水素関連の有望セグメント・銘柄はどこ? 水素関連銘柄への投資の注意点も解説
(画像=phongphan supphakankamjon/EyeEm/stock.adobe.com)


水素エネルギーは、世界で推進されるグリーン社会の実現に不可欠とされており、今後数十年で大きく市場が成長する分野といわれます。新たな広がりを見せる水素関連ビジネスには、どのようなものがあるのでしょうか。ビジネスの概要と、日本政府や企業の取り組みを紹介します。

目次

  1. 1.水素ビジネス(関連銘柄)に注目が集まっている理由
    1. 1-1.政府が進める「グリーン社会」の実現
    2. 1-2.脱炭素やその要素技術としての水素に注目が集まっている
  2. 2.水素関連ビジネス市場を簡単理解! 市場規模予想、有望セグメントは?
    1. 2-1.水素関連ビジネスの今後の市場規模見通しは?
    2. 2-2.水素の種類(グリーン、ターコイズ、ブルー、グレー)
    3. 2-3.水素関連ビジネスの有望セグメント
  3. 3.水素関連の中小型銘柄4選 
    1. 銘柄1:山王
    2. 銘柄2:那須電機鉄工
    3. 銘柄3:中国工業
    4. 銘柄4:加地テック
  4. 4.水素関連銘柄に投資をする際の注意点
    1. 4-1.水素関連銘柄に投資をする際の注意点
    2. 4-2.銘柄選びで必要な視点は?
    3. 4-3.水素関連銘柄に投資をする際の投資手法は?
  5. まとめ.代替燃料の本命「水素」はこれからに期待

1.水素ビジネス(関連銘柄)に注目が集まっている理由

水素ビジネスが注目される背景には、多くの先進国がグリーン社会の実現を進めていることがあります。日本も例外ではなく、政府主導によるグリーン社会の推進と実現に向けた大規模投資が掲げられてきました。まずは、グリーンエネルギーに対する日本政府の動きと、水素エネルギーが期待される理由を見ていきましょう。

1-1.政府が進める「グリーン社会」の実現

グリーン社会の実現には産業や経済の大きな変化が伴うため、官民が一体となった政策が不可欠です。日本ではグリーン社会の実現について、内閣総理大臣がたびたび言及してきました。

菅前内閣総理大臣は2020年10月、「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言。現職の内閣総理大臣である岸田氏は、所信表明演説において2050年カーボンニュートラル実現の目標を堅持する考えを示しています。

政府の意向を踏まえ、経済産業省は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。予算や税、金融、規制改革・標準化、国際連携に大胆な投資を行うことで、産業構造や経済社会の変革を目指すことが示されています。また、イノベーションが期待される企業への後押しも明示されています。

1-2.脱炭素やその要素技術としての水素に注目が集まっている

グリーン社会の実現にあたり水素に注目が集まるのは、カーボンニュートラルの要素技術として期待されているからです。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味します。つまりカーボンニュートラルの実現は、温室効果ガスの排出量が実質ゼロの脱炭素社会の現実化を意味します。

そして、カーボンニュートラルの要素技術として水素が注目されているのは、水素エネルギーが化石燃料の代替エネルギーとして大きく期待されているからです。では、水素エネルギーにはどのような魅力があるのでしょうか。3つのメリットから見ていきましょう。

(メリット1)さまざまな資源からつくることができる

メリットの1つめは、さまざまな資源からエネルギーをつくれる点です。水素は、電気を使って水から取り出すだけでなく、天然ガスなどの化石燃料やバイオマスの水蒸気改質によってもつくられます。具体的には、化石燃料、メタノールやエタノールなどのアルコールのほか、下水汚泥、廃プラスチックなどから生成が可能です。さらに、製鉄所や化学工場などでも、副次的に水素が発生します。

(メリット2)燃料使用時に二酸化炭素(CO2)を排出しない

メリットの2つめは、燃料使用時にCO2を排出しない点です。水素エネルギーは、水素と酸素を結びつけることによる発電や、燃焼による熱エネルギーとして利用可能です。その際、CO2は発生しません。

(メリット3)炭素をしのぐ高い熱効率を誇る

メリットの3つめは、熱効率が良い点です。水素の1キログラムあたりの発熱量はおよそ3万キロカロリーといわれ、これは炭素の3倍以上です。水素を利用することで、より効率のよいエネルギー調達が期待されます。

参考:経済産業省「『水素エネルギー』は何がどのようにすごいのか?」日本経済新聞「『夢の燃料』水素、炭素超える発熱効率」

2.水素関連ビジネス市場を簡単理解! 市場規模予想、有望セグメントは?

