば、四半期ごとに決算発表が行われます。自分が保有しようと思っている銘柄もしくはすでに保有している銘柄に関しては、過去の業績を頭に入れた上うえで、決算発表ごとに、業績が伸びているか、市場予想を下回っていないかなどをチェックするようにしましょう。

前述の通り、早期にFIREを狙うならリスク資産の一部を個別株投資、特に中小型株へと充てたいところですが、中小型株であればどんな銘柄であっても良いわけではありません。日本と米国の株式市場だけでも、かなりの数の中小型株があります。保有する銘柄はこうした中からしっかりと厳選すべきです。

まとめ:FIRE実現には戦略的な集中投資も検討しよう

この記事ではFIREの基礎知識のほか、FIREを早期に実現するためのコツについて解説してきました。

投資や資産運用では、一部の資産価値の大幅下落による「一発退場」を避けるために、一定程度分散投資することは必須となります。しかし、 FIREを実現するために必要な資産規模はハードルも高いため、リスク資産の一部をハイリターンが狙える中小型株に回すなどの工夫をしない限りは、なかなか到達できないかもしれません。

大きなリターンを叩き出す中小型株を発掘するためには、日々の情報収集が欠かせません。「有望な事業領域は?」「株式の売買が増えている中小型銘柄は?」「最近新たな技術を発表した企業は?」。こうした視点を持って、さまざまな経済ニュースに接したいところです。

文・岡本一道