弐億貯男氏が教える 「中小型株投資」で勝つための考え方とは?

目次

  • サラリーマンをやめるために始めた株式投資
  • 中小型株の魅力とは?
  • 投資先の候補となる中小型株の探し方
  • 弐億貯男氏が実践している中小型株投資の手法
  • 投資の初級〜中級者が実践できるポイント

サラリーマン投資家
弐億貯男

2002年10月に株式投資を開始。サラリーマンとして働きながら投資を続け、2019年には元本の250万円を追加入金を一切せずに2億円まで増やすことに成功した。割安成長株への投資を強みとしており、含み損益を考慮しない年間の実損益ベースでは、2007年以外はずっと前年比プラスの成績を維持している。ハンドルネームにもなっている資産2億円は達成したため、現在は2029年までに5億円という目標を設定。
ブログ:サラリーマンが株式投資でセミリタイアを目指してみました。
Twitter:@2okutameo

サラリーマンをやめるために始めた株式投資

――株式投資を始めた経緯を教えてください。

私が株式投資を始めたのは2002年。ちょうど今年で20年が経ちました。株式投資を始めたきっかけは、仕事を早くやめてリタイアしたいと思ったからです。投資を始めてから20年、サラリーマンをリタイアできる程度の資産は築くことができました。

ただ、サラリーマンになりたての頃は仕事を長く続けられる自信がなかったのですが、案外慣れるもので、結局はサラリーマンを20年間続けています。いつでもサラリーマンをやめられる資産はありますが、働くのが嫌なわけではないため、サラリーマンとして働きながら株式投資を続けているのが現状です。

――当初は仕事がつらくて仕方なかったと聞きました。

会社で営業に配属されて、その頃は定年まで働ける気がしませんでした。それでも仕事をしなかったら生活に苦しむと思い、サラリーマンを続けていました。

テレビで「日経平均株価が歴史的最安値を更新」というニュースを知ったのは、ちょうどその頃です。「株式投資」「最安値」というフレーズに反応して、「安いなら素人でも儲かる」と考え、株式投資を始めたのが発端です。そして、日経平均株価が当時のバブル崩壊後最安値をつける半年前、2002年10月から始めました。
※終値ベースで、2003年4月28日に日経平均株価は、当時のバブル崩壊後最安値となる7,607円88銭を記録(現在のバブル崩壊後最安値は2009年3月10日の7,054円98銭)。

中小型株の魅力とは?

――中小型株投資を行っている背景を教えてください。

私の場合、「中小型株を選ぶぞ」というわけではなく、「割安成長株」に投資をすることだけを心がけています。割安成長株は、PER(株価収益率) が15倍以下の銘柄と考えています。成長の度合いは、売上高がだいたい10%以上伸びているような銘柄ですね。ただ、割安成長株で銘柄を探していくと、だんだん中小型株が多くなってくるため、結果的に保有銘柄は中小型株がメインとなっています。

――中小型株の魅力については、どのようにお考えでしょうか。

中小型株投資の魅力は、株価の伸び代が大きいことです。優良大型株は安定しているものの5倍高、10倍高は望めません。ところが、IPO銘柄などの中小型株のうち、上場にともなって資金調達し、成長スピードを維持できるものは、5~10倍高を記録する銘柄も出てきています。

株価の伸び代が大きいため、大きく資産を増やしたい場合には、中小型株がおすすめです。早期リタイアしたいという人にとっては、夢のある投資対象ですね。

投資先の候補となる中小型株の探し方

――購入する銘柄はどのように探していますか。

時価総額の小さい銘柄から探しているのではなく、直近のIPO銘柄から見つけています。直近IPO銘柄は成長銘柄であり、直近2、3年は増収増益を見込んでいる企業が多いからです。長年上場している中小型株銘柄すべてを探しに行くよりも、手間は少なくて済みます。

IPO銘柄が上場した瞬間は、投資家に注目されて高値がつくことが多いため、すぐに手を出すことはしません。次第に投資家の関心がほかの銘柄に移り、需給が悪化して初値が上場来高値になったり、半年くらい右肩下がりになったりすることも珍しくないからです。成長株なのに、需給環境で割安になるような動きがよく起きるため、そのような銘柄を拾うこともあります。

その状況からPER15倍までで、2ケタ成長を続けている銘柄をベースにすることにしています。売上高が20%成長している銘柄であれば、PER20倍ぐらいならば許容することもあります。完全に機械的に考えるのではなく、多少柔軟に構えて銘柄を探しています。

