DAIBOUCHOU氏が教える「中小型株」の魅力や有望銘柄の探し方

株式投資に挑戦する人たちに向け、書籍やTwitterで情報発信を続ける個人投資家のDAIBOUCHOU氏。一時は資産を10億円まで「大膨張」させた同氏に、投資初級者や中級者にもおすすめの中小型株の魅力をお聞きします。また、有望銘柄の探し方、同氏の実際の投資手法、2022年の注目テーマもご紹介。中小型株投資の魅力を知って、2022年をあなたの中小型株投資元年にしてみませんか?

目次

6年で資産10億円を達成! DAIBOUCHOU氏の投資遍歴

大型株やインデックスとは異なる中小型株の魅力

 1. 大型株より大幅な成長が期待できる

 2. 個人中心市場のためチャンスが生まれやすい

 3. 自分の投資スタイルに合わせたアプローチができる

 4. 儲けをインデックスに引きずられない

「安定した保有株を分散運用」がDAIBOUCHOUスタイル

DAIBOUCHOU流、中小型株の探し方

 1. IPOから一定期間経った公募割れ銘柄を探す

 2. セグメント、サブ事業に注目する

 3. 自分が理解できる事業、新高値をつけているもの探す

安定的なリターンを得るために初中級者が実践できるポイント

 1. 決算説明資料を読み込む

 2. 企業の業績予想の出し方を見る

 3. 若いうちから投資を始める

2022年の見通し、注目のテーマとは?

専業投資家・ブロガー
DAIBOUCHOU

200万円を元手に2000年から株式投資をはじめ、
わずか6年で一時10億円の大台を達成するという離れ業を成し遂げた。
リーマンショック後の2009年、日本経済の低迷を感じて日本株投資を休止したが、
2010年に日本株への投資を再開。資産バリュー株や高配当株への投資を続けるかたわら、
成長株など多くの銘柄に分散投資を行っている。2008年以降の資産額は非公表。
Twitter:@DAIBOUCHO

6年で資産10億円を達成! DAIBOUCHOU氏の投資遍歴

――DAIBOUCHOUさんは2002年から投資を始められたということですが、それ以前から投資に関する知識をお持ちだったのですか?

PC関連企業で営業をしており、特に投資の知識はありませんでした。営業の仕事と会社の流れについてはひと通り知っているという、いわゆる普通のサラリーマンでした。

――投資の世界には、どのようなところから入られたのでしょうか。

すでに上場を廃止していますが、トヨタカローラ岐阜と、濃飛西濃運輸の株式を購入するところから始めました。1日の出来高があるかどうかわからないようなマイナーな地方上場株でしたが、投資を勉強するにはよかったですね。私が投資を始めた当初は、大型の「資産バリュー株」はそれほど多くなかったので、必然的に中小型株を扱うことになりました。

――以降も中小型株への投資が中心と聞いていますが、大型株に積極的に手を伸ばさなかったのはなぜなのでしょうか?

自分自身の能力もそうですが、企業や株式投資そのものについても基本的に信用していないからです。当時から、「適当に大型株を選んで買っただけで、儲かるわけがない」と思っていました。

投資を始めるにあたっていろいろと調べていくうちに、中小型株の中には純資産の半分ほどでしか評価されていない、いわゆる「資産バリュー株」がいくつも存在することに気づきました。突如として純資産が大幅減少することはそうそうないし、買っておけば配当はもらえるだろうし、そのうち評価も付いてくるだろうと考え、中小型の資産バリュー株に投資するようになったわけです。

結果的に、投資先企業が親会社に市場より少し高い値段でTOB(株式公開買い付け)されたり、機関投資家の注目を集めて適正に評価されるようになったり、時間はかかったけれど考えは間違っていなかったことが証明されました。そして2004年に再就職を覚悟のうえで、専業投資家になりました。

――そこから2006年には資産10億円を達成されました。

上場してもまだ規模の小さかったアーネストワン(現飯田ホールディングス)やフージャースホールディングスの株を買っていたのですが、当時のマーケットでは不動産株は人気がなく、売買も閑散としていたんです。それが2005年に「不動産流動化」が株式市場で大きなテーマとして注目され始め、ライブドアのインパクトや株式投資ブームもあって、新興市場であるマザーズ銘柄が高値まで買われました。その波に乗って達成することができました。

