マーケットの注目テーマを分析!「太陽光発電」

経済産業省の試算から日本のエネルギー政策を読み解く

昔から日本は、食料自給率もさることながら、エネルギー資源も乏しい国として知られています。これは、すなわちエネルギー供給を海外に頼っていることを示しており、エネルギー供給手段を石油や天然ガスといった特定の資源に依存する構造は、安定性という観点から戦略的に望ましくありません。

そういった意味で、議論を呼ぶ存在である「原子力発電」もその存在が認められてきた側面があります。また、同発電方法は、燃料費の割合が小さい分、発電コストの面でも優れているほか、ウラン燃料が核分裂した時に発生する熱を利用しているため、再生可能エネルギーと同様にCO2を排出しない点も、その必要性を訴える根拠となってきました。

しかし、経済産業省は2021年7月に入って、各電源のコスト面での特徴を踏まえ、どの電源に政策の力点を置くか、2030年に向けたエネルギー政策議論の参考材料とするべく「2030年の電源別発電コスト試算」を公表しました。これは、前回の算出(2015年に実施)から6年ぶりの改定となります。当該試算が日本のエネルギー政策を考えるうえで、大きな契機となる可能性があります。

【参考】経済産業省「基本政策分科会に対する 発電コスト等の検証に関する報告」「発電コスト検証について」

今回の試算結果で特に注目すべきなのは、太陽光発電の2030年時点のコスト(1キロワット時あたり)でしょう。具体的には8.2円~11.8円と示され、原子力(11.7円以上)より安価になるとの見通しとなりました。前回試算(2030年段階)から、安全対策費の上積みが生じた原子力(当時は10.3円以上)は上昇となった一方、太陽光(メガソーラー)については12.7円~15.6円との試算から大幅に低下しています。また、2014年モデルプラント試算結果と比較すれば、そのコスト低下の勢いはより鮮明です。コスト面での優位性が失われると、原子力発電の位置づけも徐々に変化してくるでしょう。

ただ、風力や太陽光といった再生可能エネルギーを増やすと、悪天候による安定的なエネルギー供給の観点からリスクも高まります。バックアップ用の火力発電を確保しておく必要も生まれ、見えないコストも新たに生まれるはずですが、こうした要素は試算に織り込まれていません。8月にはこうした要素も考慮した試算が示されましたが、事業用太陽光発電のコストは18.9円と一気に上昇、原子力の14.4円を大きく上回る結果となりました。再生可能エネルギーは、決して環境問題を解決するための万能策ではないということです。

全体相場が落ち着けば、再び太陽光発電に物色の矛先が

また、すでに日本ではある程度太陽光発電の設置が進んでいることもあり、さらに導入を加速して、エネルギー政策における位置づけを高めるには、技術面でのブレークスルーも必然的に求められます。たとえば、従来設置できなかった場所に設置できるようにする、安定的な電力供給や発電効率の上昇等に伴うコスト低減などです。

とはいえ、課題も依然として残されているものの、2021年7月に経産省が示した試算は、日本のエネルギーの未来に対して重要な示唆を与えるものとなったことは間違いありません。足元では、新型コロナウイルスの感染拡大や全体相場の不安定感などもあって、物色が短期的なものにとどまっているものの、今後、環境関連の銘柄、特に太陽光関連の銘柄が再度脚光をあびる可能性は十分にありそうです。

太陽光発電関連銘柄というと、以前はソーラーパネルを製造・販売している企業、たとえばパナソニック(6752)、京セラ(6971)、シャープ(6753)、三菱電機(6503)などが代表的な銘柄でした。その後も大規模太陽光発電施設であるメガソーラーを建設し運用する企業などへ広がり、太陽光発電システムや製造装置、モジュール、素材など様々なところで関連する銘柄がその都度取り上げられてきました。関連する銘柄を全て網羅するとなれば、優に100社以上あるはずです。

太陽光発電の本丸はウエストホールディングスとの声も

とはいえ、太陽光発電関連への物色が強まる局面においては、必ず中核的な物色対象として取り上げられる銘柄があります。個人投資家に人気の高い銘柄として代表的なのが、ウエストホールディングス(1407)。同社の事業セグメントは再生エネルギー事業、省エネ事業、電力事業であることから、ど真ん中の銘柄と考える投資家も少なくありません。また、テーマ銘柄となると思惑的な資金が集まりやすく、熱しやすく冷めやすいといったデメリットが意識されますが、同社においては足元の業績を見ても、2021年8月期(2020年9月~2021年8月)の営業利益は前年比41%増の101億4,800万円。中心事業となるメガソーラー再生事業を本格展開しているほか、産業用太陽光発電事業においても、環境意識の高まりを背景に自家消費型の受注が増加しているなど、実際に成長を見せています。

(図=編集部作成、提供=楽天証券)


エヌ・ピー・シー(6255)は太陽電池製造装置や自動化・省力化装置を手掛ける企業です。残念ながら2021年8月期は減益での着地となりましたが、米国ではバイデン政権の政策の後押しにより、州や企業の再生可能エネルギー導入の取り組みが活発に行われており、太陽電池製造装置で世界的シェアを有する同社には追い風が吹いています。

フジプレアム(4237)は、ディスプレイパネルなど素材の複合化技術を環境・エネルギー分野にも活かしており、超軽量太陽電池モジュールや追尾型太陽光発電システムなどの製品を製造しています。レノバ(9519)は、太陽光発電、洋上風力発電・陸上風力発電、バイオマス発電、地熱発電などの再生可能エネルギーの発電施設を開発・運営しています。値がさ株で手掛けづらい面もあるものの、上場来高値圏で推移しており、足元の需給状況は良好です。

また、太陽電池において、次世代電池として関心が高まっているのが「ペロブスカイト太陽電池」とされており、これは将来的に期待されている次世代太陽電池となります。現在開発が進められており、いずれ現在主流とされるシリコン系電池を凌駕する電池と見られていることから、関連する銘柄を先回りしてチェックしておきたいところです。従来から研究開発を進めている企業として、東芝(6502)、パナソニック(6752)、三菱マテリアル(5711)などが有力とされています。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)