――だいたい上場後、どれくらいの期間を様子見することが多いのでしょう。

上場してから、2、3カ月から半年くらいたった銘柄が投資対象になることが多いですね。そのタイミングだと底ばいになっていることもあるので、上場してから1回決算を発表してからの方が、「上場ゴール」という銘柄をつかまないで済みます。上場する前までは良い決算内容だったのに、上場後の決算でいきなり下方修正するといったこともあります。そのため1回は、四半期決算や本決算を見て「確かに継続している」と成長を確認して投資対象にすることが多いですね。

――市場環境を把握するために、どのように情報収集するのでしょうか。

今後の日経平均は下値模索の展開のような感じはしていますが、基本的には今が好景気なのか不景気なのか、日経平均株価がどうなるのかといったことをチェックすることはありません。「リスクヘッジのために日経平均で売りから入るETF(上場投信)を買いますか」などと聞かれることがありますが、手掛けることはありません。

相場がどちらに振れても、日本株全体として下落だったとしても、そこでなんとか耐えしのげるくらいの成長性のある銘柄を拾っていくことが大切です。短期的には、相場全体の下落に巻き込まれても2、3年したら元に戻ると考えています。

情報収集では、日本経済新聞を朝夕刊購読しています。ただし、それが株式投資に直接役立っているとは感じていません。純粋に読み物として楽しんでいます。銘柄探しでは、直近IPO銘柄を見つけるためにTwitterも参考にしています。いろいろな人がいろいろな銘柄をつぶやいているので、その中で興味を持った銘柄を調べ、投資対象にすることもありますね。

私の場合は、「これがいいよ」と言われた銘柄をそのまま買うことはありません。SNSで話題になっている銘柄はあくまでも参考にとどめています。それをきっかけに調べてみて、自分自身で買いを判断しています。情報源としては、Twitterや直近IPO銘柄を扱う情報サイトを見ることが多いです。よく耳にするような「会社四季報に付箋を付ける」といったことはしていません。

弐億貯男氏が実践している中小型株投資の手法

――実践されている中小型株投資の手法を教えてください。

購入するときに、「この銘柄なら将来的に3、4年後に株価が2~3倍、5年後には5倍くらいになっている」という大まかなイメージを頭の中で思い浮かべて投資します。例えば、10倍高となるテンバガーを狙って買う銘柄もあります。結果的に、利益額に満足して途中で売ることもあります。「3年後にはこれくらい、5年後にはこれくらいの株価」というイメージで購入しています。

基本的には半年以上保有します。長い銘柄では7年間くらい持っていました。だいたい半年から2、3年くらいは保有することが多いです。売るタイミングは、満足のいく利益水準や利益確定できる状態ですね。もう1つは、投資を決めたときにもくろんでいたシナリオが崩れるような開示が出た時も売却します。

業績の下方修正がいきなり発表されたりした場合は、一時的な要因だったら継続保有します。しかし、回復の見込みが立たないような情報が発表されたときは、すぐに利益もしくは損失を確定する売りへと動きます。

――その7年間持っていた銘柄名とは何でしょう。

「チャーム・ケア・コーポレーション(6062)」です。テンバガーを達成した銘柄で、2012年に購入しました。2011年に上場した銘柄で、購入当時は“直近のIPO投資銘柄”でした。その後、2014年くらいに少し買い増しをし、2017年くらいから株価の上昇に応じて少しずつ利益確定をしていきました。すべて売り切ったのが2019年です。

――現在は、どのような銘柄を持っていますか。

具体的な銘柄としては、2017年から「プレミアグループ(7199)」を保有しています。この銘柄は、オートクレジットと言って中古車ローンを引き受ける企業です。オートクレジットが主力の会社で、毎期20%くらい売上高が成長しています。この銘柄が割と含み益としては大きくて、2017年から一切売らずに持っています。

「リビングプラットフォーム(7091)」という施設介護の銘柄も保有中です。これも施設介護の事業の中で、売上高の成長率が20%くらいだったので「10倍株を達成できたチャーム・ケア・コーポレーションと同じような利益を上げられたらいいなぁ」という考えで保有しています。現在は、これらの銘柄を含め15銘柄ほど保有しています。

投資の初級〜中級者が実践できるポイント

――投資の初級者や中級者が実践できるポイントは?

初心者や中級者がうまくいかないポイントは、利益確定が早くなり過ぎる点です。私も投資を始めた最初の1年間は、1万円くらいの含み益が出ると、その含み益を失うのが怖くて利益確定を急ぎがちでした。一方、含み損のときはなかなか売れずに含み損が膨らんでいきました。

証券業界の格言「損小利大」ができていないと、資産は増やせません。株式投資を始めてから最初の2、3年くらいの初心者や中級者が失敗するポイントですね。例えば、10倍株を目指していても、そこまで「握力」をもてないケースがほとんどです。そこをがんばって利益確定しないで粘ることを心掛けています。中長期投資家だったら、30%くらい上がるまでは我慢することです。

