マーケットの注目テーマを分析!「リテールテック」

小売業の常識を翻すのがリテールテック

「〇〇テック」という言葉の数々。代表的なものはやはりフィンテック(FinTech)ですが、以前紹介したヘルステック(HealthTech)なども認知度が高まってきました。今回は、その一角である「リテールテック(Retail Tech)」についてご紹介したいと思います。

そもそもリテールテックとは、小売業にIT(情報技術)を導入することを指します。リテールテックによって新たな小売サービスなどが生まれたり、サービスを高度化させたりすることが期待されます。

このように通り一遍の説明をすると、何だか陳腐化して聞こえてしまうかもしれませんが、在庫を含めた店舗管理、流通全般、決済、販促、データの利用や活用などのように、具体的に小売業を構成する要素を細かくイメージしていくと、その影響の大きさが少し掴めるかもしれません。昔からある「休まずにたくさん売る」といった旧態依然とした小売業のイメージを実際に覆し、ビジネスの質を引き上げるために欠かせないのがリテールテックというわけです。

小売業に限らずではありますが、生産性が低く、ビジネスの効率化が遅れていると指摘されることも多い日本企業においては、まさに一刻の猶予もない課題です。政府としても同じ問題意識を持っているがゆえとも言えるかもしれませんが、2022年3月に東京ビッグサイトで開催される予定の「リテールテックJAPAN」には、経済産業省、総務省、中小企業庁、日本商工会議所などが後援の立場に連なっています。

Amazonなどが先行して取り組んでいる無人店舗もこのリテールテックのひとつの形でしょう。日本でも以前から様々な取り組みが進んでいますが、2022年に入っての話題ではNTT東日本の北海道事業部が、非接触購買が可能な無人の「スマートストア」を札幌市内にオープンしたと発表。願いとは裏腹にコロナ禍の再拡大が現実となるなか、経営の観点からも利用者の観点からもメリットのある無人店舗の開発進展と社会実装には一層の期待が集まります。

関連銘柄は日本を代表する企業からスモールキャップ企業まで

リテールテック関連の銘柄としては、NEC(6701)が画面に触らず操作できる、セルフレジやマルチモーダル生体認証(複数の生体情報により個人を認証する方式)によるタッチレス決済などのソリューションを提供しています。また、日立製作所(6501)は流通・小売のデータを総合的に活用したデジタルソリューションを提供しています。

シノプス(4428)はリアルタイムで在庫を把握するサービスや需要予測による商品の自動発注、予測精度94.7%以上を誇る高精度の客数予測などを行う「sinops-CLOUD」を提供。ベイシス(4068)は次世代ネットワークであるIoTの普及促進に寄与している企業であり、マーケティングカメラの設置実績なども有しています。

そのほか、エイジス(4659)はチェーンストア・流通小売業向けに、棚卸サービス、課題を解決するリテイルサポートサービスのほか、海外では中国や韓国、東南アジア各国において棚卸サービスを提供しています。

NTTデータ(9613)はアパレル専門店向けに特化した、クラウド型接客タブレットPOSサービスや機械学習などを活用したデータ分析ソリューション、高精度の予測と自動化を実現するプラットフォームなどを提供。東芝テック(6588)はカート型セルフレジ、スマホ利用セルフレジ、RFIDハンドリーダー、飲食店向けセルフオーダーシステムなどを手掛けています。

全体相場にツレ安している注目企業のリバウンドを狙う

さて、リテールテック関連銘柄の一部を紹介しましたが、最後に今後の値動きに注目したい銘柄を厳選して取り上げておきたいと思います。まずはヴィンクス(3784)です。こちらはPOSシステム、CRM(顧客管理)・ポイント管理、自動発注、商品発注から販売まで一貫して行うソリューションを提供しており、国内小売業におけるDXニーズを取り込んでいます。2021年11月に通期業績予想を上方修正していますが、修正後の通期計画に対する第3四半期営業利益の進捗率は82.7%であり、業績の上振れ期待も高まりそうです。

アイリッジ(3917)は、ファン育成プラットフォーム「FANSHIP」を通じたOnline to Offline(オンラインを活用したオフラインの販促・集客)アプリの開発を手掛けており、企画立案から技術選定、開発、運用、コンサルティングなどを一気通貫で行っています。足元の業績ではアプリ開発やアプリマーケティングを中心としたデジタルマーケティング領域が堅調に推移したことから、第2四半期の営業損益は黒字に転換。株価は7月の昨年来安値水準まで調整を見せていることもあり、全体相場の状況も踏まえつつ、株価反転と押し目狙いのタイミングを見極めたいところでしょう。1月中旬現在、時価総額は40億円台のスモールキャップ企業です。

(図=編集部作成、提供=楽天証券)


アスタリスク(6522)ではバーコード・RFID関連製品のほか、画像認識を用いたセルフレジや動体追跡などのソリューションを手掛けています。バーコードリーダーなどのAsReader事業が堅調に推移しているほか、2022年8月期中の販売開始を目指している人検出・動体追跡技術を用いた製品への期待は高そうです。株価はグロース株売りの中で13週移動平均線を挟んだ攻防を継続していますが、昨年11月半ばの6,685円からの調整には徐々に一巡感も意識されてくると思われますので、押し目狙いの好機となることが期待されます。

文・若杉篤史(RAKAN RICERCA)