株式投資の「押し目買い」とは?判断方法や投資時の注意点


株取引には、株価が上昇トレンドにある局面で一時的に下落したタイミングを見計らって買いを入れる「押し目買い」という手法があります。押し目買いを成功させるには、いかにタイミングを掴むかが重要です。チャート分析による押し目の見極め方や、出来高の活用方法を確認し、押し目買いにチャレンジしましょう。

目次

  • 投資用語「押し目買い」とは?
    • 「押し目買い」とはどのような投資手法?
    • 「押し目買い」が良い理由
    • 投資タイミングが重要な理由
  • 相場格言から投資タイミングの重要性を学ぼう
    • 「押し目待ちに押し目なし」とは?
    • 「戻り待ちに戻りなし」とは?
    • 「初押しは買い 初戻りは売り」とは?
  • 「押し目」を見極める判断方法
    • トレンドを見極めるにはチャート分析が有効
    • トレンドラインを描く
    • 移動平均線を見る
  • 「押し目」買いで利益を出す方法と注意点
    • 注意点1:押し目ではなく下落トレンドの転換点の可能性
    • 注意点2:「押し目買い」に失敗して「ナンピン買い」をして損失をふくらませる可能性
    • 注意点3:上昇トレンドへの反転を見極めてからエントリーする
    • 注意点4:出来高のトレンドをしっかり見る
  • 「押し目買い」に失敗したら?
    • 反転しなかったらすぐに損切りする
    • 株式投資では「利大損小」が大事。7敗3勝でも資産は増える
  • まとめ:指標を見極めて「押し目買い」を狙おう

投資用語「押し目買い」とは?

「押し目買い」とは、投資で使われる投資用語のひとつです。株式投資やFX(外国為替証拠金取引)などで、比較的頻繁に使われる手法です。ここではまず、押し目買いの基本事項を確認しましょう。

「押し目買い」とはどのような投資手法?

押し目買いとは、株価が上昇している局面で一時的に株価が下がったタイミングを見て株を購入する方法です。株価が下がることを「押す」ということから、押したタイミングでの購入を「押し目買い」と呼びます。株価が再上昇したときに、押し目買いした銘柄を売却できれば値上がりしたぶんの売却益を得られます。

押し目買いにより利益を狙えるのは、株の値動きには必ず調整の場面があるからです。実際、上昇トレンドにある銘柄でも、一直線に上がっていくことはほとんどありません。ほとんどの場合、小さな上下を繰り返しながら上昇していきます。

ではなぜ、株の値動きは途中で調整が入るのでしょうか。それは、価格がある程度上がった時点で、利益確定の売りを行う投資家が現れるからです。彼らが利益を確定することで一時的に株が売られ、株価が下がる(調整する)のです。

このような、株価が一時的に下がるタイミングを掴んで投資を行うのが、押し目買いの仕組みです。ちなみに、押し目買いとは反対に株価が下がっている局面で、一時的に株価が上がったタイミングを見て株を売却する「戻り売り」という手法もあります。

「押し目買い」が良い理由

押し目買いが良いといわれる理由は、利益につながりやすい投資手法だと考えられるからです。押し目買いは、基本的に上昇トレンドの銘柄を狙って行われます。上昇トレンドとは、直近の高値と安値を切り上げながら株価が継続的に上昇している状態のことです。

トレンドは方向性が決まると、しばらくはその流れが続きやすい傾向にあります。つまり、たとえ途中で小休止の下げを行ったとしても、再び上昇していく可能性が高いのです。このように押し目買いは、今後も継続的な価格上昇が期待される上昇トレンドの銘柄への投資のため、利益につながりやすいといわれるのです。

投資タイミングが重要な理由

押し目買いで重要なのは、言わずもがな購入のタイミングです。間違ったタイミングで購入してしまうと株価が思ったように上昇しないだけでなく、場合によっては下落に転じてしまう可能性があるからです。押し目買いで利益を上げるには、購入タイミングの見極めがポイントとなるでしょう。

・資産を増やすためには購入タイミングが重要
押し目買いは、一時的に株価が下がっているところを狙って購入します。これは、簡単なように見えて実は勇気がいることです。いくら上昇トレンドだと踏んでいても、いま現在株価が下がっている銘柄を買うのは躊躇する投資家もいるでしょう。

自信を持って押し目買いをするにはチャートや決算書をしっかり読み込んだうえで、タイミングを見計らって冷静に売買を行っていくことが重要です。

・どんなに良い銘柄でもタイミングを間違えると損する
株式の中には、資産内容が健全で安定した利益を上げており、継続して配当が出ているような優良銘柄があります。しかし、たとえ優良銘柄だったとしても、闇雲に投資をしたのでは利益を上げることは難しいとされます。どんな優良銘柄でも株価が上がり続けることは考えづらく、下落する局面が訪れるからです。

相場格言から投資タイミングの重要性を学ぼう

投資におけるタイミングの重要性は、昔から言われてきました。ここでは、昔からある3つの格言を紹介します。

「押し目待ちに押し目なし」とは?

