2021年5月の株価上昇率トップ50を分析

ジャスダック銘柄が強かった5月の株式市場

ここでは、東証1部以外の全市場の銘柄を対象(時価総額の制限なし)に、2021年5月の月間株価上昇率トップ50、瞬間上昇率トップ50を検証します。

▽2021年5月 月間株価上昇率トップ50

銘柄コード市場上昇率(%)4月30日終値(円)5月31日終値(円)
1ランシステム3326JQ88.5426803
2キャリア6198マザーズ85.5330612
3シンクレイヤ1724JQ79.87231,300
4ジー・スリーホールディングス3647東276.8396700
5テセック6337JQ74.71,7773,105
6東京ソワール8040東270.7484826
7ケアネット2150マザーズ67.44,7808,000
8グローバルダイニング7625東266256425
9アルメディオ7859東256166259
10Jトラスト8508東254.6240371
11明星電気6709東254.27181,107
12I-ne4933マザーズ53.73,8705,950
13夢みつけ隊2673JQ53.2126193
14カイノス4556JQ501,0051,507
15テクノホライゾン6629JQ49.21,2071,801
16ジェイテック2479JQ48.4186276
17アライドアーキテクツ6081マザーズ47.66831,008
18澤田ホールディングス8699JQ47.17161,053
19ファミリー8298JQ46.1512748
20シンバイオ製薬4582JQ44.51,3141,899
21ANAP3189JQ44.3348502
22テックポイント・インク JDR6697マザーズ43.21,3771,972
23ジーニー6562マザーズ42.51,0291,466
24ネオマーケティング4196JQ42.22,5603,640
25アズーム3496マザーズ40.84,1255,810
26プレミアアンチエイジング4934マザーズ40.811,93016,800
27芝浦電子6957JQ39.93,5204,925
28サイジニア6031マザーズ37.71,6192,229
29ブリッジインターナショナル7039マザーズ36.31,8302,494
30第一商品8746JQ36.3204278
31オーナンバ5816東236.2508692
32IJTT7315東236.2550749
33テクノマセマティカル3787東235.88101,100
34GFA8783JQ35.2145196
35岡本工作機械製作所6125東234.83,3204,475
36ベルトラ7048マザーズ34.1589790
37BuySell Technologies7685マザーズ32.72,9843,960
38ASTI6899東231.62,1702,855
39ULSグループ3798JQ30.83,1504,120
40HPCシステムズ6597マザーズ30.13,0703,995
41Fast Fitness Japan7092マザーズ29.54,6506,020
42テイン7217JQ29.11,1371,468
43日本テレホン9425JQ28.9380490
44グローバルインフォメーション4171JQ28.91,4351,850
45和心9271マザーズ28.7506651
46メディアリンクス6659JQ27.9423541
47アドベンチャー6030マザーズ27.66,2307,950
48日鍛バルブ6493東227.3220280
49デイトナ7228JQ27.32,4993,180
50テラプローブ6627東227.11,2731,618
※ランキングは2021年4月30日終値と2021年5月31日終値の比較(東証1部は除外)。東2は東証2部、JQはジャスダック。

