遠隔医療の関連銘柄4選! 投資する魅力と注意点


離れた距離から医療行為や医療サービスを提供できる「遠隔医療」の需要が高まっています。それに伴い、デジタルを活用した医療関連事業に積極的に取り組む企業も増加しました。遠隔医療の基本事項と今後の動向、注目の関連銘柄を確認し、投資資産への組み入れを検討しましょう。

1.遠隔医療とは?

「遠隔医療」とは距離を隔てた医療機関と患者、もしくは医療機関同士が、インターネットなどの情報通信技術を用いて行う医療を指します。もともとは対面診療を補完する役割として限定的に行われていましたが、新型コロナウイルス発生以降、その需要は急速に高まっています。ここではまず、遠隔医療の基本事項を確認しましょう。

1-1.医療DXとは?

遠隔医療を考えるにあたっては、医療DX(デジタル・トランスフォーメーション)を知っておく必要があります。

DXとは、顧客や社会ニーズを基にデータとデジタル技術を活用し、製品やサービス、ビジネスモデルを変革することです。それによって、業務そのものや組織・プロセス・企業文化等を変革し、競争上の優位性を確立することがDXの目的とされます。

医療DXでは医療分野にDXを取り入れることで、具体的には以下の効果が期待されます。

・電子カルテなどによる患者情報の管理・共有の簡略化 ・事務手続きのシステム化による、医療従事者の負担軽減 ・オンライン診療システムの普及による遠隔医療の促進 ・遠隔医療の利用増加による患者の負担軽減

このように医療DXは、遠隔医療に必要な医療システムを構築する技術として、大いに期待されているのです。

1-2.遠隔医療の概要

遠隔医療とは、距離を隔てた医療機関と患者もしくは医療機関同士が、インターネットなどの情報通信技術を用いて医療を行うことです。遠隔医療は、大きく以下の2つに大別されます。▽遠隔医療の区分

区分内容
DtoD(Doctor to Doctor)医療機関間の遠隔医療
デジタル技術で各医療機関をつなぎ、情報共有や支援を行う
DtoP(Doctor to Patient)医療機関と患者の遠隔医療
離れた場所からオンライン診療を行う

1-3.遠隔医療で具体的に何が変わるのか?

遠隔医療が広がると、具体的に何が変わるのでしょうか。期待される変革の一例を、DtoDとDtoPのそれぞれで見てみましょう。

・DtoDで期待される変革の一例

(1) 遠隔コンサルテーション・カンファレンス
テレビ会議システムなどを利用し、専門医の助言や症例検討などの支援を受けられるようになる

(2) 遠隔画像診断
X線写真やMRI画像などを他の医療機関と共有し、画像診断医による読影や診断を受けられるようになる

(3) 遠隔病理診断
病理検査の標本画像などを他の医療機関と共有し、病理医による読影や診断を受けられるようになる

(4) 遠隔救急支援
モバイルICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)システムを利用し、診断・治療までの時間短縮を図る。特に緊急性が高い脳卒中や急性心筋梗塞といった循環器病への活用が見込まれる

(5) 遠隔手術支援
手術映像をリアルタイムに共有することで、遠隔地の医師が手術の支援を行う

参考:総務省「総務省の遠隔医療に関する取組」(2019年11月)


DtoDでは、デジタル技術の活用による医師や医療機関の負担軽減と、効率的でより充実した医療提供の実現が期待されています。

・DtoPで期待される変革の一例

(1) バイタルデータ(血糖・血圧・体重)の有効活用
患者が毎日記録するバイタルデータをデジタルで管理・共有することで、より正確な診察・診断が実現できるようになる。特に糖尿病など、日々の自己管理が重要とされる病への活用が期待される

(2) 小児神経疾患(難病、難治、希少疾患など)患者のオンライン診療
専門医が少ない小児神経疾患の患者をオンライン診療することで、患者の通院負担が軽減できる

(3) DtoPwithN(Nurse)モデルの推進

看護師などが側にいる状態で、タブレット端末などを利用したオンライン診療を受ける。看護師は医師からの指示により、薬剤の処方にとどまらない治療行為などが可能になる

参考:総務省「総務省の遠隔医療に関する取組」(2019年11月)


DtoPでは、患者の負担を抑えた医療の提供が期待されます。DtoPが普及することで、通院が困難な患者でも適切な診断と治療が受けられるようになるでしょう。

1-4.遠隔医療が注目を浴びたタイミング

遠隔医療はかねてより期待を集めていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に一層注目されるようになったと言えます。新型コロナの拡大で通院が困難、もしくは通院が叶わない人が増えたからです。

