注目銘柄「アスカネット」(マザーズ・2438)を分析

画期的な空中結像技術で特許を取得。ウィズコロナ時代の注目企業

2本柱に加えて、新たな空中ディスプレイ事業が期待材料

アスカネットは「1冊からの本格的写真集」をインターネットから受注し、製作するフォトブック事業と、葬儀社や写真館との間にネットワークを構築し、葬儀に使⽤する遺影写真の合成・加⼯などを⾏うフューネラル事業の2本柱の企業です。1995年7月に設立、2005年4月に東証マザーズ市場に新規上場しました。意外と知られていませんが、実は広島県に本社を置いています。また、同社の前身が飛鳥写真工芸社(飛鳥写真館として後に法人化)である点を認識しておくと、事業理解がしやすいかもしれません。

冒頭でも触れたフォトブック事業とフューネラル事業に加えて、空中ディスプレイ事業にも展開しています。フォトブック事業については、オンデマンド印刷による1冊からの少ロットに対応した個人向け写真集の作成・販売に加えて、関連するソフトウェア等も開発しています。2021年4月期の説明資料によれば、約4,720社の写真館向けなどBtoBやコンシューマーに年間約40万冊(OEM除く)を提供しているとのことです。

フューネラル事業は、葬儀社向け遺影写真のデジタル加工および動画の配信、葬儀演出サービスやそれらに付随するシステム機器やサプライ用品等の販売を行っている事業です。こちらも、約2,570ヵ所の葬儀社などBtoBを主体に年間約36万枚の写真画像を提供しています。

3つ目の空中ディスプレイ事業は、「空中結像技術」を基にした新しいビジネスとなります(なお、上記3事業は今期からの名称)。空中ディスプレイ事業がこれからの期待を背負う位置づけということもあり、現状はフォトブック事業とフューネラル事業の2本柱といった事業構造となっています。

第1四半期決算は黒字転換で上々の滑り出し

直近の2022年4月期の第1四半期決算では、売上高が前年同期比16.4%増の14億6,600万円、営業損益は4,200万円の黒字(前年同期は4,000万円の赤字)、四半期純損益は2,800万円(同100万円の赤字)で着地しています。

前年同期のコロナ禍による混乱状況と比較して、葬儀の施行自体は回復しており、主力である遺影写真加工や動画等葬儀演出サービスが復調したことで、フューネラル事業が堅調に推移。フォトブック事業も生産稼働率が回復したことで黒字転換を果たすなど、まずは好調な出だしとなっています。

「衛生意識」の高まりで空中ディプレイ事業に需要増か

2022年4月期の見通しは、売上高が前期比8.6%増の62億7,000万円、営業利益は同2.7%増の2億8,500万円、最終利益は同11.3%減の2億円を計画しています。フューネラル事業は下支え役となることが期待されます。

一方、コロナ禍の影響でウェディング市場が低迷しており、フォトブック事業については特に上期を中心に影響を大きく受ける想定。また、空中ディスプレイ事業については、技術開発センターでのプレート大型化技術開発のための設備投資や増床などを積極的に行うため、費用増の計画となっており、全体として利益面は低調な計画です。なお、配当は前期と同水準の年間7円(期末一括)とする予定です。

同社については、とにもかくにも空中ディスプレイ事業の成長が期待材料です。「ASKA3Dプレート」は、ガラスや樹脂などで出来た特殊なパネルを通過させることで、実像の反対側の等距離の空中に実像を結像させることに成功した特別なプレートです。従来のホログラムやインテグラルフォトグラフィーなどとは全く異なる新しい空中結像技術で、同社が特許を取得しています。センサーや触覚を加えることで空中タッチパネルとしても利用できるため、コロナ禍で「衛生意識」が急激に高まった社会において、非接触のインターフェイスの需要は増していくことになるでしょう。

空中タッチパネルが導入される可能性のある領域は非常に多く、身近なところではエレベータなどの機械操作、ほかにも医療、⾞載などの分野にも可能性が大きく広がっています。同社も海外代理店と連携し、世界的な営業体制を充実させていく方針を示しており、こちらの事業状況に注目して長期目線で監視したい企業です。なお、12月に上期決算を予定しています。

目先のターゲットは1,000円。4ケタ固めなら1,350円が視野に

(図=編集部作成、提供=楽天証券)
(図=編集部作成、提供=楽天証券)


株価は2019年4月、2020年6月高値との2点天井形成後の調整トレンドを継続しています。一方、足元では2020年3月安値水準での底堅さは見られてきましたので、まずは底入れを意識した押し目狙いのスタンスになるでしょう。2021年12月10日の第2四半期決算発表のタイミングでリバウンド基調を見せてくる可能性も想定しておきたいところです。また、失望されたとしてもボトム圏に位置しているため、悪材料出尽くしとなる可能性も期待されます。

現在は26週移動平均線を捉えてきましたが、これを明確にクリアすれば965円辺りに位置する52週線のほか、節目の1,000円がターゲットになります。また、4ケタを固めてくる動きになるようですと、2020年6月高値から2021年8月安値までの下落幅に対する半値戻し水準となる1,350円辺りが新たなターゲットとして意識されてくるでしょう。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)