2022年3月期企業の高進捗率ランキング

決算発表一巡。今年はイレギュラー的な動きで投資チャンス拡大

2月中旬の決算発表シーズンが一巡しましたが、3月決算企業については第3四半期累計(4-12月)の業績発表ということになりました。この発表段階で企業側は第4四半期(1-3月)の状況を概ね織り込む形で通期計画を見直しているはずです。ですので、通期計画の修正を行っていない企業のうち、第3四半期累計の進捗率が75%に達していれば、基本的には計画通りの着地が見込めると考えられます。

例年、決算発表シーズンにおいては、進捗率の高さから通期計画の上振れや下振れなどへの思惑が高まりやすく、上期の進捗率なども鑑みて先回り的な動きなども出やすい期間に当たります。そのため、決算発表と同時に短期的な資金が集まりやすく、乱高下を見せてくる銘柄も少なくありませんでした。

ただし、今回の決算発表シーズンにおいては、例年とは違う動きが見られました。要因としては、2021年12月のIPO(株式の新規上場)ラッシュとその銘柄群の下落に伴って個人の需給状況が悪化したほか、外部要因では世界的なインフレ加速によって金利上昇懸念が高まり、株式市場に流入していた資金を引き揚げる動きが、特にグロース株と呼ばれるような成長力のある大型株中心に強まったことが挙げられます。米国においては金融引き締めを加速させるとの見方からこの動きが顕著だったほか、新型コロナウイルス変異株(オミクロン)の流行、さらにウクライナ情勢の緊迫化なども株式市場から資金を引き揚げさせる一因になりました。

そのため多くの企業が株価の調整を継続しているなかで決算を発表したわけですが、好業績であっても需給状況の悪化によって一時的な評価にとどまっており、逆にリスク回避的な利益確定の動きで売られる銘柄も目立っていました。ただし、米国の利上げを株式市場は徐々に織り込んできたほか、新型コロナウイルスにおいても各国でピークアウトの様相を見せています。日本においても緊急事態宣言は行わず、経済を回していく方向性だと考えられるため、株式市場においても徐々に正常化へ向かうとともに、イレギュラー的な価格形成を見せている銘柄などは改めて業績などを手掛かりとして、見直しの動きが出てくる可能性もあるでしょう。

ちなみに、東証2部、ジャスダック、マザーズにおける3月決算企業では、2月16日時点で2022年3月期の業績予想を公表している企業は約800社あります。そのなかで営業黒字を計画している企業は約60%、営業赤字を計画している企業は13%、営業増益を計画している企業は49%、営業黒字転換を計画している企業は21%程度となります。

通期業績に対する高進捗率銘柄をさらにスクリーニング

そこで改めて業績を見直す動きが高まる状況を想定し、今回のランキングでは第3四半期までの進捗率の高い銘柄をランキングにしてみました。ただし、進捗率の高さのみでは第4四半期での下振れも想定されますので、基準としては2022年3月期の営業利益が15億円以上で、前期比2ケタ以上の増益を計画している企業、もしくは黒字転換を計画している企業に絞っています。さらに、第3四半期の営業利益が2ケタ以上の増益もしくは黒字転換とし、最後に期中に下方修正していない企業に絞りました。

上記の条件で抽出した第3四半期までの進捗率上位50社のうち、7割超の銘柄が期中に上方修正を行っていました。さらなる計画の上振れ着地となる期待も高まりそうです。これまでの不安定な市場環境のなかで割安に放置されている銘柄も多いと見られますので、再評価の動きに期待したいところでしょう。