例えば、アレルギー薬や降圧剤など、毎回の対面診療の必要性がそれほど高くないとされる薬を常用している人は、通院することなく薬を処方してもらえるほうが利便性は高いでしょう。また、新型コロナウイルスによる移動制限や感染予防対策により長距離移動が制限され、先述のように通院が叶わなくなった人も増えたと言われます。これらの問題を解決するために、一部でオンライン診療の活用も広がっていきました。

遠隔医療が注目されるようになったもうひとつの理由に、新型コロナウイルス感染者の急増で医療機関の負担が増えたことが挙げられます。少しでも負担を軽減するべく、例えば、集中治療室の遠隔管理や効率的なPCR検査など、デジタル技術を活用したシステムの構築が進められました。

2.投資対象としての遠隔医療の魅力

遠隔医療は今後さらに成長が期待される分野のため、投資先としても注目されています。ここでは、遠隔医療が投資先として注目を浴びはじめた理由や市場規模の拡大予測、遠隔医療の種類などを解説します。

2-1.遠隔医療が投資対象として注目を浴び始めた理由(規制緩和)

投資対象として、遠隔医療が注目を浴びはじめた理由には、遠隔医療に関する規制が緩和されたことが挙げられます。新しいシステムやビジネスが広がるには、技術やアイデアがあるだけでは足りません。ビジネスが拡大できる状況にあることも重要です。遠隔医療では、政府による規制緩和が医療DXの推進を後押しするとして好感され、投資先として注目が集まりました。

では、規制緩和の具体的な内容はどういったものなのでしょうか。政府が2020年4月の「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」で発表した遠隔医療の規制緩和は、主に以下の2点です。

(1)オンライン診療が初診から可能になる (2)服薬指導がオンライン・電話で可能になる

規制緩和前は対面診療を原則とし、オンライン診療は再診に限って補完的に活用するにとどまっていました。しかし、規制緩和により初診からでもオンライン診療が可能になったことで、より多くの医療機関が利用できるようになったのです。

2-2.遠隔医療の市場規模

遠隔医療の市場規模は、世界的に拡大が見込まれています。グローバルインフォメーションの市場調査によると、2020年に352億1,000万ドルだった世界の遠隔医療の市場規模は、2028年までに3,931億3,000万ドルに達すると予想されています。

日本国内でも、遠隔医療市場は大きな成長が期待されています。富士キメラ総研が発表した、今後の遠隔医療市場の動向予測は以下のとおりです。

▽日本国内における遠隔医療市場の今後の動向予測

市場規模
2020年 2025年
遠隔医療関連市場全体 260億円 432億円
– スマートウェアソリューション 1億4,000万円 300億円
– 手術・治療支援ロボット 81億円 183億円

遠隔医療市場全体では、2020年~2025年にかけて市場規模が約1.6倍に成長すると予測されています。また、着衣によって生体情報を取得するスマートウェア関連市場は約214.3倍、手術・治療支援ロボット関連市場は約2.3倍に拡大するとしています。

特に、スマートウェアを含めた“ウェアラブル端末”“は、遠隔医療で患者の状態を把握するために欠かせません。手術・治療支援ロボットも、遠隔での治療に不可欠です。このように遠隔医療の広がりは、さまざまな医療DXの普及促進にもつながると考えられています。

2-3.遠隔医療の種類

遠隔医療の関連銘柄に投資する前に、遠隔医療の種類を知っておくことも重要です。投資する企業が提供する技術やサービスがどういった場面で活用されるのかを、より具体的にイメージできるようになるからです。

遠隔医療が、DtoDおよびDtoPに区分されることは1-2で解説した通りですが、厚生労働省はDtoPをさらに以下のように分類しています。

▽DtoP型の遠隔医療の分類

遠隔医療の分類 医療者
診断など医学的判断を含む オンライン診療 医師
オンライン受診勧奨
一般的な情報提供
(診断など医学的判断を含まない)
遠隔健康医療相談 医師以外でも可
参考:厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針(2019年7月一部改訂)」

・オンライン診療
オンライン診療とは、診察や薬の処方などを含む実際の医療行為をオンライン上で行うことを指します。具体的には、高血圧や糖尿病患者のバイタルチェックと処方などが挙げられます。

・オンライン受診勧奨
オンライン受診勧奨とは、オンライン上で患者の診察を行い、疑われる疾病を判断し、然るべき医療機関へ受診を促すことです。具体的には、「鼻風邪をひいて高熱があり耳が痛い」という患者に対し、「中耳炎が疑われるので耳鼻科を受診してください」というようなやり取りが該当します。