「押し目待ちに押し目なし」とは、もう少し下がったら押し目買いしようと値下がりを待っているにもかかわらず、株価がどんどん上がってしまう状態を指します。結果的に希望価格を超えた価格での購入になったり、価格が上がりすぎて買えなくなったりすることを言います。

特に、「昔はこの値段だった」と値上がり前の価格を知っている人ほど、買うタイミングを逸してしまう傾向があるようです。押し目買いを成功させるには、価格が下がったときに確実に購入していくことが重要になるでしょう。

「戻り待ちに戻りなし」とは?

「戻り待ちに戻りなし」とは株を高値で売りそこなった人が、下降トレンドになっているにもかかわらず戻りを待ち続けることです。最終的には想定外の安い価格で売却することになったり、売却できずに“塩漬け株”になったりします。

株式投資では、最高値で売却できることはほとんどありません。下降トレンドに入ったと感じたなら、欲を出さずに潔く売却してしまうのも、株式投資では重要な戦略となります。

「初押しは買い 初戻りは売り」とは?

押し目と戻りについてはもうひとつ、「初押しは買い 初戻りは売り」という言葉も覚えておくと良いでしょう。これは、上昇トレンドで初めて押したら買い、下降トレンドで初めて戻したら売りを行いましょうという意味です。

「初押しは買い 初戻しは売り」を守ることで、損失を抑えながらある程度の利益を積み上げていくことができると考えられます。投資初心者で売買のタイミングがわからず悩んでいるなら、この格言を取り入れた投資を試してみるのもひとつの方法です。

「押し目」を見極める判断方法

押し目買いをするにあたり最も重要なのは、「押し目」の見極めです。そのためには、チャートを見て分析する方法を知っておく必要があります。

トレンドを見極めるにはチャート分析が有効

トレンドを見極めるには、チャート分析が有効です。チャートとは、1日や1週間、1ヵ月といった一定期間の株価をグラフ化したものです。チャートを見て分析することで、値動きの傾向や流れといったトレンドを確認することができます。

トレンドラインを描く

トレンドの確認に有効な分析のひとつが、トレンドラインです。トレンドラインとは、チャートに対して描く補助線のことです。一定の時間足の安値同士を結んだものをサポートライン(下値支持線)、高値同士を結んだものをレジスタンスライン(上値抵抗線)と呼びます。

上昇トレンドを見極めるには、右肩上がりにジグザグになっているチャートにサポートラインを書き込みます。安値が前の安値よりも高い状態が続き、サポートラインが右に向かって上昇しているなら、上昇トレンドであると考えます。押し目買いのタイミングが来る可能性があるため、相場のチェックを欠かさないようにしましょう。なお、サポートラインは上向きの傾きが大きい方が、より強い上昇トレンドだとされます。

下降トレンドを見極めるには、右肩下がりのジグザグチャートの高値同士をつないだレジスタンスラインを確認しましょう。高値が前の高値と比べて下がり続けているなら、下降トレンドの可能性があります。特にレジスタンスラインの傾きが大きい場合には、強い下降トレンドであるとの判断ができます。

押し目買いのタイミングは、上昇トレンドにある銘柄が一時的に調整し、サポートラインに近づいたところになります。テクニカル分析では、株価が下落してサポートラインに近づくと、下落のスピードが弱まり、反発するタイミングと考えるからです。一方、戻り売りのタイミングは、株価が下落トレンドにある銘柄が一時的に上昇し、レジスタンスラインに近づいたあたりとなります。

移動平均線を見る

押し目のタイミングを掴むには、移動平均線も有効です。移動平均線とは、一定期間の平均株価をつないで表した線のことです。押し目のタイミングは、移動平均線と株価が交わった時だといわれます。交わるタイミングが来たら、速やかに取引を行いましょう。

「押し目」買いで利益を出す方法と注意点

トレンドラインや移動平均線を活用しても、押し目買いが必ずうまくいくわけではありません。株式投資を成功させるには、損失を大きくしないことが大切です。ここでは、押し目買いで注意するべき4つの点を解説します。

注意点1:押し目ではなく下落トレンドの転換点の可能性

押し目買いの注意点のひとつめは、下落トレンドへの転換期に投資してしまうケースです。押し目のつもりで下落トレンドの銘柄に投資した場合、株価は上がることなく含み損が増えていくケースがあります。

下落トレンドに転換する時には、出来高(期間中に成立した売買の数量)が極端に減少するケースがあります。下落トレンドでの購入を避けるには、購入時に出来高も確認しましょう。

注意点2:「押し目買い」に失敗して「ナンピン買い」をして損失をふくらませる可能性

押し目買いの注意点の2つめは、押し目買いの失敗を挽回しようと「ナンピン買い」を行い、さらに損失を増やしてしまうケースです。ナンピン買いとは、保有している株が下落した際にさらに買い増すことで、平均取得価格を下げることを言います。

長期的に見て上昇トレンドなら、最終的に株価が上がるためナンピン買いの効果があります。しかし、下落トレンドなら、ナンピン買いをすればするほど損失が大きくなる可能性があります。そのため、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析に基づいて、「今後相場は絶対に上がる」という強い自信がある時以外は、損失を確定させる「損切り」を選択するのも1つの方法です。

