景気敏感株とは?投資タイミングを見極め、チャンスを掴もう
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景気や相場のサイクルに合わせて「景気敏感株」を狙いうちすれば、株式投資において成果を挙げやすくなります。特に中小型株の景気敏感株は波に乗ると株価の上昇幅が大きいため、日本株や米国株の平均リターンを大きく上回る結果を出すことも可能になってきます。
目次
1.景気敏感株とは?
1-1.景気敏感株の特徴
1-2.日本株の代表的な景気敏感株は?
1-3.米国株の代表的な景気敏感株は?
1-4.ディフェンシブ株とは?
2.景気敏感株とディフェンシブ株の違いとは?
2-1.日経平均株価との連動性
2-2.値動きの傾向
2-3.狙うリターンの種類
3.景気敏感株に投資をする際のポイント
3-1.相場サイクルを意識する
3-2.大きなトレンドに逆らわない
3-3.チャートをレンジの上限付近にいないか確認する
3-4.業績や成長戦略を確認する
4.中小型株の景気敏感株5選
4-1.日本化学産業(東証2/4094)
4-2.イハラサイエンス(JQ/5999)
4-3.松本油脂製薬(JQ/4365)
4-4.旭有機材(東証1/4216)
4-5.立花エレテック(東証1/8159)
5.ボラティリティが大きい景気敏感株で、大きな利益を狙おう
1.景気敏感株とは?
景気敏感株は一般的に「シクリカル銘柄」と呼ばれます。シクリカルを英語で書くと「Cyclical」で、景気が循環的に変動することを意味します。
1-1.景気敏感株の特徴
景気敏感株はその名の通り、景気の影響を強く受ける銘柄のことを指し、ボラティリティ(値動きの幅)が比較的大きいことが特徴です。すなわち、景気が良くなると大きな値上がりが期待でき、一方で景気後退局面では大幅下落のリスクにさらされます。
景気敏感株を探すときは、まずはセクターに注目します。「銀行」「証券」「自動車」「鉄鋼」「非鉄」「素材」「繊維」「化学」「鉱業」「機械」「電気機器」「設備投資」「建設」「不動産」などが代表的なシクリカルセクターです。
シクリカルセクターの中から実際に投資する景気敏感株を探すときのポイントについては、後半でも詳しく触れます。
1-2.日本株の代表的な景気敏感株は?
日本株における代表的な景気敏感株としては、例えば「自動車」セクターではトヨタ自動車(7203)や本田技研工業(7267)など、「電気機器」セクターでは日立製作所(6501)やソニー(6758)など、鉄鋼ではJFEホールディングス(5411)や日本製鉄(5401)などが挙げられます。
1-3.米国株の代表的な景気敏感株は?
米国株でも基本的にはシクリカルセクターは日本株と同様です。例えば「建設」セクターではキャタピラー(CAT)、建築骨材を扱うバルカン・マテリアルズ(VMC)などが挙げられます。「銀行」セクターでは、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー(JPM)などです。
1-4.ディフェンシブ株とは?
シクリカル銘柄の反対の意味を持つのが「ディフェンシブ株」です。景気に業績が左右されにくい銘柄を指し、ボラティリティが小さめであることが特徴です。
ディフェンシブ銘柄に含まれるのが、「食品」や「医療品」などを扱う企業の銘柄です。食品も医療品も生活必需品であるため、景気が後退しても業績は大きなダメージを受けにくいわけです。「鉄道」「通信」「電気」「ガス」などのセクターに属する銘柄も含まれます。
2.景気敏感株とディフェンシブ株の違いとは?