・遠隔健康医療相談
遠隔健康医療相談とは、一般的な医学情報の提供や受診勧奨にとどめ、具体的な診断を行わないものです。例えば、救急安心センター事業(♯7119)や子ども医療電話相談事業(♯8000)が該当します。

3.遠隔医療の関連銘柄4選

規制緩和以降、遠隔医療事業や医療DXに取り組む企業は増加しています。ここでは、成長が期待できる4銘柄を見ていきましょう。

3-1.メドレー(マザーズ/4480)

メドレーは、「医療ヘルスケアの未来をつくる」を企業理念として掲げ、医療DXや医療ヘルスケア領域の人材コンサルティングを主に行っている企業です。医療DXではオンライン診療システムをはじめ、予約システムの提供・電子カルテシステムの構築・調剤薬局向けの業務支援システムの提供などを行っています。

メドレーの基本事項は、以下の通りです。

▽メドレーの基本事項

項目詳細
設立日2009年6月5日
上場日2019年12月12日
証券コード4480
株価2,390円
時価総額769億7,760万円
※株価は12月23日終値、時価総額は12月23日終値から算出

2021年12月期第3四半期決算短信によると、医療プラットフォーム事業の当期累計売上高は18億9,236万円で前年同期比プラス146.9%です。全体の売上高は80億7,205万円のため、医療プラットフォーム事業が占める割合は、約23.4%となっています。

3-2.MRT(マザーズ/6034)

MRTは、創業より一貫して医療を通じた社会への貢献を推進する企業です。医師に特化した人材派遣や転職サポートのほか、アプリを通じたオンライン診療サービスや、スマホでできる保険適用内の再診療サービスなどの提供を行っています。

MRTの基本事項は、以下の通りです。

▽MRTの基本事項

項目詳細
設立日2000年1月26日
上場日2014年12月26日
証券コード6034
株価1,447円
時価総額82億6,932万円
※株価は12月23日終値、時価総額は12月23日終値から算出

2021年12月期第3四半期決算短信によると、当期の連結累計売上高は32億5,872万円で前年同期比プラス69.0%でした。

売上高の内訳は、医療人材サービスが28億6,329万円(前年同期比プラス66.2%)、その他が3億9,542万円(同プラス92.2%)です。

3-3.イメージ ワン(JASDAQ/2667)

イメージワンは、健康な長寿社会とクリーンなエネルギー社会の実現を目指す会社です。医療DXに取り組む「ヘルスケアソリューション事業」、人工衛星・無人航空機などの画像データを広く地球環境分野で活用するGEOソリューションや、再生可能エネルギーや再生プラスチック事業を行う「地球環境ソリューション事業」の2つのセグメントでビジネスを展開しています。

イメージ ワンの基本事項は、以下の通りです。

▽イメージ ワンの基本事項

項目詳細
設立日1984年4月11日
上場日2000年9月22日
証券コード2667
株価809円
時価総額83億3,561万円
※株価は12月23日終値、時価総額は12月23日終値から算出

2021年9月期決算短信によると、ヘルスケアソリューション事業の売上高は9億8,365万円(前年同期比プラス49.7%)、GEOソリューションを含む地球環境ソリューション事業の売上高は14億5,194万円(前年同期比プラス9.8%)でした。全体の売上高は24億3,559万円なので、ヘルスケアソリューション事業が占める割合はおよそ40.4%となっています。

3-4.ケアネット(マザーズ/2150)

ケアネットは、デジタル時代のサステナブルな健康社会づくりを目指す会社です。18万人の医師が会員登録をしている医師プラットフォームを基盤としたコンテンツビジネスを行うメディカルプラットフォーム事業、製薬企業のDX化を支援する医薬DX事業、医師向けのキャリアコンサルティングなどを行う連結グロース事業があります。

ケアネットの基本事項は、以下の通りです。

▽ケアネットの基本事項

項目詳細
設立日1996年7月1日
上場日2007年4月20日
証券コード2150
株価1,073円
時価総額502億9,366万円
※株価は12月23日終値、時価総額は12月23日終値から算出

2021年第3四半期決算短信によると、医薬DX事業の売上高は48億7,956万円(前年同期比プラス76.1%)、メディカルプラットフォーム事業の売上高は2億7,290万円(前年同期比プラス12.6%)でした。調整前の全体の売上高は57億1,578万円(四半期連結損益計算書計上額は56億3,580万円)のため、医療DX事業が占める割合は約85.4%となります。