注意点3:上昇トレンドへの反転を見極めてからエントリーする

押し目買いの注意点の3つめは、上昇トレンドへの見極めをしないまま投資をスタートしてしまうことです。一時的に価格が下がっている銘柄を見付けたからと言って、すぐに飛びついて購入するのは得策ではありません。押し目買いを成功させるにはまずチャート分析などを行い、上昇トレンドにあることを見極めてから購入を行いましょう。

注意点4:出来高のトレンドをしっかり見る

押し目買いの最後の注意点は、出来高をしっかりと見ることです。先述の通り出来高は、期間中に成立した売買の数量を示します。出来高が多い銘柄は、売買が活発だったことがわかります。逆に出来高が少ないと、銘柄の人気が低く売買をする人が少なかったといえるのです。

トレンドやチャートに関わらず、出来高が大きな銘柄は勢いがあり、今後値上がりする可能性があります。一方、出来高が少ない銘柄は株価が下がる可能性が大きいことは知っておくべきです。

「押し目買い」に失敗したら?

株は、値動きがある金融商品です。企業の業績や投資家の心理、世界経済等さまざまな影響を受け、価格が上下します。そのため、チャートなどをしっかり分析して押し目買いをしても、失敗する可能性もあります。

投資で大切なのは失敗しないことではなく、失敗したときにどのように挽回するかです。ここでは、押し目買いに失敗したときの対処方法を詳しく解説します。

反転しなかったらすぐに損切りする

押し目買いした銘柄が上昇に反転せず株価を下げ続けるなら、速やかに損切りを検討しましょう。損切りとは、含み損がある資産を売却して損失を確定させることです。

押し目買いした銘柄が下落トレンドに入った場合、持ち続けるほど含み損が大きくなっていきます。損切りは損失を確定させる取引なので、できるだけしたくない人も多いでしょう。しかし、損失を大きくしないためには、速やかな損切りが有効な場合も多くあります。

株式投資では「利大損小」が大事。7敗3勝でも資産は増える

株式投資を成功させるには、「利大損小」を心がけることが重要です。含み損が出ている銘柄について、最も良くないのはそのまま持ち続けることです。理由には、以下の2つが挙げられます。

  • 下落トレンドなら含み損が大きくなり続ける可能性がある
  • 含み損を抱えていても何の利益も生まれない

含み損がある銘柄をそのまま抱えているのは、再上昇するかもしれない、損失を確定したくない、という気持ちがあるからではないでしょうか。しかし、仮に含み損のまま10年保有し続けたとしても、その間はその資産からは値上がり益は生まれません。

だったら、損切りして次の投資の資金としたらどうでしょうか。いったんは損失が確定しますが、その次の投資で利益が出た場合には、資産がしっかりと働いてくれたことになります。このように手持ちの資産をしっかりと働かせた効率的な投資をするには、損失が出て回復の見込みがない場合には潔く損切りを行い、次の投資に向かうことが重要になるでしょう。

まとめ:指標を見極めて「押し目買い」を狙おう

押し目買いは、上昇トレンドにある銘柄を一時的に株価が下落したタイミングで購入し、再上昇時の利益の獲得を目指す方法です。株はたとえ上昇トレンドでも一直線には上がらず、途中で調整しながら右肩上がりに上昇していくという性質を持ちます。その調整をうまく使って上昇トレンド銘柄を安く購入していくのが、押し目買いの手法です。

・押し目買いは上昇(買いポジ)、戻り売りは下落トレンド(売りポジ)で有効
押し目買いは、もみ合いの地合いではあまり意味を成しません。押し目買いをするなら、上昇トレンドで行いましょう。また、押し目買いとは逆に下落トレンドでは、戻り売りが効果的です。

戻り売りは、株価が下落する流れの中で一時的に上昇したタイミングを計って株を売却し、利益を得る(もしくは損失を少なくする)方法です。どちらの方法も、最大の利益を狙うのではなく目標益が出た時点で確定するなど、利益をしっかりと積み上げていくことが重要になります。

・チャート分析でトレンドライン、出来高等を見極めて投資しよう
押し目のタイミングを計るには、チャートや出来高などを見極めることが肝心です。チャートでトレンドラインや移動平均線を見れば、上昇トレンドなのかがある程度わかります。また、併せて出来高を見ることで、銘柄の勢いを知ることができます。

取引量が多く勢いがある銘柄は、株価が低くても今後大きく成長する可能性があります。一方、出来高が少ない企業は、投資家からの人気が低く、今後株価を大きく下げるかもしれません。出来高が少ない銘柄への投資は、チャートの状態が良くても保留にする方が安心です。

・100%成功することはない。シナリオが外れたらすぐに損切りしよう
押し目買いは、チャート等を分析して行う戦略のある投資です。しかし、100%成功するわけではありません。シナリオから外れて含み損を抱えてしまったら、速やかに損切りを行うべきです。そして、損切りした資金を別の投資の資金とすることで、新たな投資による利益の獲得を目指しましょう。

文・N.ヤマモト