キャピタルゲインとインカムゲイン、リターン重視ならどちらを狙うべき?

株式投資で得られる利益には、2つの種類があります。それは、キャピタルゲインとインカムゲインです。両者の違いは本文で解説していきますが、株式投資を始める以上、より多くのリターンを得たいというのはすべての方に共通する願いでしょう。そこで注目したいのが、「中小型株」です。成長性に富み、大化けする銘柄を仕込むことができれば大きなキャピタルゲインを得ることができます。

しかし、大きなリターンを狙うのは決して簡単なことではありませんし、ハイリターン投資はリスクとも表裏一体です。「テンバガー」と呼ばれる株価が10倍以上に成長するような夢のある銘柄への投資を実現するためにも、株式投資で利益を得る仕組みや知っておくべき基本用語、そして中小型株で大きなリターンを狙う具体的な方法について解説します。

目次

1. 株で利益を狙う2つの方法

 1-1.インカムゲインとは?

 1-2.キャピタルゲインとは?

 1-3.リターンを重視するなら?

2.株式の種類で見る、キャピタルゲインを狙うには?

 2-1.株式の規模別の分類(大型、中型、小型)

 2-2.大型株の一般的な特徴

 2-3.中小型株の一般的な特徴

 2-4.時価総額よりも“伸びしろ”に注目

3.中小型銘柄に投資をする際のチェックポイント

 3-1.チェックポイント「時価総額」

 3-2. チェックポイント「業績」

 3-3. チェックポイント「株主構成」

 3-4. チェックポイント「経営者」

 3-5. チェックポイント「ビジネスモデル」

 3-6. チェックポイント「上場年数」

 3-7. チェックポイント「財務指標」

4.中小型株に投資をする際の注意点

 4-1. 注意点「大型株に比べ流動性が低い」

 4-2. 注意点「ボラティリティが大きい」

 4-3. 注意点「単一ビジネスモデルの銘柄が多い」

 4-4. 注意点「大型株に比べ信用リスクが高い」

5.中小型株でテンバガー達成した銘柄の特徴は?

 5-1.テンバガーを達成した「MonotaRO」と「ディップ」

 5-2.「MonotaRO」「ディップ」に共通する特徴

6.まとめ

1. 株で利益を狙う2つの方法

株式投資の利益には、インカムゲインとキャピタルゲインの2種類があります。まずはそれぞれの意味をおさらいしましょう。

1-1.インカムゲインとは?

インカムゲインとは、資産の保有中に得られる収入のことです。株式であれば配当や株主優待、預金であれば利子、不動産であれば家賃収入といった具合です。インカムゲインは保有している資産の規模(株数)や保有期間によって得られる収入額が決まります。

株式投資の配当は「1株当たり●●円」となっていますので、同じ銘柄でも保有している株数が大きくなるほどインカムゲインは大きくなります。また、配当は銘柄によっても異なりますので、利回りに換算すると銘柄ごとに差がつきます。ですので、同じ資産規模でも配当による利回りが高い銘柄ほど、インカムゲインは大きくなることになります。

次項で解説するキャピタルゲインは価格変動の差を利用して得られる収入なので、そのキャピタルゲインと比べるとインカムゲインはコツコツと利益を狙っていく方法といえるでしょう。

1-2.キャピタルゲインとは?

キャピタルゲインは売却益のことで、資産を売却した時に得られる差益を指します。株式であれば、購入時よりも高値になった時に売れば、その差額であるキャピタルゲインが得られます。

キャピタルゲインを狙うことができる金融資産は、ほかにもたくさんあります。不動産や、外貨の取引を行うFX(外国為替証拠金取引)や暗号資産(仮想通貨)もそうですし、商品(資源、金属、穀物など)の先物などにもキャピタルゲインが発生します。

ただし、株式などの金融商品は値下がりのリスクもあります。売却(もしくは決済)した時に損失が発生した場合、差損のことをキャピタルロスといいます。

インカムゲインは一定の時間を経過して発生するものですが、キャピタルゲインは価格変動によっては短期間に発生する可能性もあります。購入した株が、たとえば1時間後に大きく値上がりしたことを受けてすぐに売ればキャピタルゲインが発生するといったことは十分あり得るため、キャピタルゲインは短期的に大きな利益を狙える特性があります。

1-3.リターンを重視するなら?

このインカムゲインとキャピタルゲインは、それぞれ全く特性が異なる収入です。インカムゲインは一般的に年間の利回りが数%程度ですが、キャピタルゲインはわずかな期間で投資資金が2倍になることも珍しくありません。値動き次第で大きなリターンを狙うことができるのはキャピタルゲインの魅力であり、多くの人が株式投資に求めるメリットではないでしょうか。

2.株式の種類で見る、キャピタルゲインを狙うには?