大型株やインデックスとは異なる中小型株の魅力

――続いて、中小型株の魅力について教えてください。

中小型株には、大きく4つの魅力があると考えています。

1. 大型株より大幅な成長が期待できる

中小型株は、大型株の企業よりも大幅な成長が期待できる点が魅力のひとつだと思います。例えば、1兆円の売り上げを2兆円にするのと、100億円の売り上げを200億円にするのとでは難易度が違いますよね。中小型株の世界では、新商品のヒットやM&A(企業の合併・買収)などで業績や株価が大きく変化します。知名度が低い企業は、知名度が上がることでも株価が上昇しますし、掛け算で成長する可能性があります。

2. 個人中心市場のためチャンスが生まれやすい

大型株に比べて流動性が低い、時価総額が小さいなどの理由から、中小型株は機関投資家が入りにくいとされます。例えば、時価総額100億円で1日の売買代金が1億円程度しか売買されていない株などに、機関投資家はリソースをかけづらいので個人投資家中心の市場になりやすいという面があります。

個人投資家中心だと評価の波が激しくなるので、安くなった時に買って適正な株価への戻りを狙うことなど、トレード好きの人であれば波にうまく乗るやり方もあると思います。

3. 自分の投資スタイルに合わせたアプローチができる

さまざまな方法でアプローチできるのもポイントです。私のようにグロース株(成長株)や人気株が信用できないというタイプであれば、バリュー株(割安株)に手堅く投資することもできますし、人気株を追いかけるタイプの人もアプローチできます。親会社や他企業のTOBを待つという戦略もありますね。

4. 儲けをインデックスに引きずられない

“α(アルファ)”を狙いやすいのも、アナリストや機関投資家の注目が集まりにくい中小型株ならではの魅力だと思います。私が言う“α”とは、インデックスや日経平均、NYダウなどの各市場の平均値を上回ったか、下回ったかという投資家の能力次第で変動するプラスマイナスの幅です。

例えば、日経平均がプラス4%になった日は、大体の人が平均的にプラス4%儲かっていると考えることができます。しかし、その日プラス10%儲かった投資家がいたら、その人は6%分の努力をしていたということになりますよね。その6%を、“α”と考えています。

個別株投資はインデックス以上の利益を上げることが命題ですから、日々の取引で“α”をどれだけ高く取れるかが焦点になります。日経平均が上がらなくてもインデックスに引きずられず、自分が儲かる可能性がある。そのために、バリュー投資やグロース投資など、いろいろな手法でそれぞれに頑張っているということです。

「安定した保有株を分散運用」がDAIBOUCHOUスタイル

――DAIBOUCHOUさんの投資スタイルとしては、グロースよりもバリュー重視ということですね。

そうですね。グロース株も“放っておけるもの”があればよいのですが、競争が激しい成長産業のなかで、本当に力を持っている企業かどうかを判断するのは難しいんです。

例えば、アンビスホールディングスや日本ホスピスホールディングスなどのホスピス事業をやっている会社がありますよね。そういう事業はある程度需要が見えていて、成長が予測できます。反対に、競争の激しいネットマーケティング系の企業となると難しい。たとえ、いま成長していても、今後の成長を予測した上でPER(株価収益率)に見合った価値があるかという判断は難しいものです。

もちろん、成長が予測できれば投資してもよいと思うのですが、その業界や事業モデルへの専門知識がなかったり、IR情報に依存したりするのでは難しいかなと思います。きちんとビジネスを理解できない、成長性が予測しにくいと思う銘柄は手をつけずに、まだ評価が低いところを狙うようにしています。

――そうした投資スタイルが定着した根底には、自分を過信しないという考えが一貫してあるということでしょうか。

私自身の投資手法としてポジション量を最大にしたいと思っており、そのためにはポートフォリオ全体のボラティリティ(変動率)を抑えなければいけないと考えています。持っているキャッシュの一部を使って投資していくのであれば、「ポジション量を少なく、値動きも小さくする」か、「値動きを抑えながらポジション量を増やす」のどちらかしかないと思うんです。

