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米国ではEVインフラは国策。日本企業も続々参入

昔から製造業は日本の「お家芸」として位置付けられており、なかでもトヨタ自動車(7203)を筆頭とした自動車産業がわが国に与えている経済的な影響(雇用等を含めた)は非常に大きくなっています。そんな自動車産業が現在「電気自動車(EV)」をキーワードに、世界的な変革期を迎えています。

米国のジョー・バイデン大統領はフォードのディアボーン工場を視察した際に行った演説で「自動車産業の未来は電気で、後戻りすることはない。米国の自動車産業は岐路に立たされているが、真の問題は、われわれが未来への競争でリードするのか、それとも遅れるのかだ」 と述べたことが伝わっています。また、「われわれはEV分野で中国に後れを取っているが、彼らはこのレースに勝つことはできない。そうさせてはいけない。われわれは迅速に行動する必要がある」 と語り、EV普及政策への熱い思いと同時に中国の台頭を見据えた危機感を表明したのです。

実際、バイデン政権が米連邦議会上院の超党派議員と合意した1兆2,000億ドル規模のインフラ投資法案にも、EVインフラへの投資が含まれています。こうした政策的な追い風だけでなく、民間でも研究開発を含む競争が激化しています。自動車大手のゼネラル・モーターズは、2025年までにEVと自動運転技術開発に350億ドルを投資すると6月に発表しています。もともと、2020年3月には200億ドルを投資するとしていましたが、同年11月に270億ドルに引き上げ 、さらに上乗せした格好です。ちなみに、同業のフォード・モーターは2月、自動車の電動化投資を2025年までに総額290億ドル実施する と発表していましたが、こちらも5月に300億ドル以上への引き上げを表明しました。

自動車メーカー以外のEVを巡る動きも活発化しはじめています。たとえば、身近な国内企業に焦点をあてれば、損保大手の三井住友海上火災保険が自動車保険の新特約として「EV充電設備損害補償特約」の販売を開始 しました。ほかにもダイキン工業(6367)が、EVのエアコンに使う新冷媒を開発して、株式市場でも話題になりました。その理由は、消費電力が少ないことから、「EVの航続距離を最大5割程伸ばせると見込む」 などと各方面のメディアが伝えたためです。消費者向けの電力・ガス切替サービス「エネチェンジ」などを提供するENECHANGE(4169)が米国のFreeWire Technologies社のEV向け蓄電池搭載型急速充電器「Boost Charger」の予約販売を開始するなど、直近IPO銘柄の中でも商機を見出して動き出している企業も出てきています。このように、EV自体の技術開発、周辺サービスや技術・製品などの拡充が加速しているのです。

EV普及には充電設備の整備が不可欠

EVの普及に向けて、最も大事になるポイントが「充電設備」でしょう。どれだけ高性能であっても、充電インフラが十分に整備されていなければ、利用者目線では怖くて使うことができないのは言わずもがなです。

富士経済が発表した調査結果では、EVやPHV向け充電インフラについて、国内では2035年に2020年比 で普通充電器が41.8%増、急速充電器が同46.1%増、ワイヤレス給電が同933倍になるとの予測 を発表しています。当然、米国と中国の増加規模は日本国内の予測よりも一段と大きなものとなっています。世界中のEVの開発競争によって、車体コストが低下し、ネックである充電インフラの整備が進むことで、環境意識の高まりも相まって、必然的にEVの普及は進んでいくことになるはずです。なお、注目度の高い「ワイヤレス給電」について富士経済は、「走行中給電の実用化が2025年以降 」に本格化すると予測しています。

EV充電のインフラ設備関連で代表的な銘柄として挙げられるのが、東光高岳(6617)です。同社が手掛けている急速充電器は、高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、コンビニエンスストア、道の駅などで設置実績があります。また、日東工業(6651)は配電盤などが主力ですが、EV充電設備でも、公共施設や商業施設などのパブリックエリアから、事業所の駐車場、住宅など、用途に応じた機器を揃えています。

東光高丘 週足チャート
(図=編集部作成、提供=楽天証券)


豊田自動織機(6201)は、商業施設・宿泊施設・駐車場・集合住宅・事業所などの施設に対応し、複数台充電に最適化した充電スタンドを提供。ダイヘン(6622)もテーマ銘柄の代表格として知られています。同社は、プラグイン急速充電器、ワイヤレス充電システム、超小型EV用ワイヤレス充電システムなどの充電インフラ機器を手掛けており、同社のEV用急速充電器は、2プラグ方式でほかの車が充電中でも切り替えが可能なため、充電渋滞を低減させることが可能です。

ニチコン(6996)の急速充電器は省スペースが特徴であり、狭いところにも設置の可能性が広がるため、都心部での需要を取り込む可能性が期待されるでしょう。日新電機(6641)はSPSS(スマート電力供給システム)や太陽光発電システム、充電スタンド「EVMATE」などを手掛けています。ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)は鉛蓄電池やリチウムイオン電池で有名ですが、EV用充放電器も提供しています。急速充電ステーションとしての利用のほか、充放電器の電力制限による簡易的なピークカット制御に対応しているようです。新電元 工業(6844)は、公共スペース向けの充電器でスタンド型と壁掛けタイプなどを取り揃えています。普通充電器と急速充電器の併用が可能な複数台システムのほか、非接触充電システムについても実証実験を進めているようです。

さらに、派生テーマである「ワイヤレス給電」関連も併せて見てみると、投資チャンスが広がるかもしれません。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)