株式投資の「華」ともいえるキャピタルゲインですが、それを狙っていくにはどんな種類の株式に目を向けるべきなのでしょうか。ここでは株式の種類を大型、中型、小型に分類してそれぞれの特徴をもとに、解説します。

2-1.株式の規模別の分類(大型、中型、小型)

株式には、大型、中型、小型といった規模別の分類があります。ここで言う“規模”は、主に時価総額を指します。発行済み株式数に株価を掛けることで求められる時価総額は、いわばその企業の総価値です。

大型株、中型株、小型株に絶対的な定義はありませんが、時価総額が3,000億円以上が大型株、1,000億〜3,000億円が中型株、1,000億円未満が小型株と分類される場合が多いようです。

2-2.大型株の一般的な特徴

大型株は必然的に日本を代表するような大企業であることが多く、業績面で安定していることもあって株価の値動きが比較的安定しています。ゆえに大きなキャピタルゲインを狙うのは難しいですが、その一方で配当が高い銘柄が比較的多いため、こうした銘柄は中長期的な視点でインカムゲインを狙っていく投資スタンスに適しています。

とはいえ、大型株の中には化学や素材、半導体、自動車といった景気敏感株も多く含まれているため、こうした銘柄群は外的要因によって株価が大きく変動することがしばしばあります。

2-3.中小型株の一般的な特徴

中型株と小型株は総称して、「中小型株」と呼ばれます。大型株と比較し、中小型株は業績面、株価においても伸びしろが大きい傾向があります。現在の株価から大きく上昇するポテンシャルを秘めており、キャピタルゲインを狙うのであれば夢のある銘柄群といえます。

また、株価の分析を専門とするアナリストも、どうしても中小型株に対してはカバーしきれない銘柄があります。さらに中小型株は時価総額がそれほど大きくないためにファンドが投資対象としていない場合も多く、こうした理由から安値のまま放置されている「お宝銘柄」が埋もれていることも少なくありません。

2-4.時価総額よりも“伸びしろ”に注目

時価総額30億円の中小型株と、時価総額3兆円の大型株とでは、大抵は後者のほうが株価は安定しやすいでしょう。しかし、伸びしろに着目すると前者のほうが大きなポテンシャルを秘めていると考えられます。

もし前者の企業が大きく成長して時価総額3兆円になったとしたら、伸び率は1,000倍です。こうした飛躍的な企業成長に乗じることができれば、株式投資で大きなキャピタルゲインを上げることができます。中小型株投資には、こうした魅力があります。

3.中小型銘柄に投資をする際のチェックポイント

お宝銘柄、大化け銘柄を見つけられれば、大きなキャピタルゲインを狙いやすい中小型株投資。続いては、成功するために必要な7つのポイントについて解説します。これらの条件に合致する銘柄は今後、大きく成長する可能性を秘めているといってよいでしょう。

3-1.チェックポイント「時価総額」

すでに時価総額が大きくなっている銘柄は伸びしろが少ない場合が多いので、今後の大化けを期待するのなら、目安として時価総額300億円以下の銘柄に着目したいところです。

3-2. チェックポイント「業績」

中小型株であれば、どの銘柄に投資してもよいわけではありません。やはり成長力や、将来性に期待できる企業に投資するべきです。そこでチェックしたいのが業績です。売上高成長率や利益成長率が年率で20%を確保できている企業から選ぶのがよいでしょう。年率20%以上の成長率を4年間維持した場合、単純計算で約2倍の規模へと成長します。

3-3. チェックポイント「株主構成」

成長余地が大きい企業によくあるのは、創業者が筆頭株主であるパターンです。創業者であり経営者でもある人が筆頭株主であることで経営に関する権限が強くなり、その自由度の高さをいかして積極的にビジネスを展開できます。

すでに成長を遂げた企業では経営者の権限が強すぎることがマイナスに作用することもありますが、成長途上にある企業では意欲溢れる経営者が多くの権限をもって積極的に動けるようにしておくほうが、成長につながりやすくなるのかもしれません。

3-4. チェックポイント「経営者」

経営者が筆頭株主である企業の場合、その経営者の手腕が企業の命運を握ることになります。つまり、経営者の資質や過去のキャリアなどが重要になるわけです。

一方で、新進気鋭の経営者のみでは安定感に欠く場合もあります。経営陣の中には経験豊富な「重石」となるような人がいるなど、バランス感覚も重要です。

このように企業の経営層を担う「人」にスポットを当てて、伸びしろを見極めてみてください。

3-5. チェックポイント「ビジネスモデル」

中小型株の多くは、将来性や独創性に富んだビジネスモデルを武器としています。言い換えると、そのビジネスモデルにどれだけの収益力があるのか、今後に向けて将来性があるのかがポイントになります。

利益の源泉となっているビジネスモデルに独自性があるか、そして利益率をしっかり確保できているかをチェックします。加えて、参入障壁の高さも競争力を左右します。誰でも簡単に参入できるようなビジネスでは、すぐに過当競争になってしまうため収益性を損ねてしまいます。

3-6. チェックポイント「上場年数」

上場から年数が経ちすぎている銘柄の中には、これ以上の伸びしろが期待できない場合もあります。目安としては上場から5年以内、そして上場後もしっかりと業績を伸ばしているかどうかが重要です。

3-7. チェックポイント「財務指標」

3-2の業績とも関連しますが、企業が公表している財務指標にも企業の成長力を読み解くヒントが詰まっています。たくさんの指標がある中で、チェックしたい項目は以下のとおりです。

