2021年5〜10月の下落率ランキングからリターン・リバーサルを狙う

成長シナリオの剥落や信頼の失墜で売られた銘柄群

2021年4月末終値から同10月末終値を基準として、半年間の下落率ランキングを計測しました。その結果、1位はホープ(6195)のマイナス78.6%、2位はAI inside(4488)のマイナス76.5%、3位はジーネクスト(4179)のマイナス59.4%となりました。

▽下落率ランキングから狙うリターンリバーサル銘柄

銘柄コード市場4月末終値(円)10月末終値(円)下落率(%)
1ホープ6195マザーズ1,353.0289.0-78.6
2AI inside4488マザーズ30,300.07,110.0-76.5
3ジーネクスト4179マザーズ1,850.0751.0-59.4
4コパ・コーポレーション7689マザーズ4,045.01,680.0-58.5
5Jストリーム4308マザーズ2,387.51,000.0-58.1
6Kaizen Platform4170マザーズ2,215.0928.0-58.1
7インターファクトリー4057マザーズ2,610.01,105.0-57.7
8ベビーカレンダー7363マザーズ9,010.03,845.0-57.3
9オークファン3674マザーズ1,711.0735.0-57.0
10クリーマ4017マザーズ3,985.01,715.0-57.0
11KIYOラーニング7353マザーズ2,770.01,279.0-53.8
12パシフィックネット3021東23,290.01,525.0-53.6
13日本情報クリエイト4054マザーズ2,416.01,124.0-53.5
14ニューラルポケット4056マザーズ6,000.02,897.0-51.7
15ヘッドウォータース4011マザーズ14,620.07,100.0-51.4
16JIG-SAW3914マザーズ16,050.07,800.0-51.4
17海帆3133マザーズ500.0246.0-50.8
18BASE4477マザーズ1,823.0930.0-49.0
19キャンバス4575マザーズ436.0224.0-48.6
20オンコリスバイオファーマ4588マザーズ1,190.0615.0-48.3
21メタリアル6182マザーズ2,143.01,123.0-47.6
22いつも7694マザーズ4,020.02,132.0-47.0
23バリューデザイン3960マザーズ4,275.02,278.0-46.7
24アクシージア4936マザーズ1,701.0907.0-46.7
25アンジェス4563マザーズ994.0541.0-45.6
26リプロセル4978JASDAQ438.0240.0-45.2
27ログリー6579マザーズ1,664.0917.0-44.9
28テラ2191JQ241.0133.0-44.8
29Kudan4425マザーズ5,310.02,953.0-44.4
30サイバートラスト4498マザーズ7,350.04,120.0-43.9
31クシム2345東2633.0355.0-43.9
32川本産業3604東21,464.0824.0-43.7
33ビープラッツ4381マザーズ2,442.01,379.0-43.5
34エーアイ4388マザーズ1,923.01,090.0-43.3
35ビート・ホールディングス・リミテッド9399東286.049.0-43.0
36WACULU4173マザーズ2,762.01,577.0-42.9
37バンク・オブ・イノベーション4393マザーズ2,775.01,586.0-42.8
38GA technologies3491マザーズ2,060.01,179.0-42.8
39QDレーザ6613マザーズ1,579.0908.0-42.5
40松屋アールアンドディ7317マザーズ2,785.01,604.0-42.4
41燦キャピタルマネージメント2134JQ57.033.0-42.1
42クルーズ2138JQ2,097.01,220.0-41.8
43交換できるくん7695マザーズ6,690.03,925.0-41.3
44総医研ホールディングス2385マザーズ542.0318.0-41.3
45すららネット3998マザーズ3,490.02,074.0-40.6
46モダリス4883マザーズ1,784.01,062.0-40.5
47MITホールディングス4016JQ1,421.0854.0-39.9
48ALiNKインターネット7077マザーズ2,120.01,277.0-39.8
49アピリッツ4174JQ1,131.7688.0-39.2
50中小企業ホールディングス1757東277.047.0-39.0
※表は2021年4月末と2021年10月末を比較した株価の下落率ランキング。東証1部は除く。


1位のホープと2位のAI insideは、ともに市場に対して提示していた成長シナリオが大きく崩れた銘柄であるという特徴があります。ホープは、2020年6月期段階で売上高の85%、2021年6月期で94%がエネルギー事業に依存する事業構造となっていた中、JEPX(日本卸電力取引所)での価格高騰、つまり電力の仕入価格に大打撃を受けました。ちなみに、足元で発表した10月の状況を見ても、依然として厳しい状況です(※月次発表と同時に通期見通しを非開示に修正)。なお、同社は2022年6月末を期限とする上場廃止に係る猶予期間に入っています。

