注目銘柄「田中化学研究所」(JQ・4080)を分析

世界的なEV化の流れに乗る二次電池の正極材メーカー

販売先にはパナソニックの名前も

田中化学研究所は、二次電池正極材料メーカーです。1957年12月に設立、2000年2月に店頭公開(現ジャスダックに上場)しました。発表があった当時大きな話題になりましたが、現在は住友化学の子会社となっています。

同社の正極材料は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の「高性能二次電池」に使われています。二次電池はモバイル機器や家電製品などで広く使用されていますが、やはり世界的なEV(電気自動車)化の流れの中、車載用途での市場が拡大。自ずと同社の引き合いも強まっていることから、EV関連の高いテーマ性を有する企業として市場では位置づけられています。

ちなみに、二次電池には多くの部材が使われていますが、性能に大きく影響する「4大部材」のうちのひとつが「正極材料」という位置づけです。事業構成も二次電池事業の単一セグメントのため、投資家目線ではシンプルで理解しやすい企業でもあります。

参考までにはなりますが、(1)リチウムイオン電池向け製品、(2)ニッケル水素電池向け製品、(3)その他の品目別生産実績(2021年3月期)の割合では、(1)が90%を占めています。また、販売先にはパナソニックや丸紅の名前が挙がっています。

車載用の引き合いが好調で、今期売上高は約89%増益へ

直近の2022年3月期の第2四半期決算では、売上高が前年同期比94.5%増の194億3,900万円、営業利益は前年同期の約3.4倍となる6億2,000万円、四半期純損益は4億9,700万円の黒字(前年同期は2,100万円の赤字)で着地しています。リチウムイオン電池向け製品は前年同期比74.8%増、ニッケル水素電池向け製品も同31.9%増と好調。これは民生用途で一部苦戦も見られたものの、期待通り車載用途が全体をけん引した結果です。

2022年3月期の見通しは、売上高が前期比89.0%増の430億円、営業利益は8億円、最終利益は6億5,000万円を計画しています。期初計画では赤字見通しを示していましたが、2021年10月26日付で上方修正した格好です。ただ、これは製品の主原料であるニッケルおよびコバルトの国際相場が上昇基調で推移したことから、一時的に利益が大幅に増加していることが背景と会社側は説明しています。

同社にとって、ニッケルおよびコバルトの国際相場の推移が重要なファクターであることは間違いありません。それは、売上高が「(主原料国際価格+加工単価)×販売数量」という構図になっているため、相場が高騰すれば見た目上の売上高も変動するからです。しかし、見た目上のインパクトだけでなく、しっかりと実態面として同社は今後生産能力を引き上げて、日本、韓国、中国、欧州など世界に製品を拡販。同時に付加価値を引き上げつつ、生産合理化を図って収益率を高めていくことに伴う中長期的な成長可能性を有しています。順調に従業員数も増加してきており、体制を着々と整えています。

そんな中長期的な成長可能性を有している同社ですが、市場環境も当然良好です。先進国を中心に自動運転とともにEV化の流れは今後一段と加速していくはずで、車載向けを中心にリチウムイオン二次電池市場は急拡大が予測されているのです。冒頭で触れたように、EV関連としての位置づけの高い同社には関心が向かう局面が今後も多いでしょう。

13週線接近は押し目買いの好機。目先は2918円がターゲット

(図=編集部作成、提供=楽天証券)
(図=編集部作成、提供=楽天証券) ※2022年1月19日作成


株価は昨年10月下旬以降、5月から継続していた1,000円を挟んだ底固めから上放れる格好で、上昇基調を強めています。昨年11月下旬の調整局面では2,168円から1,435円まで下落する場面が見られたものの、切り上がる13週移動平均線を支持線にリバウンドを見せています。12月30日につけた2,485円を高値に足元では調整していますが、13週線に接近する局面においては押し目狙いのスタンスで対応したいところです。

また、26週線が52週線を上抜ける、ゴールデンクロス示現によりシグナルは良好です。昨年後半の大幅上昇に対する利益確定の動きから目先的には2,000円~2,500円水準でのもち合いが意識されやすいものの、ターゲットとしては2017年10月高値である2,918円が視野に入ってきたと考えられます。なお、全体相場の地合い次第の面もありますが、これをクリアしてくると、次のターゲットとして2009年9月高値の3,420円が意識されてくる可能性はありそうです。

そのほか、一目均衡表では雲を上放れて推移しており、切り上がる転換線、基準線が支持線として機能しています。また、遅行スパンは実線を大きく上放れて推移しているため、現状の株価水準でのもち合いを続けたとしても、半年間程度は、上方シグナルは継続する可能性が高そうです。なお、ボリンジャーバンドでは中心値(13週線)+2σとのレンジでの推移を継続しています。+2σを上回る局面では、いったん調整に入りやすい傾向が見られます。もっとも、足元では+1σを下回ってきていますので過熱感はありません。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)