注目銘柄「セキュア」(マザーズ・4264)を分析

今後も続く非接触型社会の進展は追い風。業績好調の直近IPO

主力は監視カメラシステム。顧客にはラクスルやメルカリの名も

セキュアは、監視カメラ・入退室管理などのセキュリティシステムを提供する企業。2002年10月に設立、2021年12月にマザーズに新規上場した直近IPO銘柄です。従来は様々な企業が絡んでくることが多かったこの事業領域で、セキュリティシステムのハードとソフトを一気通貫で提供しているほか、AIを用いた独自の画像認識技術を持っている点が同社の強みです。

セキュリティソリューション事業のみのセグメント構成ですが、(1)入退室管理システム、(2)監視カメラシステム、(3)画像解析サービス/その他に区分されています。2020年12月期ベースでの売上高構成比率は、順番に30.3%、67.6%、2.1%となっているため、現状は監視カメラシステムが主力と言えるでしょう。なお、導入社数は2021年9月末時点で6,000社を突破、ラクスルやメルカリといった一般的にも知名度の高い企業も同社の顧客となっており、順調な拡大が続いています。

2月発表の本決算では、今期営業利益は4倍超の見込み

上場時に公表した2021年12月期の第3四半期決算では、売上高が25億500万円、営業利益は1億3,500万円、四半期純利益は1億800万円で着地しています(※2020年12月期より連結財務諸表を作成している関係で四半期増減率の記載はなし)。通期計画に対する進捗は順調と言えます。

2021年12月期の見通しは、売上高が前期比21.2%増の33億8,000万円、営業利益は同約4.2倍となる1億5,000万円、最終利益も同約3.8倍となる1億2,600万円を計画しています(※2022年2月中旬に 2021年12月期決算発表予定)。

足元(本稿執筆時点の1月中旬)の全体相場の状況としては、依然としてバリュー株優位。そのため、グロース株の筆頭的な立ち位置でもある直近IPO、特に12月のラッシュ時に上場した企業の株価パフォーマンスは厳しいものとなっている印象です。同社も例に漏れずではありますが、最高値からの下落状況を踏まえると、全体相場の物色トレンドが安定する中で、徐々に株価も落ち着きを見せてくると期待しています。

やはり、新型コロナウイルスの感染再拡大が見られていることもあり、非接触社会の進展は今後も続くことになるでしょう。一般社会では、店舗などにおける混雑状況のリアルタイム把握などを通じて感染リスクを低減させることができ、同社もこれに貢献しています。また、ビジネスの世界においても非接触化等の流れは同様です。メガネやマスクに対応した顔認証によるセキュリティ向上および接触機会の削減、労務・健康の管理などを同時に実現することができるクラウド入退室管理システム「SECURE AI Office Base」などを手掛けている同社の引き合いは引き続き強まるとみられます。

また、新型コロナ対策、労務・健康管理という側面に限らず、2019年の京都アニメーション放火殺人事件、2021年の年末にも似たような事件が大阪で発生し、多くの方が犠牲になるなど、近年はサイバーセキュリティと同時に社員を守るための仕組みも求められています。そうした面からも、顔認証による入退室管理の需要は高まりそうです。現在はパートナーを通じた販売がほとんどですが、直販増加施策なども今後は期待したいポイントであるほか、新たな収益源と目している「AI STORE LAB(無人店舗)」の実証も今夏終了をメドに実施中であり、今後の動向にも要注目です。

需給整理はすでに一巡。2,000円突破なら2,500円までは真空地帯

(図=編集部作成、提供=楽天証券)


株価は上場2日目の昨年12月28日に2,185円で初値を付けました。公開価格の950円の2.3倍と好スタートを切り、翌29日には3,100円まで上昇。ただし、その後は12月のIPOラッシュによる需給懸念のほか、新興市場を取り巻く換金売り圧力の影響から調整を継続しています。年明け以降は切り下がる5日移動平均線に上値を抑えられる格好での下落により、連日で上場来安値を更新してしまいました。

しかし、1,000円に近づくにつれて下落ビッチは減速してきており、公開価格水準にも近づいてきたことから1,000~1,200円付近では仕切り直しからのリバウンドを狙った押し目買いの動きが意識されてきそうです。また、出来高については、上場後4営業日程度こそ商いを伴っての下落となりましたが、その後は薄商いの状態を続けているため、早い段階で需給整理は一巡していると考えられます。

価格帯別出来高では1,500円~2,000円水準で若干積み上がっていますが、リバウンド局面でこの価格帯の商いをこなしてくるようですと、2,000円~2,400円水準は真空地帯になるため、リバウンド基調を強めてくる可能性はありそうです。まずは、1,000~1,200円処での底固めに期待したいところでしょう。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)