AI insideは、AIおよび関連する情報サービスの開発・提供などを手掛けています。同社は、2021年3月期の業績が営業利益ベースで前期比5.5倍に膨れた一方で、22年3月期は8割減益を見込むと発表したことが嫌気されました。具体的には、21年4月に発表した通り、OEMパートナーであるNTT西日本向けに発行していたAI-OCRサービスライセンスの多くが更新されないことになったためです。実際、健闘はしているものの、足元の業績も芳しくないため、成長シナリオを市場に対して再提示する必要があるでしょう。

そのほか、成長シナリオだけに限らず、投資家からの信頼が低下してしまったことが株価下落につながった銘柄も含めると海帆(3133)、モダリス(4883)、テラ(2191)、バンク・オブ・イノベーション(4393)などが同グループとして挙げられそうです。

直近IPO銘柄の安易な長期保有は要注意

また、どこまでの期間の銘柄をそのように呼称するか、明確な定義はないものの、いわゆる「直近IPO銘柄」のランクインも目立ちます。3位のジーネクスト(4179)を筆頭に、コパ・コーポレーション(7689)、Kaizen Platform(4170)、インターファクトリー(4057)、ベビーカレンダー(7363)、クリーマ(4017)と上位10位に絞っただけでもその数の多さは明らかです。加えて、コロナ禍相場を中心とした過熱物色の余波(需給調整)が続いている銘柄も多くなっています。こちらは、Jストリーム(4308)、KIYOラーニング(7353)、BASE(4477)、すららネット(3998)、アンジェス(4563)、ログリー(6579)などが該当するでしょう。

今回のランキングからは、成長シナリオが毀損した銘柄や投資家からの信頼感が低下した銘柄、過熱物色から調整入りしたような銘柄には、安易に打診買いや押し目買いを仕掛けてはならないことが改めて読み取ることができました。また、全体相場の勢いの影響も当然大きいとはいえ、直近IPO銘柄の長期保有には、当たり前の話ではありますが、銘柄選別を徹底しなければならないでしょう。

国策銘柄でもあるベビーカレンダーはそろそろ打診買い

さて、ようやく本題になりますが、この下落率ランキングの結果を踏まえて、リターン・リバーサル狙いで注目できそうな銘柄を取り上げたいと思います。

まずは、ベビーカレンダー(7363)です。医師・専門家監修の妊娠・出産・育児の情報サイトを提供する事業を手掛けていますが、政府の経済対策への関心が高まる局面においては注目されやすいほか、今期は増収増益を見込んでいることもあり、株価の底入れをしっかりと見極めてからの打診買いスタンスになるでしょう。

次はパシフィックネット(3021)です。同社は、法人向けPCレンタルやITインフラ構築、クラウド導入支援などを手掛けており、コロナ禍におけるテレワークやGIGAスクール構想などが追い風となり、2020年3月の660円水準から21年3月には4,210円まで上昇。ただし、第1四半期決算の内容を嫌気する流れから、足元の調整で昨年4月以来の水準まで下落しています。しかし、第1四半期は確かに苦戦した部分もありますが、戦略投資によるコスト先行の面も大きい内容です。中長期的な観点からは、売られ過ぎに対する修正リバウンドのタイミングを見極め、狙いたい銘柄の一角です。

メタリアルにリバウンドの兆し。メタバース関連としても注目

メタリアル(6182)は、高精度AI翻訳を開発しているほか、音声翻訳、VR展示会型マッチングプラットフォーム、VRオフィスなどを手掛けており、法人向け専門翻訳サービスでは官公庁、大手企業含め8,000社の取引実績を有しています。株価は1,000円接近で底入れの動きを見せており、足元では13週移動平均線を突破し、26週移動平均線を捉えつつあるなど、リバウンドの兆しを見せています。メタバース関連として注目を集めやすいこともあり、タイミングを見極めたいところです。

WACUL(4173)は、2月19日に上場し、高い人気から上場2日目に公開価格の4.4倍での初値となりました。ただし、同日につけた4,780円を高値に調整トレンドが継続しており、IPO銘柄特有の値動きを見せています。8月辺りまでは2,500円水準でのもち合いを形成していましたが、その後は調整基調を強めているため、換金売りの動きが加速した格好でしょう。足元では1,500円水準での底堅さを見せていることもあり、需給整理一巡からのリバウンド狙いが意識されそうです。AIシステムで顧客企業のウェブサイトの改善提案を手掛けており、DX関連として見直されてくるでしょう。

コロナ禍で多少進んだ面はあるとはいえ、不動産業界はまだまだ効率化余地が非常に大きい業界です。同業界に特化したITソリューションを手掛ける日本情報クリエイト(4054)も同じく直近IPO銘柄の中では、見直し余地が大きいと見ています。

そのほか、Kudan(4425)、ビープラッツ(4381)、クルーズ(2138)などは業績改善、材料発表などのきっかけで需給的には大きく動いてもおかしくない銘柄であり、企業動向を監視しておいてもいいかもしれません。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)