水素エネルギー関連ビジネスは、エネルギーをつくるだけでなく、水素の生成や貯蔵・管理、利用など多岐に渡ります。ここからは、水素関連ビジネスの詳細と市場の見通しを見ていきます。

2-1.水素関連ビジネスの今後の市場規模見通しは?

水素関連ビジネスの市場規模は、今後拡大すると見られています。創業から50年以上にわたり市場調査を専門に行っている富士経済によると、2021年に183億円が見込まれる国内の水素関連市場は、2035年には4兆7,013億円にまで成長すると予測されています。

また経済産業省の調べでは、海外の水素関連市場は2050年に2.5兆ドルまで拡大するという試算もでています。このように水素関連市場は今後、世界的に拡大が見込まれる分野だと考えられているのです。

参考:富士経済「水素関連の国内市場と海外動向を調査」経済産業省「水素関連プロジェクトの研究開発・社会実装の方向性」

2-2.水素の種類(グリーン、ターコイズ、ブルー、グレー)

水素は、その種類によって4つの色に分類されます。水素を色分けするのは、取り出し方法によって生成時のCO2排出量が異なるからです。水素エネルギーは、燃料使用時にはCO2を排出しません。しかし、材料である水素調達の段階ではCO2を発生させる可能性があります。そのため、水素の調達も含めたCO2排出量を把握するために考えられたのが、水素の色分けなのです。

水素の色分けは、グリーン、ターコイズ、ブルー、グレーの4つでなされます。それぞれの特徴を、下表で確認しましょう。

▽水素の色分け
グリーン水素再生可能エネルギーで水を電気分解し得た水素。CO2は排出しない。
ターコイズ水素メタンを再生可能エネルギー由来電力で熱分解し、炭素を固体化して生成した水素。CO2は排出しない。
ブルー水素化石燃料を原料に生産された水素のうち、製造過程で発生したCO2を大気排出前に回収する方法で生成された水素。
グレー水素化石燃料を原料に、CO2を大気中に排出する方法で生成された水素。

生成の過程からCO2をほとんど排出しないのはグリーン水素ですが、生産量が少なくコストが高いなど、現時点では実用化に課題が残ります。そのため、まずはグレー水素やブルー水素で水素エネルギーの実用化を促進させ、最終的にグリーン水素を用いた水素エネルギーへの移行を目指しています。

2-3.水素関連ビジネスの有望セグメント

水素関連ビジネスは、製造、輸送等、貯蔵、利用の4つのセグメントに分類できます。各セグメントの詳細を確認しましょう。

(A) 製造
水素を抽出する技術の開発や、水電解装置の建設などが該当します。日本企業は世界的に最高水準の技術を持っていますが、大型化技術などでは欧州企業が先行しています。今後は、大型化への対応や技術力のさらなる向上により、低コストでの供給実現を目指しています。

(B) 輸送等
抽出した水素の輸送に必要な技術の研究、開発を行うセグメントです。水素は非常に軽い気体のため、そのままの状態で輸送するには広大なスペースが必要です。そのため、高圧圧縮や低温での液化、他の物質への変換などにより輸送します。

日本は水素の輸出入などを見越し、世界で初めて液化水素運搬船を建造しました。今後は、機器や技術を国際標準化し輸出を目指すほか、国内外の港の整備などにも取り組む予定です。また、水素供給のためのパイプラインの整備も進められています。

(C) 貯蔵
水素の利便性を高め普及を促進するには、抽出した水素を貯めておくシステムも必要です。水素の貯蔵も輸送と同じく、高圧圧縮や低温での液化、他の物質への変換などを行います。しかし、インフラとして水素を貯蔵するのは簡単ではありません。今後は水素の保管技術の向上による、貯蔵コストの低下が望まれています。

(D) 利用
水素の利用は、燃料電池として利用する方法と、水素自体を燃やして使う方法の大きく2つにわけられます。燃料電池として最も期待されるのは、自動車の動力源です。自家用車はもちろん、バスやトラックといった輸送の担い手である商用車への活用も期待されています。

水素自体を燃やして使う方法としてはこれまで、ロケットの燃料として液化水素が使われてきました。そして今後期待されるのが、水素発電です。水素発電の実用化に向けて、水素発電タービンの研究開発や実証実験プラントの建設が進められています。

3.水素関連の中小型銘柄4選 

水素関連では、トヨタ自動車や川崎重工業などが筆頭銘柄とされますが、ここでは要注目の中小型の銘柄を中心に水素関連ビジネスを行う具体的な4つの銘柄を紹介します。

銘柄1:山王

▽山王の概要
項目詳細
銘柄名/銘柄コード山王/3441
上場市場JASDAQスタンダード
時価総額89億6,000万円 ※2021年10月28日時点

山王は、電子部品の貴金属表面処理加工を主要業務とする企業です。2021年8月には、水素透過膜開発が結実し、電解めっきによるバナジウム膜上へのパラジウム銅合金膜の成膜技術を開発したことを発表しています。今後は水素透過膜にかかるコストの削減を図り、水素精製装置などの早期実用化や用途拡大の推進を計画しています。