  • 自己資本比率は50%以上(理想は70%以上)
  • 有利子負債が利益剰余金に対して大きすぎない
  • 営業キャッシュフローが黒字

自己資本比率と有利子負債については、いずれも経営の健全性を示すものです。自己資本比率が高いと経営の健全性が高いと判断できますし、有利子負債が大きすぎると経営を圧迫するので、そのバランスが適切であることも経営の健全性を判断する材料になります。

また、営業キャッシュフローが黒字であることは、その企業が本業で利益をしっかりと上げられていることを示します。これが赤字だと資金調達が必要になり、黒字であることで資金繰りの健全性が示されます。

4.中小型株に投資をする際の注意点

大化け銘柄を見つけることができれば大きなキャピタルゲインが見込める中小型株ですが、そこには注意点もあります。ここでは4つの注意点を解説します。

4-1. 注意点「大型株に比べ流動性が低い」

中小型株は、株式市場における流通量が大型株ほどの規模ではないため、板が薄くなりがちです。“板が薄い”というのは流動性が低い状態、つまり売買の注文が少ない状態を指します。流動性が低い銘柄の場合、投資家は自分が売りたい時に、売りたい価格で株式を売れないリスクがあります。

4-2. 注意点「ボラティリティが大きい」

流動性が低いと、ちょっとした材料で大きく価格が変動することがあります。こうした価格変動の度合いのことを“ボラティリティ”と呼び、価格変動が大きいことを「ボラティリティが大きい」と表現します。中小型株はボラティリティが大きくなりやすく、大きなキャピタルゲインを得られる可能性もある一方で、思わぬ損失を出してしまうリスクもはらんでいます。

4-3. 注意点「単一ビジネスモデルの銘柄が多い」

中小型株の中には、ベンチャー企業のように単一のビジネスモデルで勝負している企業が少なくありません。つまり、複数のビジネスを展開してリスクを分散させている大企業とは異なり、そのビジネスモデルと命運をともにすることになります。うまくいっている時は株価上昇に寄与しますが、その逆の時は株価暴落の引き金になりかねません。

4-4. 注意点「大型株に比べ信用リスクが高い」

まだまだ利益構造や経営基盤が盤石ではない企業もあるため、最悪の場合は業績悪化によって、投資先の企業が倒産したり、上場廃止となるリスクがあります。ただし、そもそもリスクを承知のうえで行うのが中小型株投資です。リスクがある分、中小型株は株式投資の醍醐味とも言える大きなキャピタルゲインを狙える可能性があります。

5.中小型株でテンバガー達成した銘柄の特徴は?

株価が10倍以上に成長する銘柄のことをテンバガーといいます。ここでは実際にテンバガーを達成した銘柄を紹介して、それらの銘柄の特徴を解説しましょう。

5-1.テンバガーを達成した「MonotaRO」と「ディップ」

MonotaRO(東証1部/3064)は、「モノタロウ」という様々な現場で使用される資材に特化したEC(電子商取引)サイトを運営する企業です。EC市場が拡大する時代背景にうまく乗り、事業者向けの工具や資材などをネットで購入できるビジネスモデルがヒットしました。

MonotaROは2006年に上場(2009年にマザーズから東証1部に市場替え)してから5年間は50円前後だった株価が、2020年に3,000円に到達しました。その後反落しましたが、2021年7月時点では2,500円近辺の推移となっています。上場後5年間の50円前後と比較すると、約50倍もの成長を遂げたテンバガー銘柄と言えます。

ディップ(東証1部/2379)も同様に、インターネットビジネスで成功した企業です。「バイトル」や「はたらこねっと」といった、多数の求人情報サイトを運営し、求人側と職探しをする人たちのマッチングの利便性を向上したサービスが受け入れられました。

ディップは2004年の上場時当初は株価がやや跳ね上がったものの、その後反落。100円未満で低迷していた時期もありましたが、2021年7月現在は3,500円近辺で推移しています。こちらも低迷期の50円から比較すると70倍程度のテンバガーとなっています。

5-2.「MonotaRO」「ディップ」に共通する特徴

テンバガーを達成した両社の特徴を見ていると、いずれもインターネットビジネスであることが目を引きます。しかもインターネットビジネスの中でも未開拓な分野にチャレンジし、新しいビジネスモデルを開拓したことが受け入れられました。

そして両社ともに業績拡大期にしっかりと営業キャッシュフローの黒字を増大させ、安定的な経営基盤が投資家から好感を持たれたことが推察できます。

6.まとめ

株式投資で狙うことができる利益には、インカムゲインとキャピタルゲインがあります。そのうちキャピタルゲインは株式投資の「華」ともいえるもので、伸びしろの大きな成長企業を見つけ出して株を購入し、長い時間をかけて成長を見守りながら大きなリターンを得る株式投資の王道です。

中小型株投資は短期売買よりも株を長く保有し、企業の成長を楽しむスタンスで臨むのが最も夢のある方法論といえるでしょう。

文・田中タスク