注目銘柄「エクスモーション」(マザーズ・4394)を分析

日本の主要自動車メーカーにコンサルティングを提供

主力のコンサルティングに加え、人材育成事業も展開

エクスモーションは、 “組み込みソフトウェア”の品質改善に特化したコンサルティングなどを提供する企業。組み込みソフトウェアとは、自動車や家電製品、産業機器などに組み込まれるソフトウェアを指し、自動車で言えば「車載システム」にあたります。同社のコンサルティング事業では、卓越した開発技術を武器に、自動車業界をはじめとするクライアントが抱えるソフトウェアの課題に対し有効な提案を行うだけでなく、課題解決まで伴走して支援しています。

同社は2008年9月に設立され、2018年7月にはマザーズ市場に上場というスピード感で成長しています。セグメントはコンサルティング事業の単体構成ですが、新規事業として人材育成事業も展開している点は押さえておきましょう。

なお、同社は自動車業界における実績が豊富で、メーカーはトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、SUBARUなど。サプライヤ―ではウーブン・プラネット・ホールディングス、デンソー、日本精工、愛三工業等を主要クライアントとして、自動運転(ADS)、先進安全支援(ADAS)、ハイブリッド(HEV)、電気自動車(EV)、燃料電池(FCV)、インフォテインメント(IVI)など自動車分野で、最先端の製品開発を支援しています。

会社計画の売上高は未達も成長性の評価は高い

直近の2021年11月期決算では、売上高が前期比9.2%増の9億5,700万円、営業利益は同61.1%増の1億4,300万円、当期純利益は同47.2%増の1億円で着地しています。会社計画に対して、売上高は未達となったものの、売上原価や販管費等のコントロールによって、利益面では計画値にのせた格好です。売上の目標未達はやや残念ではありますが、10%近いトップラインの成長を見せていることもあり、全体的に悲観すべきところがない印象の決算でした。

2022年11月期の見通しは、売上高が前期比20.4%増の11億5,300万円、営業利益は同39.2%増の2億円、最終利益は同37.5%増の1億3,700万円を計画しています。コンサルティング事業は、引き続き旺盛な需要を取り込む形で順調に成長。また、人材育成事業についても実践型ナレッジ提供サービス「Eureka Box」(ユーリカボックス)がコンテンツの拡充フェーズから本格的な販売促進フェーズに移行すると見込んでいるもようです。

さて、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)といういわゆる「CASE」を軸に自動車業界でソフトウェア開発の重要性が増している恩恵を同社も大きく受けていますが、ソフトウェアの開発の重要性が増しているのは自動車業界に限ったことではなく、製造業全般において言えることです。自動車業界での需要取り込みを拡大させつつ、取っ掛かりを既に持っている自動二輪、建設機器、農機、医療、産業機械、鉄道などの領域でも顧客開拓を強化していくことで、同社は今後もさらなる成長が期待できるでしょう。

少し前に社内ベンチャーを企画する企業が多く出てきましたが、意図的に尖った人材を集めでもしていない限り、奇抜なアイディアも出てこず、意外とこうした取り組みは上手くいかないことが多いのです。なぜなら、社員は不可避的に同質化された集団にならざるを得ないからです。

だからこそ、自分たちにはない視点や知見を得るために「他社との協業」や「外部人材の活用」にビジネスの世界ではフェーズが移行したと言えます。そうした潮流の中で、同社のようなサポートができるタイプの企業は引き合いも強いでしょう。2020年11月期をボトムに営業利益率も高まっていくことが期待される中、今後の事業展開に要注目です。

52週線を明確に突破なら、1,500円までは駆け足か⁉

(図=編集部作成、提供=楽天証券)
(図=編集部作成、提供=楽天証券) ※2022年1月19日作成


株価は昨年4月につけた1,587円をピークに1,500円を挟んだもち合いを継続していましたが、7月以降に調整基調を強めており、12月には820円まで下落しました。ただし、12月下旬以降にリバウンド基調を強めると、年明け以降に13週移動平均線を突破し、その後は一気に26週線を上放れ、一時は52週線を捉えています。昨年9月半ばのリバウンド局面では、この52週線に上値を抑えられ長い上ヒゲを残す形状となっていたこともあり、強弱感が対立しやすいところです。ただし、これを明確に上放れることができればシグナルは一気に好転する可能性があります。

また、週足の一目均衡表では雲を下放れて推移していますが、年明け以降のリバウンドによって転換線、基準線を突破してきました。遅行スパンは実線を下回っていますが、実線が切り下がっているため、今後は遅行スパンが実線を下から上に突き抜ける、上方シグナルを発生する可能性が高いでしょう。また、雲も今後1,200円水準に切り下がることから雲を捉えてくることも考えられるため、よりシグナルの好転が見込まれそうです。

なお、抵抗線突破からは、昨年4月高値の1,587円がターゲットとして意識されてくることになります。価格帯別出来高では1,500円水準までは商いの薄いところであるため、52週線を明確に突破してくるようですと、リバウンド基調は強まりやすい一方、跳ね返される局面においては26週線辺りを支持線とした押し目狙いのスタンスで対応したいところでしょう

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)