注目銘柄「スマレジ」(マザーズ・4431)を分析
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驚異的な低解約率で8期連続での増収増益を達成
3年足らずで時価総額は125億円から700億円に
スマレジは、高機能クラウド型POSレジ・システムの「スマレジ」を中核に事業を展開しています。2005年5月設立、2019年2月28日に東証マザーズに上場しました。IPO(株式の新規上場)時の公募価格での時価総額は125億円程度でしたが、株価も上昇し、2021年10月末時点で約700億円まで成長しています。典型的な中小型株の成長企業といってもいいでしょう。
クラウドサービス事業の単一セグメントとなっていますが、主力のスマレジのほか、飲食店向けの注文管理システム「スマレジ・ウェイター」を扱う販売データプラットフォーム運営事業を中心に、勤怠管理サービスや給与計算サービスなどのクラウドソリューション事業、投資事業(スマレジ・ベンチャーズ)、ITクリエイティブ人材の発掘や育成を行うITクリエイティブ事業、店舗用品の通販事業と、実は多角的に事業を展開しています。
主力のスマレジは、基本レジ機能を無料で提供し、追加機能を有料化するフリーミアムモデルを採用したクラウドサービスとなっており、低解約率(※21年4月期の平均解約率は、過去最低水準の0.66%)が魅力です。また、複数店舗を管理する必要性が生じる中規模事業者(2~39店舗)をメインターゲットに設定しています。なお、「クラウドサービス月額利用料」と「クラウドサービス関連機器販売等」の売上高構成比は、直近2期平均で概ね半々という構成です。
営業利益率は過去最高。高収益体質が魅力
2021年4月期の決算では、売上高が前期比2.3%増の33億2,400万円、営業利益は同12.6%増の8億4,500万円、最終利益は5億8,300万円で着地しています。上場直後の決算で厳しい内容となってしまう新興企業も多い中、8期連続での増収増益実績となり、着実に成長を続けています。
また、前々期は2019年10月の消費税率改正に伴う特需の影響を受け、ハードルが上がっていたことも考慮すべきポイントでしょう。コロナ禍においてもオンライン商談はもちろん、感染予防策を講じたうえでの対面商談を充実させ、顧客の獲得に努めた結果、「スマレジ」の登録店舗数が期末段階で9万6,000店舗を突破しました(※10月末時点では10万3,476店舗とさらに拡大)。利益面では、コロナ禍の先行き不透明感を考慮し、販管費を抑制した結果、営業利益率が過去最高の25.4%に達するなど、高収益体質に磨きをかけています。
今期は減益予想だが、マーケットはポジティブ評価
2022年4月期の見通しは、売上高が前期比20.4%増の40億100万円、営業利益は同29.7%減の5億9,400万円、最終利益は同28.8%減の4億1,500万円を計画しています。2ケタ増収、2ケタ減益となっていますが、これは主に中期経営計画達成に向けて、マーケティング・広告・採用等の予算を増加している影響であり、ネガティブ要因とはならないでしょう。なお、成長過程の新興企業であるため、事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先。配当については無配の状態が継続します。
直近の決算は、9月14日の大引け後に発表した2022年4月期の第1四半期決算ですが、売上高が前年同期比28.7%増の9億2,000万円、営業利益は同67.4%増の2億3,200万円で着地しており進捗は良好です。
同社が属しているクラウドサービス事業自体の参入障壁は低いものの、「スマレジ・ベンチャーズ」の投資先が提供するサービスとの連携等によって、同社サービスの機能向上と同時に、競争力をさらに高めていくことが期待されます。さらに、アプリケーションプラットフォーム「スマレジ・アプリマーケット(スマレジ4)」の存在も同社の成長に向けた大きな強みとなります。これは、スマレジに蓄積されるPOSデータを活用したアプリの開発および販売ができる開発者(開発パートナー)向けのプラットフォームで、開発パートナーの多様な視点から、幅広い店舗課題に対応する新たな機能(アプリ)が生み出されるのです。
こうした強みを持ったうえで、“サブスク企業”にありがちな、ただ無機質に数字を「積み上げる」わけではなく、「アクティブ店舗率」にしっかりと意識を向けている点は大事な要素です。必然的に、ユーザーからの要望の吸い上げやその反映(改善、新機能の追加等)に注力し、結果的に顧客満足度(CS)が高まるサイクルを実現することになるからです。実際に解約率は、2018年4月期の0.90%から2021年4月で0.66%まで低下していることがその証左でしょう。ちなみに、同社が公表している長期ビジョンでは、アクティブ店舗数を2031年4月期には30万店舗(2021年4月期は2万4,000店舗)と10年で10倍以上に拡大するとしており、この好サイクルによって長期的な成長を継続することが期待されます。
過熱感は払しょくされリプレイスターゲットを意識
株価は2021年8月27日に4,395円(分割修正済み)まで値を上げて上場来高値を更新しました。短期ではその後の調整で75日移動平均線を割り込んでおり、調整基調を継続しています。同年8月末に1株を2株とする株式分割を実施したことから、需給面からはいったんは利益確定の動きが強まりやすい面はあるでしょう。ただし、足元では緩やかなリバウンドを見せてきており、25日線を支持線に変えてきたほか、上値抵抗線として意識される75日線を捉えてきました。75日線を明確に上放れてくるようですと、8月高値を意識したリバウンドの動きが強まる可能性はあるでしょう。
また、同線に上値を抑えられたとしても、週足では昨年6月以降、上昇する52週線が支持線として機能しているため、上昇トレンドは継続しています。足元では26週線を支持線に13週線を捉えていることから、13週線をクリアしてくるようだと、上場来高値を窺うトレンド形成が期待されます。また、高値を更新してくるようですと、テクニカル面では8月高値(4,395円)から10月安値(3,120円)までの下落幅(1,275円)をリプレイスした5,670円が次のターゲットとして意識されることになるでしょう。月足ベースでの長期トレンドにおいては、切り上がる12ヵ月移動平均線を支持線とした上昇トレンドを形成しています。
また、週足のボリンジャーバンドでは8月高値形成時のプラス2σ(シグマ)水準から、足元では中心値(13週線)での攻防を見せており、マイナス1σとのレンジで推移しています。そのため、過熱感は払しょくされているため、仕切り直しのタイミングとして注目できそうです。
文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)