利益確定するときも全部売るのではなく、200株とか300株とか保有しているのであれば、そのうちの一部を売るという考え方をしています。少しずつ利益確定を進める感じです。なるべく粘るようにしていけば、1回の利益確定でそれこそ5回分くらいの損切りを吸収できます。大きく利益確定して、損切りはなるべく素早く小刻みにやっていけば、差し引きで資産は増えていくでしょう。

――損切りのポイントを教えてください。

業績の下方修正が開示されたら、すぐに判断することです。業績の下方修正は、投資したときに織り込んでいなければすぐに損切りします。悪材料が出たらすぐに損切りすることがポイントです。

「ロスカットラインを厳格にするべきだ」という話もありますが、機械的に「ロスカットライン10%下がったら」とか、「5%下がったら損切りします」といったことはしていません。短期売買であったら、5%や10%を損切りで設定してもよいと思います。しかし、中長期投資の場合は、相場の状況によって短期的に含み損が10%を超える瞬間もあります。

ロスカットラインで機械的に運用するのは、損失が20%に達したら売るなど、「これ以上は無理」というラインに達した時です。私の場合は悪材料が出ていないことを前提として、「20%までは粘ろう」と考えています。

投資を決めたときにもくろんでいたことと異なるような開示が出たときには、ちゅうちょせずに損切りします。もちろん損切りした後に株価が上がり始めることもありますが、上がるかどうかはその時点ではわからないし、さらに売ってから下がることもあるので、「株式投資とはそのようなものだ」と割り切るしかないですね。

――2022年の見通しや方針などを教えてください。

1月末現在の株式市場環境は、厳しい雰囲気になっています。マザーズ市場は高値から30%くらい下げています。そろそろ底を打つ気もしますが、日経平均株価は高値からそれほど下げていないので、まだ下落余地があるでしょう。日経平均株価が大きく下がるようなことがあれば、マザーズも巻き込まれると考えられるため、少し悲観的な状況ではあります。

しかし、このようなタイミングは、どちらかというと割安成長株投資家からすると、良い銘柄を多く見つけやすいタイミングです。市場環境が良いときは「良い銘柄だけど少し割高」といった銘柄を妥協して買うことが多いです。割安ではない水準で買ってしまうわけです。

現在の市場で言うと、PER15倍以下かつ2ケタ成長の基準で探すと、たくさんの銘柄を発見できます。中長期投資家にとっては、現在またはこれからが仕込み時になるでしょう。現在投資中で投資余力に乏しい人にとってはつらい状況ですね。

いま投資余力がある人やこれから株式投資を始める人にとって、現在は私が株式投資を始めた2002年の状況と市場が似ています。「総悲観は買い」という面もあります。中長期では下値模索から、底打ちを待つといった状況です。数年のスパンで見られれば、購入の良いタイミングと言えるでしょう。

――長期的な目標として、5億円を目指しているとおっしゃっています。具体的な計画について聞かせてください。

私の場合は、250万円の元本から株式投資を開始したときに2億円という目標を掲げました。「2020年に2億円を目指します」というすごく高い目標でした。その時は、2020年に2億円という目標から逆線表を引いて、どのペースで到達できるのかと計算したら、「年率30%の利益で達成できる」と、判断しました。毎年30%ずつ増えていく目標を掲げて取り組みました。そして、2019年に2億円を達成しました。そこに至るまで、目標を下回ることはありませんでした。

2022年1月現在、2億円を丸々株式に投資しているわけではなく、5割は投資、5割は現金で持っています。その中で年率30%を目標にすると、保有している銘柄で60%のリターンを回していく必要がありますので、あまりにも無理があります。そのため、現在は年率10%を目標にし、逆線表を引いています。それによると、2024年3億円、2029年に5億円を達成できる計算になります。

私はブログをやっていますが、「目標なく淡々とやるより、目標を公表した方がブログ的にも面白い」と判断して目標とともに取り組んでいます。

――最後に「SmallCap ONLINE」の読者へアドバイスをお願いいたします。

株式投資は、基本的に最初は損からスタートするものです。最初の半年、あるいは2、3年は損失を出す人がほとんどだと思います。

しかし、株式投資で「出だしにつまずいたから自分には無理」と判断するのはもったいない話です。株式投資に向いていない人を挙げるとすると、「株式投資ってみんながやっているからやらなければいけない」という気持ちでやっているような、あまり楽しんでいない人だと言えます。株式投資が好きな人は、仮に出だしでつまずいても、2、3年はうまくいかなくても、失敗から学ぶ授業料として割り切って長く続けていくことで成果につながると思います。

株式投資が好きな人は株式投資に向いている人だと思います。「長く続ける」「継続は力なり」という考え方が私からのアドバイスです。

文・SmallCap ONLINE編集部