景気敏感株とディフェンシブ株の違いをもう少し深掘りしていきましょう。
2-1.日経平均株価との連動性
景気敏感株とディフェンシブ株の値動きを、日経平均株価の値動きと比較する場合、どちらの銘柄でも一定の連動性は確認できます。その理由は、日経平均株価がどういった性質を持つ株価指数かが分かれば、理解できます。
日経平均株価は、東証1部上場銘柄の中から、セクターのバランスを考慮して選ばれた代表的な225銘柄で構成されています。そのため、日経平均株価の値動きは相場全体の平均的な値動きと近くなります。
景気敏感株であっても、ディフェンシブ株であっても、基本的には「地合い(じあい)」(=相場の状態)が良ければ株価が上昇し、地合が悪ければ株価が下落する傾向があります。そのため日経平均株価との連動性が高いわけです。
2-2.値動きの傾向
景気敏感株もディフェンシブ株も日経平均株価との連動性があることを説明しましたが、一方で値動きに関しては違いがあります。
景気敏感株はボラティリティが大きめであるため、日経平均株価と同じかそれ以上の値上がり率・値下がり率になりやすくなります。一方、ディフェンシブ株はボラティリティが小さめであるため、日経平均株価と同じかそれ以下の値上がり率・値下がり率になりやすくなります。
ただし上記はあくまで平均的な傾向であり、景気敏感株であっても値上がり・値下がりが限定的なときもあれば、ディフェンシブ株でも乱高下に見舞われることがあります。例えば、ある特定のセクターで良いニュース・もしくは悪いニュースが出たときなどです。
2-3.狙うリターンの種類
景気敏感株とディフェンシブ株では、狙うリターンの種類が異なります。一般的には、景気敏感株は「キャピタルゲイン」(売却益)狙い、ディフェンシブ株は「インカムゲイン」(配当)狙いの投資手法となります。
ディフェンシブ株は景気敏感株のように株価の極端な高騰はあまり期待できませんが、その反面、配当利回りが高めであるという特徴があります。
配当利回りとは株式の購入額に対し、1年間で受けることができる配当がどれだけの割合かを示す数値のことで、%(パーセント)で表されます。ディフェンシブ銘柄の中には、配当利回りが3%を超えている銘柄も多くあります。大手銀行の定期預金金利が0.002%程度ですので、3%という利回りはとても魅力的です。
3.景気敏感株に投資をする際のポイント
続いて景気敏感株に投資する際の視点・ポイントについて説明していきましょう。
3-1.相場サイクルを意識する
景気敏感株で大きな成果を挙げるためには、いまが相場サイクルのどの位置にいるのかを確認することが重要です。相場は歴史的に「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」の順で循環しており、景気敏感株が最も好調なのは金融相場のときです。▽4つの相場サイクル
相場 | 金融政策 | 金利 | 株価 |
---|---|---|---|
金融相場 | 金融緩和期 | 低金利 | 株高 |
業績相場 | 金融緩和の終了期 | 低金利 | 株高 |
逆金融相場 | 金融引き締め期 | 金利高め | 株安 |
逆業績相場 | 金融引き締めの終了期 | 金利高め | 株安 |
金融相場では金融緩和によって景気が良くなりやすく、景気敏感株にとってはチャンスです。特に逆業績相場から金融相場に入りたての時期は、景気敏感株の株価が上昇し始めた最初のタイミングで株式を保有できるため、景気敏感株投資の好機となりやすいです。
3-2.大きなトレンドに逆らわない
前述の通り、相場が金融相場の状況にあるときが、景気敏感株にとっては最も利益を得やすい時期です。一方、逆金融相場や逆業績相場では株価が大幅に下落する可能性が高いため、相場の大きなトレンドには逆らわないことを心掛けるようにしましょう。
「休むも相場」「売るべし買うべし休むべし」という相場格言があるように、いつも株式を保有していなければならないというわけではなく、むしろ状況が不利な場合は株式を売却して現金化しておくことが有利なときもあります。現金にしておけばどれだけ相場全体が下落しても、影響はゼロです。
ただし、例外もあります。業績相場では業績が良い企業の株価が上がりやすくなっており、景気敏感株であっても業績が大幅に向上している企業であれば、十分に投資妙味が出てきます。
3-3.チャートをレンジの上限付近にいないか確認する
金融相場だとしても、景気敏感株であればどの銘柄を買ってもよいというわけではありません。個別銘柄のチャートを日足・週足・月足で確認して、レンジの高値付近で推移していないか、RSI(相対力指数)は「買われ過ぎ」を示していないか、などを確認しましょう。
銘柄の中には、株価が「上昇→下落→上昇→下落」といったサイクルをある程度のレンジで繰り返すケースがあります。株価上昇時に利益確定させたり、下落時に買い増したりする、レンジ狙いの株式投資家がいるからです。そのため、いまの株価がレンジの上限付近にいると考えられる場合は、投資を見送りましょう。
RSIは「Relative Strength Index」の頭文字をとった略語で、「買われ過ぎ」や「売られ過ぎ」を示す指数です。その銘柄のRSIが買われ過ぎを示している場合は、その後、株価の下落に見舞われやすいため、売られ過ぎのときがくるのを待つのも有効な戦略のひとつです。