値動きの激しいものでフルポジ(全額投資)やフルレバ(信用取引を活用して、投下資金以上の投資をする)をやっていたら破産は免れないと思うので、そうしたリスクは取れません。ポジション量を増やすために、安定した保有株かつ分散で運用するスタイルが私にとっていちばん心地よいということですね。

――「放っておけるもの」も、DAIBOUCHOUさんが銘柄を選ぶときの基準になるのでしょうか。

そうですね。企業は先行投資で減益になるタイミングがありますが、それがどう転じるかは念入りに調べて長い目で見ないとわからないケースがあります。そういった手間がなく、前年の同期との比較でも、常に業績が伸びている企業の株のほうが楽かなと思っています。

言い換えると、状況が悪い時でも今の株価が維持され、時間が味方してくれることが私の銘柄選定の条件なのですが、そういった銘柄は機関投資家も好むところなので買ってもらえることがあるんです。中小型株の株価上昇の要因のひとつは、「機関投資家が見つけて買うこと」なので、売れる機会を待つという戦略ですね。

DAIBOUCHOU流、中小型株の探し方

――中小型株の探し方で、DAIBOUCHOUさんが実践されていることを教えていただけますか?

普段から行っている、3つの探し方を紹介します。

1. IPOから一定期間経った公募割れ銘柄を探す

最近、私が気に入っている方法は、IPO(株式の新規上場)から3ヵ月〜半年経った後に、株価が公募価格割れしているもので、かつ業績がしっかりしている銘柄を探すことです。

上場したばかりの中小型株の評価は不安定ですが、上場したてというだけでトレーダーに買われることがあります。しかし、トレーダーがIPO株をひととおり買って売り抜けた後は、知名度もないので買い手が急激に減ります。さらに、そこにロックアップが外れた既存の投資家や株主が投げ売りするので、もう一段下がります。人気のある銘柄ならよいのですが、そうでなければ売り需要しか残されていないんです。

公募価格は証券会社のプロの方々が「最低でもこれくらいの評価はされるべき」と考えるベースの価格だと思っているので、公募価格割れしている銘柄は「割安だろう」と判断しています。

うまくいかないことも多いのですが、アールプランナーのように上昇したものもあります。買ってから1年くらいで評価されると理想ですが、今は“重箱の隅をつつく”タイプの投資家がいないのか、いまひとつ冴えないところもありますね。

2. セグメント、サブ事業に注目する

IT系企業などで、メイン事業は受託開発という一見パッとしない会社が、サブ事業でシステムやパッケージソフトなどの開発を手がけていて、メイン事業よりも好業績……という場合があります。「これならもっとPERが高く評価されてもよいのではないか」と思う機会も少なくありません。

このように、メイン事業とは別のセグメントで成長性のある事業を進めていたりするので、セグメントごとに注目してみるのもよいと思います。

3. 自分が理解できる事業、新高値をつけているもの探す

初心者の方にとってはIPO銘柄をひと通り見てみること自体が勉強になると思いますし、その中で自分が理解できる事業を手がけていて、PERが10倍〜20倍台で、成長率のよい銘柄に投資していけばよいのではないかと考えています。

ありきたりですが、新高値をつけている銘柄もよいですね。個人の方が提供している「チャートリスト」というサービスがあるのですが、私はそこに気になる銘柄のコードを入力してチャートを見ています。

安定的なリターンを得るために初中級者が実践できるポイント

――中小型株投資の初級者、中級者が実践できるポイントはありますか?

