マーケットの注目テーマを分析!「メタバース」
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フェイスブックが社名をメタに変更し、株式市場が敏感に反応
SNSで世界最大手のフェイスブック(※旧称)が、2021年10月28日付で社名を「Meta(メタ)」に変更したことを発表し、世界中で話題を集めました。詳細は割愛しますが、様々な内部告発によって同社に対する社会的な批判が高まっていたこともあって、社名変更を通じて企業イメージの刷新を図る狙いもあったはずです。とはいえ、社名変更の最大の理由は「メタバース(Metaverse)」に対する注力姿勢を明確にするためでしょう。
そもそもメタバースとは、「meta=高次の」と「universe=宇宙、世界」という単語を掛け合わせた造語です。NHKによると「デジタルのコンテンツを画面上で見るだけでなく、仮想空間の中に深く入り込んでサービスを利用できるのが特徴の技術で、インターネットの“次の形”として注目」されている技術。これまで単体で語られてきたVR(仮想現実)やAR(拡張現実)なども巻き込んだ大きな構想となるはずです。
しかし、実はこのメタバースという概念は、あるSF作家が過去に作品の中で提唱したのが最初とされ、今、新しく生まれたものではありません。実際にゲームの世界では、既に同種のサービスは存在しています。それが近年の技術発展に伴って、ゲームの世界をさらに超えていく可能性が急速に高まってきたことで、にわかに注目を集めているのです。
米国の2,200人を対象に実施された調査(モーニングコンサルト社が10月29日~11月1日に実施)では、Meta社のメタバースについて、「興味なし」と答えたのが68%、「興味がある」が32%でした。調査対象の母数がそれほど多くないという点は留意する必要がありますが、この調査結果を踏まえると、テーマとしての爆発力が限られている印象も受けます。
全体像が見えてくるにつれて、さらに大きなテーマに変貌
しかし、あくまで現時点では実現イメージに対して、投資家の想像力が追い付いていない、もしくはまだ実現イメージが湧かないといったところが実態でしょう。最初はガラケーのほうが日本のユーザーには馴染むと否定的な見方も多かったiPhoneが、現実には信じられないスピードで社会を席捲したように、私たちの想像をはるかに超えて新技術や新サービスの浸透は進んでいきます。
そういった意味で、これから具体的な全体像がさらに見えてくる中で、テーマの規模が一段と膨張していく可能性は十分にあるはずです。実際、旧フェイスブックのみが注目されがちですが、「スポーツメーカーのナイキもメタバース参入を準備中、米国で商標登録を申請」との一部報道も市場規模の広がりを予感させます。
ちなみに、2021年9月に米国の大手銀行であるバンク・オブ・アメリカのストラテジストが、次のアマゾンやアップルを探す手掛かりとして、あるリストを発表しました。それは、実現すれば大きなインパクトをもたらす壮大な挑戦を指す「ムーンショット」という表題のリストで、そのうちの1つに「メタバース」が含まれているのです。
主力銘柄は任天堂、ソニーグループ、グリーの3社
関連銘柄の中で投資家だけでなく、一般的にも知名度があるのは、任天堂(7974)、ソニーグループ(6758)、グリー(3632)の3社でしょう。前述した通り、日本国内に限らず世界的に人気の「マインクラフト」を筆頭に、メタバースの概念に沿ったゲームは既に稼働しています。コロナ禍で大人気となった任天堂のゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」もそのひとつです。
また、ソニーグループは、人気ゲーム「フォートナイト」で著名な米エピックゲームズに2億ドル(約220億円)を追加出資すると発表しており、メタバースの構築を後方支援しています。スマホゲームが主軸のグリーも、子会社のREALITYを中心として「メタバース事業」に参入し、今後2~3年で100億円規模の事業投資を行うと発表しています。
爆発力のあるスモールキャップ銘柄にもメタバース関連が続々
そのほか時価総額の比較的小さなスモールキャップ銘柄にも、メタバース関連は幅広く存在しています。旧ロゼッタことメタリアル(6182)は、VR関連のサービスを提供しているだけでなく、本社機能をVR空間に移転しており、メタバースに関して知見を蓄えています。シャノン(3976)も子会社がバーチャル展示会を実現できるメタバース型バーチャルイベントサービス“ZIKU”の提供を11月1日より開始。「バーチャル・オープンキャンパス」の開催実績がもてはやされているエスユーエス(6554)にも投資家の物色が進んでいます。
メタバースファッション事業へ進出すると発表したシーズメン(3083)の急騰劇もマーケットに驚きをもたらしました。米エピックゲームズの認定デベロッパーであり、VRソリューションを展開する理経(8226)や「第33回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2021 AUTUMN/WINTER」にて、XRテクノロジーを活用した空間演出などの映像技術を提供し、メタバース時代のファッションショーを実現したIMAGICA GROUP(6879)も見逃せません。また、CRI・ミドルウェア(3698)の音声解析リップシンクミドルウェア「CRI LipSync」は、メタバース向けツール&ミドルウェアとして適用分野を拡大しています。
さらに、VR・AR・MR・ホログラム・プロジェクションマッピングなど、さまざまな新技術を活用した「XR(クロスリアリティ)」に強みを持つギークス(7060)のほか、同じくXR事業を展開するメディア工房(3815)や、AR・VRなどXR開発に必要なミドルウェアの提供を行うシリコンスタジオ(3907)なども関連銘柄としてマーケットで位置付けられているようで、思惑的な物色が向かう局面がありました。
加えて、ピー・ビーシステムズ(4447)、エムアップホールディングス(3661)、ガーラ(4777)など既存テーマであるVR関連に属する銘柄についてもメタバース熱の高まりを受けて、取り組みを開始するような企業が出てくる可能性もあり、要チェックです。
文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)