銘柄2:那須電機鉄工

▽那須電機鉄工の概要
項目詳細
銘柄名/銘柄コード那須電機鉄工/5922
上場市場東証2部
時価総額126億4,800万円 ※2021年10月28日時点

那須電機鉄工は、電力や通信、鉄道、道路といった社会インフラを支える製品の製造販売を行う会社です。碍子(がいし)の製造工程で使われるボールミル技術を応用して、ナノ化鉄チタン水素吸蔵合金を製造しています。

水素吸蔵合金は、水素を原子状態で金属格子中に取り込むため、常温・常圧で液体水素と同等以上の貯蔵密度を保ち、なおかつ長期保管が可能となります。那須電機鉄工ではその技術を活用し、水素貯蔵システムや水素貯蔵タンクを製造・販売しています。

銘柄3:中国工業

▽中国工業の概要
項目詳細
銘柄名/銘柄コード中国工業/5974
上場市場東証2部
時価総額26億6,418万円 ※2021年10月28日時点

中国工業は、主にLPガスの容器や貯槽製造・販売などを手掛ける企業です。この高圧機器事業で培った技術力を生かし、燃料電池自動車に水素を充填するための「水素ステーション」向けの蓄圧機(高圧で圧縮された水素の貯蔵容器)の研究開発を進めています。2013年には、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同研究契約を締結したことでも注目を集めました。

銘柄4:加地テック

▽加地テックの概要
項目詳細
銘柄名/銘柄コード加地テック/6391
上場市場東証2部
時価総額81億5,191万円 ※2021年10月28日時点

燃料電池用高圧水素ガスコンプレッサー(圧縮機)などを製造する加地テックは、船舶・プラント・機械製造を行う三井E&Sホールディングスの子会社で、水素ステーション向け水素圧縮機も展開しています。2021年9月には、NEDOの助成事業にも採択されており、水素社会の実現に向けてさらなる活躍が期待されています。

4.水素関連銘柄に投資をする際の注意点

水素関連銘柄への投資では、いくつかの注意点があります。水素関連銘柄で採用するべき投資手法と併せて確認しましょう。

4-1.水素関連銘柄に投資をする際の注意点

水素関連銘柄への投資で気を付けるべきなのは、現状では収益化できていない企業が多い点です。現時点での水素銘柄への投資は、先行投資の側面が強くなります。水素関連ビジネスの業績が株価に反映するには、少し時間がかかることを知っておきましょう。

4-2.銘柄選びで必要な視点は?

水素関連銘柄を選ぶ際に確認するべきポイントは、業績や財務面で懸念材料がないかです。水素ビジネスへの参入は、どのくらいの利益を企業にもたらすかが不確定です。場合によっては期待していたほどの成果が出なかったり、成果がでるまでに予想外の時間がかかったりすることもあります。

業績悪化などによりビジネスが途中で頓挫することがないよう、現時点の経営状態が良好な銘柄を選ぶことが重要です。

4-3.水素関連銘柄に投資をする際の投資手法は?

水素関連銘柄への投資を成功させるには、投資スタイルによってとるべき投資手法を知っておくと良いでしょう。

水素関連銘柄への投資を短期売買で行うなら、重要となるのは売買のタイミングです。水素関連市場は将来に向けて長期的な成長が期待されています。しかし、魅力的な事業計画や研究・開発の成果などが発表された銘柄は、一時的に株価が跳ね上がることがあります。短期売買をするなら、徹底した情報収集から株価が急騰するタイミングを掴み、下がる前に売り抜けることがポイントです。

中長期での投資をするなら、体力がある企業を選ぶことが重要です。新ビジネスへの参入は、高額な設備投資などにより一時的に赤字がでるケースもあります。そのような状態でも事業を続けられる企業を選べるかが、中長期投資のポイントとなるでしょう。水素関連ビジネス以外の収入源となる基盤事業を有する企業も、投資の有力な選択肢となります。

まとめ.代替燃料の本命「水素」はこれからに期待

水素エネルギーは、グリーン社会の実現に向けた本命とされる新ビジネスです。国内だけでなく海外でも市場が拡大しており、今後が楽しみな産業のひとつだといえるでしょう。

水素関連ビジネスは本格的にスタートしたばかりであり、どのような技術やビジネスモデルが主流になるかがわかりません。事業として収益化できるまでには時間がかかると考えられるため、投資にあたっては企業の業績や財政面をしっかりと確認することが需要です。そのうえで、「期待が持てる、応援したい」と感じる銘柄に、少額から投資をしてみてはいかがでしょうか。

文・N.ヤマモト