基本的なポイントになりますが、3点お話します。

1. 決算説明資料を読み込む

まず短期で大儲けを狙おうとしないことは大前提だと思います。次に、自分の能力を過信せず、企業の雰囲気に呑まれないで、しっかり「決算説明資料を読み込み把握すること」です。

一見、悪材料に見えるようなケースでも、業績が落ち込んだわけではないことが決算説明資料で補足されていたりします。決算説明資料を読まない投資家は多いので、中小型株は数字だけ見られて株価が下がることがよくありますが、資料から好材料を見抜くことが大切です。

――バリュー株投資では、見かけの業績が思わしくないときこそ、決算説明資料から好材料を地道に見抜くことがほかの投資家との差別化につながりそうですね。

そうですね。決算説明資料を読み込めば、本来の価値より割安に買えるチャンスが見つかると思うんです。

例えば、今なら新収益認識基準への変更で、季節性が変わっているものも多いでしょう。本来は第2四半期や第4四半期(通期決算)に寄っていたものが平準化され、それが前年から減収したように見えると株価は下がりますが、安く買うチャンスと捉えることもできます。3ヵ月経てば逆の現象が起こると思うので、その時に売ればよいと思います。

――決算説明資料は決まったフォーマットがないぶん、企業がよく見せようとする部分もあると思います。そこに惑わされないようにするにはどうしたらよいでしょうか?

今まで開示していた情報を急に開示しなくなったら注意が必要です。あとは、グラフの数字を常にエクセルで引いたり、割ったりすることですかね。

例えば、顧客数が右肩上がりでもそれが累積なら当然なので、そういった場合は引き算で純増数が少なくなっていないか確認します。純増数は一定だとしても母数が大きくなっていればパーセンテージに直して見たり、引き算と割り算で見極めることですね。売り上げを従業員数で割って、1人当たりの売り上げや利益を見たりもします。

2. 企業の業績予想の出し方を見る

企業の業績予想の出し方も、会社の様子を知るポイントになります。いつも黒字予想を出すけれど、毎年最後には下方修正して赤字転落に着地するという、達成できない業績予想を立てている会社は避ける。「株探」や「マネックス銘柄スカウター」の業績予想の推移が参考になります。

細かく見たい時は、有価証券報告書がおすすめです。決算短信では販管費はまとめた数字でしか出ていないですが、親切な会社だと有価証券報告書には販管費の内訳が書かれていたりします。

あとは、企業のホームページや社長のインタビュー記事を読むのもよいです。私もよく見ていますが、YouTubeでも社長が業績を説明している動画がたくさんあります。

3. 若いうちから投資を始める

投資は、なるべく早くから始めることが理想だと考えています。というのは、40代、50代で投資を始めるとリスクを許容できず、増やすことへのプレッシャーが増してくるんです。

積立投資も同じですが、定年間際でいちばん積立金額が大きくなって、本来リスクを減らすべき時期に最もリスクが大きくなってしまいます。リスクは後回しにせず、無理のない範囲でしっかり金額をかけていくのがよいと思います。

2022年の見通し、注目のテーマとは?

――最後に、2022年の市場の見通しをお聞かせいただけますか。

日本株はバリュエーションが割安ですし、コロナも落ち着いてくる気配があり、私の中では横ばいか、今年並みの相場が続くのかなと楽観的に見ています。

岸田文雄総理が投資家に厳しそうに見えるのがネガティブ要因としてありますが、支持率は意外と高いので世の中一般から見ると悪くないのかなとも思います。所得を増やそうとされていることと、18歳以下の子どもがいる世帯への10万円給付が、経済的にプラスになるのではないかと思っています。

仮に、譲渡益や配当で税金が多少上がるとしても、いまは安定感のほうが重要ではないかと思いますね。給料が上がったり可処分所得が増えることで、国内の景気が良くなってほしいですね。

――2022年に注目する投資テーマなどもありますか?

これまではキントーンなど、情報系のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が注目を集めていましたが、これからはERP(基幹系情報システム)などの基幹系DXが期待できるのではないかと思います。そして大型株も含むいわゆるシクリカル銘柄(景気敏感株)と、環境債、ESG投資が流行ってきているので、今まで注目されていなかったリサイクル、資源再生、廃棄、処分、バイオマスも活況になるかもしれませんね。

脱炭素も、引き続き注目を集めるでしょう。業界として非常に幅広いので、見落とされている部分もたくさんあり、チャンスが拾えるのではないかと思います。

――貴重なお話、ありがとうございました。

SmallCap ONLINE編集部