「恐怖で買って、強欲で売る」という相場格言があります。ほかの投資家が売り一辺倒の時こそ買い時で、ほかの投資家が買い一辺倒のときこそ売り時、という言葉を示しています。RSIを使うとこうした視点を持って投資タイミングを見計らうことができます。
ちなみにこのような分析方法のことを「テクニカル分析」と呼びます。
3-4.業績や成長戦略を確認する
株式投資では相場のサイクルについての知識やテクニカル分析のほか、「ファンダメンタルズ分析」も必要になってきます。業績面の「数字」を確認する分析方法です。相場的にOK、テクニカル分析もOKでも、業績が良くなければ、その後の株価に黄信号が灯ります。
上場企業は四半期ごとに決算を発表しており、過去の業績のほか、最新の決算内容や来期の会社予想なども投資前に確認するようにしましょう。決算資料ではその企業の成長戦略も確認できます。
4.中小型株の景気敏感株5選
最後に時価総額1,000億円以下の中小型株の景気敏感株を5つ紹介します。中小型株は、その銘柄に関する良いニュースが出たときに、一気に株価が急上昇することがあり、大きなリターンを狙う際に適しています。
4-1.日本化学産業(東証2/4094)
表面処理薬品や住宅用防災建材のほか、二次電池用正極材の受託加工などを手掛けている企業です。タイに現地法人を設立していることでも知られています。今後の見通しとしては、生産性の向上で収益性を高めることや、新たに開設した研究開発拠点での体制強化に努めるとしています。▽日本化学産業の2022年3月期 通期業績予想
売上高 | 216億6,900万円 | 10.4% |
営業利益 | 33億4,000万円 | 39.8% |
経常利益 | 35億5,000万円 | 36.4% |
純利益 | 25億4,000万円 | 37.8% |
4-2.イハラサイエンス(JQ/5999)
イハラサイエンスは、「『最適な配管』を科学する『サイエンスメーカー』」を標榜しています。具体的な製品としては、産業用継手やバルブなどを製造し、半導体分野やエネルギー分野、食品・医療分野などで「最適配管」の提案も行っています。事業展開している分野を拡大している印象で、今後のさらなる売上増への期待感も大きな企業です。▽イハラサイエンスの2022年3月期 通期業績予想
売上高 | 200億円 | 38.7% |
営業利益 | 40億円 | 52.7% |
経常利益 | 42億2,000万円 | 54.0% |
純利益 | 29億8,000万円 | 38.8% |
4-3.松本油脂製薬(JQ/4365)
松本油脂製薬は1926年に創業した歴史ある企業で、あと4年で創業100年を迎えます。繊維用薬剤のほか、マイクロカプセルをはじめとする界面活性剤、高分子関連製品の製造・販売などを手掛けています。現在は新規顧客の開拓や自社製品の用途開拓の活動などに力を入れています。台湾やインドネシアにも拠点を有しています。▽松本油脂製薬の2022年3月期 通期業績予想
売上高 | 325億円 | 9.8% |
営業利益 | 45億5,000万円 | 15.3% |
経常利益 | 49億5,000万円 | 2.9% |
純利益 | 34億3,500万円 | 0.1% |
4-4.旭有機材(東証1/4216)
「樹脂の深化とエンジニアリング価値を追求し、挑戦を続けています」。同社の中野賀津也社長は、公式サイトでこのように宣言しています。創業は1945年。現在は管材システム事業や樹脂事業、水処理・資源開発事業を手掛けており、「成長」「ニッチトップ」「グローバル」をキーワードに、さらに事業を拡大していく方針のようです。▽旭有機材の2022年3月期 通期業績予想
売上高 | 625億円 | 16.7% |
営業利益 | 58億円 | 70.4% |
経常利益 | 60億円 | 64.5% |
純利益 | 39億5,000万円 | 41.7% |
4-5.立花エレテック(東証1/8159)
立花エレテックが手掛けている製品は幅広く、FAシステム、機器コンポーネント、ロボット、産業メカトロニクスなどとなっています。そして近年注目の「3Dプリンタ」も手掛けており、今後の市場拡大を考えれば投資妙味は十分あると思われます。CSR(企業の社会的責任)活動にも力を入れています。▽立花エレテックの2022年3月期 通期業績予想
売上高 | 1,920億円 | 18.9% |
営業利益 | 59億円 | 46.3% |
経常利益 | 64億円 | 45.8% |
純利益 | 44億円 | 27.3% |
5.ボラティリティが大きい景気敏感株で、大きな利益を狙おう
この記事では景気敏感株について包括的に説明してきました。景気敏感株はボラティリティが大きいため、投資によって資産を大きく増やすことを狙えます。そして投資するときは4つの相場サイクルを意識し、「金融相場」のときが投資のベストタイミングであることを頭に入れておきましょう。
さらに細かく購入タイミングを見極めるなら、個別銘柄のチャートをテクニカル分析し、株価がレンジの上値付近にいる状態ではないか、RSIなどで買われ過ぎの状態となっていないか、なども確認するようにしましょう。
一方で景気敏感株への投資妙味がない時期は、ディフェンシブ銘柄で配当狙いの投資をするのも一興です。銘柄の特徴を理解し、堅実に成果を出せる株式投資家になりましょう。
文・岡本一道