4.遠隔医療関連銘柄に投資をする際の注意点

最後に、遠隔医療関連銘柄に投資する際の注意点および対策を確認しましょう。

4-1.遠隔医療銘柄に投資する際の注意点

遠隔医療銘柄は、最先端技術を利用した新たな医療サービスや技術の提供に取り組む企業です。ビジネスが成功すれば大きな値上がりが期待できますが、思ったような成果が上がらない場合には株価が低迷する可能性もあります。遠隔医療銘柄に投資をするにあたっては、以下の4つの注意点を知っておきましょう。

・新しい分野のためビジネスが成功しない可能性がある 医療関連銘柄の企業は、さまざまな新しいビジネスに挑戦しています。場合によってはビジネスが思うように育たず、期待した投資の成果を得られない可能性があります。

・大手企業の参入で立場が危うくなる可能性がある
遠隔医療銘柄は新しい分野のため、中小企業やベンチャー企業も多く参入しています。そのような企業は、ビジネスの成功で大きく株価が跳ね上がる可能性があります。しかし、同じ分野に大手企業が参入した場合、規模の小さい企業では太刀打ちできない可能性があることには注意が必要です。

・逆金融相場では株価が冴えない等の可能生あり(米国のテーパリングなど)
株式は通常、景気拡大時に株価が上がるとされます。そのため今後、段階的な金融引き締め(テーパリング)が行われると、株式市場全体の値動きが振るわなくなる可能性があります。

新型コロナウイルス発生以降、米国は景気低迷を避けるため市場に供給するお金の量を増やす「量的緩和」を行ってきました。今後は、新型コロナウイルスの収束を見据えたテーパリングが行われる予定です。

市場は、テーパリングの実施をすでに織り込んでいるともいわれますが、実際にはどうなるかわかりません。株式に投資をするなら、テーパリングの実施や相場の状況も注視していきたいところです。

4-2.投資をする際に心がけたいこと

遠隔医療銘柄への投資を成功させるには、注意点を知るとともに対策方法を確認しておくことが重要です。最後に、遠隔医療銘柄への投資で知っておきたいポイントを4つ確認しましょう。

・業績やビジネス成長、競合の動向を定期的に確認する
遠隔医療分野は世間の注目が高く成長が見込まれる市場であり、日々新しい企業が多く参入しています。投資を成功させるには投資前はもちろん、銘柄購入後も競合他社の動向や業績、株価の比較などを定期的に行い、把握しておくことが重要です。

・銘柄を分散で投資する
遠隔医療銘柄は、先述のとおり値動きが大きくなる傾向があります。そのため、資金のすべてを1銘柄に集中投資するのではなく複数の銘柄に分散投資を行い、値下がりにより資産が減少するリスクを分散しましょう。

・値動きが激しいので資金管理を徹底する
値動きが大きい銘柄に投資をするなら、資金管理を徹底することも重要です。資金管理とは、投資家の資産のうち投資できる資金がいくらなのかを管理することです。

資金管理を行うにはまず、現在の金融資産や今後の資金計画、収入などを基に、投資可能額(投資の予算)を出しましょう。投資成績等に関わらず、運用は予算内で行うことが重要です。投資可能額は、年齢やライフステージによっても変わるため、投資スタート後にも定期的に見直しましょう。

・大手企業とのアライアンスなどの有無
遠隔医療分野には、さまざまな技術が必要とされます。そのため、1社だけで新たなビジネスをつくり上げることは難しく、複数の企業と提携しながらビジネスを大きくしていくことが重要とされます。投資銘柄を決める際には、大手企業などとのアライアンス(業務提携)などがあるかどうかも重要な材料として確認しましょう。

5.まとめ:遠隔医療は今後も要注目のテーマ

遠隔医療は医療にDXを取り入れることで医療機関と患者双方の負担を軽減しつつ、より効率的で質の高い医療を提供できるとして注目が集まるテーマです。その成長は一時的な隆盛ではなく、長きにわたって期待できると考えられます。

5-1.将来的に必要で市場規模の伸びも予想される

新型コロナウイルスで注目を集めた遠隔医療ですが、高齢化や人手不足などの深刻化が予測される今後は、必要不可欠な分野となっていくでしょう。日本国内だけでなく、世界的な市場規模の拡大も期待されています。

5-2.投資時の注意点を踏まえた投資を

投資先としても期待される遠隔医療銘柄ですが、値動きが大きく競合他社が多いなど、投資をするにあたってはいくつかの注意点があります。遠隔医療銘柄への投資を成功させるには、資金管理の徹底や分散投資、競合他社や市場の定期的なチェック等を徹底することが重要です。大きなリターンを狙える投資先のひとつとして、積極投資資産の一部に遠隔医療銘柄を組み入れてみてはいかがでしょうか。

文・N.ヤマモト