マーケットの注目テーマを分析!「生体認証」
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セキュリティに不可欠な生体認証は、タッチレスへ
生体認証(バイオメトリクス)とは、人間の身体的または行動的特徴を用いて個人認証する仕組みと位置付けられています。特徴としては一人ひとり固有の身体的特徴を鍵としていることから、なりすましや偽造が困難とされ、確実なセキュリティを必要とする場面での本人確認に適していると言われています。
生体認証といえば真っ先に思い浮かぶのが、「指紋認証」でしょう。スマートフォンの認証などで採用されている一般的な認証方法です。ただし、新型コロナウイルス感染症対策の観点から言えば、他人の触った場所に手指で触れることは極力避けるべきです。
こうした意識の変化に伴い、現在は「非接触(タッチレス)」といった特徴を備えるソリューションが主流になってきています。非接触の生体認証としては「顔認証」などが注目され、現在のスマートフォンにおいても、顔認証が取り入れられています。
ただ、「顔認証」は2D方式や3D方式など技術開発が進んでいるとはいえ、マスク着用では反応が鈍いといった面もあります。そこで、手をかざす「掌紋認証」のほか、瞳の中に見える「虹彩」を利用した「虹彩認証」、目の白目部分に浮き出た毛細血管を利用する「眼球血管認証」、手の中に見えている静脈を利用した「静脈認証」、人が話す声で認証する「声紋認証」、さらに耳の形を生体認証に利用した「耳形認証」など身体的特徴を鍵とした本人確認方法なども開発されました。
現状、各認証方式には欠点とされる部分もありますが、今後認証確度や価格面も踏まえて、その利用場面において活用範囲が拡大してくることになるでしょう。
生体認証で70の国と地域に展開するNEC
生体認証に関連する中心的な銘柄といえば、NEC(6701)でしょう。同社は1971年に指紋認証技術の研究を開始し、1982年に最初の政府向け指紋認証システムが稼働しています。1990年代後半以降、海外展開を進め、すでに70の国と地域に展開しています。同社の顔認証、指紋・掌紋認証、虹彩認証技術は米国国立機関によるベンチマークテストにおいて、99%以上の照合制度を有するとして最高位の評価を獲得しています。
日立(6501)は、新型コロナウイルス感染のリスク低減に向けニーズが高まる「非接触」型の新たな生体認証デバイスとして、非接触の指静脈認証装置とPCカメラ向け生体認証ソフトウェア開発キットを提供しています。非接触で3本の指をかざすだけで、数百万規模の会員数でも認証が可能な装置であり、イベント会場や会員施設などでの利用が見込まれるでしょう。
富士通(6702)では、手のひら静脈認証、顔認証、指紋認証、ICカード認証から最適な認証方式を選択できる統合認証ソフトウェア「AuthConductor(オースコンダクター)」を手掛けています。手のひら静脈を一度登録すれば、PCログインや入退室管理、認証印刷など、用途ごとに登録することなく認証方式を統一し利用することが可能になります。
また、ディープラーニングを応用した顔認証技術を有するパナソニック(6752)と、認証DXを推進している大日本印刷(7912)は、りそなホールディングス(8308)、クレジット大手ジェーシービーと、生体認証を活用した業界横断型プラットフォーム「顔認証マルチチャネルプラットフォーム」の事業化に向けた検討を開始することで2021年8月に合意しています。この辺りが主力の大手企業といった見方になるでしょう。
テーマ物色の局面では、まず中小型株が注目される
一方、中小型の銘柄などは、実際にテーマ株物色が人気化する局面においては、思惑も高まりやすいこともあり、個人投資家の関心がより集まります。そういった観点からの関連銘柄としては、TOWA(6315)は、指紋認証センサーの製造を支える樹脂封止技術を有しており、小型化や薄型化を実現するうえで、この樹脂封止技術が使用されています。
ディー・ディー・エス(3782)では、指紋認証をはじめとした様々なセキュリティ・ソリューションを提供しており、官公庁や地方自治体、学校などの公共団体を始め、個人情報など機微な情報を取り扱う一般企業のほか、製造業、金融機関、医療機関などを中心に幅広く導入されています。ユー・エム・シー・エレクトロニクス(6615)はMS(電子機器受託製造サービス)企業であり、ICカード(接触タイプ・非接触タイプ)端末指紋認証システムなどの開発実績を持っています。
また、アドバンスト・メディア(3773)は、音声認識ソフトを開発・販売していますが、声の周波数や強度などを基に本人かどうかを確認する声紋認証なども手掛けています。オプトラン(6235)は、光学薄膜装置生産+プロセス開発の総合的な光学薄膜装置提供サービスを強化しており、生体認証・5G対応光通信・車載(自動車の前面パネル)用装置需要などが拡大しています。
そのほか、高千穂交易(2676)は、最先端のスマートロック・モバイル認証や顔認証などの生体認証の活用により高度な物理セキュリティと入退室管理システムを活用した勤怠管理連携ソリューションを提供。そして、Ubicom(3937)は、2018年に生体認証による本人認証・決済サービスを手掛けるLiquid(リキッド)と資本・業務提携しています。
テーマ株物色となると、まずは話題性の高い材料株への資金流入が初動反応として顕在化し、その後、実際に業績への反応が見られるかを分析して物色対象が絞られてきますので、大型株、中小型株の特性なども考慮したうえで物色のタイミングを図ることが有効でしょう。
文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)