▽2022年3月決算企業の高進捗率ランキング

銘柄コード市場3Q進捗率
(%)
22/3予想
営業利益
3Q
営業利益
期中に上方修正
1セレスポ9625JQ134.522億円29億5,800万円
2中央魚類8030東2111.217億円18億9,000万円
3ウィザス9696JQ107.515億円16億1,200万円
4レーサム8890JQ102.980億円82億3,100万円
5セメダイン4999東295.718億円17億2,300万円
6シダックス4837JQ95.623億2,700万円22億2,400万円
7エスイー3423JQ94.417億6,100万円16億6,300万円
8日本化学産業4094東293.833億4,000万円31億3,300万円
9ダイハツディーゼル6023東292.615億円13億8,900万円
10ヨネックス7906東292.065億円59億7,800万円
11プレミアムウォーターホールディングス2588東290.754億円48億9,900万円
12南海プライウッド7887東290.720億円18億1,400万円
13Mipox5381JQ90.315億円13億5,500万円
14日本精鉱5729東290.120億円18億100万円
15コメ兵ホールディングス2780東290.029億5,000万円26億5,400万円
16アイ・テック9964JQ89.960億円53億9,500万円
17川崎近海汽船9179東288.927億5,000万円24億4,600万円
18松本油脂製薬4365JQ88.645億5,000万円40億3,300万円
19ニッポン高度紙工業3891JQ88.237億円32億6,500万円
20鳥羽洋行7472JQ88.117億2,000万円15億1,600万円
21ULSグループ3798JQ88.016億円14億800万円
22メタルアート5644東287.526億8,000万円23億4,500万円
23ダイトーケミックス4366東286.817億円14億7,600万円
24ライフドリンク カンパニー2585東286.622億円19億500万円
25テクノクオーツ5217JQ86.128億円24億1,100万円
26フジオーゼックス7299東285.815億5,000万円13億3,000万円
27ワークマン7564JQ84.7266億7,300万円225億8,500万円
28テクノ菱和1965東284.621億円17億7,700万円
29上村工業4966東284.6120億円101億5,400万円
30ヒビノ2469JQ84.619億5,000万円16億4,900万円
31日本伸銅5753東284.520億円16億8,900万円
32アオイ電子6832東284.132億円26億9,200万円
33オプティマスグループ9268東283.928億円23億4,900万円
34イハラサイエンス5999JQ83.240億円33億2,800万円
35東洋合成工業4970JQ83.140億円33億2,300万円
36カンダホールディングス9059東282.928億7,000万円23億7,900万円
37タカギセイコー4242JQ82.723億円19億300万円
38リミックスポイント3825東282.463億2,000万円52億600万円
39三協フロンテア9639JQ81.994億円77億200万円
40テクノアソシエ8249東281.435億円28億4,900万円
41ヤマダコーポレーション6392東281.116億円12億9,800万円
42新コスモス電機6824JQ81.044億8,000万円36億2,900万円
43東北新社2329JQ80.230億4,800万円24億4,500万円
44キョウデン6881東280.150億円40億600万円
45鈴茂器工6405JQ79.917億円13億5,800万円
46天龍製鋸5945JQ79.628億4,000万円22億6,000万円
47芝浦電子6957JQ79.555億円43億7,200万円
48兼房5984東279.416億5,000万円13億1,000万円
49玉井商船9127東279.315億円11億8,900万円
50トラスト3347東279.116億1,100万円12億7,400万円
※表は、東証2部(東2)、ジャスダック(JQ)、マザーズの2022年3月決算企業の第3四半期における通期業績予想に対しての進捗率をランキングしたもの。ただし、22年3月期の営業利益が15億円以上、同営業利益が2ケタ以上の増益もしくは黒字転換予想の銘柄が対象。さらに、第3四半期の営業利益が2ケタ以上の増益もしくは黒字転換予想の銘柄に限定し、期初計画を下方修正していない銘柄に絞った。

ランキングトップはセレスポ(9625)となり、進捗率は134.5%と第3四半期の段階で通期計画を大きく超過しています。年明け以降のオミクロン流行でイベント受注が落ち込むとの保守的な見方から通期計画を据え置いたことが足元で嫌気されていますが、コロナ感染がピークアウトに向かうなかで再評価の可能性はありそうです。

また、8位の日本化学産業(4094)は第1四半期の発表と合わせて通期計画を上方修正しました。その後は据え置かれているため株価は調整を継続しているものの、非鉄相場の上昇のほか、二次電池用正極材の受託加工が安定供給されていることから再評価の余地はありそうです。

3度の上方修正でも進捗率が90%超のヨネックス

10位のヨネックス(7906)は期中に3度の上方修正を発表していますが、それでも第3四半期の進捗率は92.0%と高く、会社側の慎重な見通しに対して事業が予想以上に改善している状況と考えられるため、依然として保守的な計画に映ります。

13位のMipox(5381)はパワー半導体関連の一角として個人投資家の人気が比較的高く、株価は2020年3月の200円割れ水準から、2021年10月には1,353円まで急伸しました。その後は利益確定の動きが先行する格好ですが、PER(株価収益率)は1ケタ台まで調整したこともあり、再評価が期待されそうです。同社も期中に3度の上方修正を発表しているうえ、進捗率は90.3%です。顧客の基材(フィルム等)や塗料材を同社が保有する設備を用いてフィルム化をするサービスである受託コーティング・スリットサービスが順調です。

33位のオプティマスグループ(9268)は期中2度の上方修正を発表していますが、営業利益は期初計画から2.8倍に積み上がっています。半導体不足の影響から自動車メーカーは減産を強いられるなか、中古自動車市場は活況となったようです。今後は自動車メーカーの回復とともにEV(電気自動車)などの流通も活発化してくると見られますので、引き続き注目したいところです。

そのほか、47位の芝浦電子(6957)は期中2回の上方修正を行っていますが、半導体不足の影響を警戒している一方、オートモーティブ向けセンサーの拡販を積極的に展開している点は注目しておきたいところでしょう。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)