▽2021年5月 瞬間上昇率トップ50

銘柄コード市場上昇率(%)4月30日終値(円)期間高値(円)
1キャリア6198マザーズ120.6330728
2ランシステム3326JQ117.8426928
3カイノス4556JQ93.51,0051,945
4アルメディオ7859東288166312
5シンクレイヤ1724JQ85.27231,339
6グローバルダイニング7625東284.8256473
7ジー・スリーホールディングス3647東284.6396731
8ジェイテック2479JQ84.4186343
9夢みつけ隊2673JQ83.3126231
10テセック6337JQ821,7773,235
11東京ソワール8040東273.6484840
12ケアネット2150マザーズ70.74,7808,160
13Jトラスト8508東268.8240405
14I-ne4933マザーズ67.43,8706,480
15明星電気6709東260.27181,150
16アライドアーキテクツ6081マザーズ606831,093
17テックポイント・インク JDR6697マザーズ58.91,3772,188
18アズーム3496マザーズ58.34,1256,530
19GFA8783JQ57.9145229
20TBグループ6775東256.9167262
21ブロードマインド7343マザーズ56.41,0721,677
22テクノホライゾン6629JQ54.81,2071,868
23GMOメディア6180マザーズ51.51,5642,370
24グッドライフカンパニー2970JQ51.18741,321
25澤田ホールディングス8699JQ50.17161,075
26日本テレホン9425JQ50380570
27オーナンバ5816東249.4508759
28フルッタフルッタ2586マザーズ48.9219326
29カーメイト7297JQ48.49301,380
30nms ホールディングス2162JQ47.3319470
31ファミリー8298JQ46.9512752
32アルバイトタイムス2341JQ45.7140204
33ジーニー6562マザーズ45.61,0291,498
34IJTT7315東245.5550800
35シンバイオ製薬4582JQ45.41,3141,911
36ANAP3189JQ44.3348502
37テイン7217JQ43.91,1371,636
38サイジニア6031マザーズ43.61,6192,325
39プレミアアンチエイジング4934マザーズ43.511,93017,120
40ネオマーケティング4196JQ43.42,5603,670
41芝浦電子6957JQ43.23,5205,040
42ベルトラ7048マザーズ41.9589836
43ブリッジインターナショナル7039マザーズ41.71,8302,593
44Fast Fitness Japan7092マザーズ40.94,6506,550
45第一商品8746JQ40.7204287
46Fringe816550マザーズ40.2353495
47ASTI6899東239.22,1703,020
48みらいワークス6563マザーズ38.59051,253
49岡本工作機械製作所6125東238.13,3204,585
50アライドテレシスホールディングス6835東237.3110151
※ランキングは2021年5月の月間瞬間上昇率(東証1部は除外)。東2は東証2部、JQはジャスダック。

5月の月間株価上昇率トップ50では、市場別ではジャスダックの21社に続いて、マザーズが16社、東証2部が13社ランクインしています。ジャスダックが相対的に強い状況は、2021年上半期のランキングと同様です。逆に、地味な印象の強い東証2部が、マザーズに肉薄するレベルで好調なパフォーマンスを叩き出している点は興味深いところです。

5月の月間株価上昇率トップ50を業種別で見ると、サービス(10銘柄)を筆頭に、電気機器(8銘柄)、情報通信(6銘柄)、小売(5銘柄)、輸送用機器(4銘柄)が上位を占めています。ちなみに、残りの業種は軒並み1ないし2銘柄のみとなっており、以下の業種は該当数がゼロとなりました。

水産・農林業、鉱業、食料品、パルプ紙、石油石炭、ゴム製品、ガラス土石、鉄鋼、金属製品、精密機器、電気ガス、陸運、海運、空運、倉庫運輸、銀行、保険。

マーケットは「アフターコロナ」を意識

業種別でサービス、情報通信、小売で好調な銘柄が多かったのですが、最大のキーワードはやはり「アフターコロナ」です。旅行関連、外食関連といったように経済および日常生活の正常化に伴って、必然的に需要が回復してくる業態の企業に物色の矛先が向かいました。

旅行関連のベルトラ(7048)やアドベンチャー(6030)、飲食関連のグローバルダイニング(7625)などがランクインしているほか、「エニタイムフィットネス」を展開するFast Fitness Japan(7092)や外国人観光客需要等を取り込みやすくインバウンド消費関連としての位置づけが高い和雑貨やレンタル着物の和心(9271)などが好調な株価パフォーマンスとなりました。

また、サービスと情報通信銘柄の高パフォーマンスに関係する別側面としては、「ネットマーケティング」も関係してきそうです。たとえば、47.6%の上昇率で17位に位置しているアライドアーキテクツ(6081)は、5月12日に売上高が前年同期比65.4%増、営業利益は約14.5倍となる好決算を発表しました。同時に通期予想も引き上げ、コロナ禍をきっかけとしたマーケティングDXやSNSマーケティングの需要増大を意識させました。

5月14日に利益急拡大の2022年3月期見通しを発表したジーニー(6562)もこれに続き、ネオマーケティング(4196)やサイジニア(6031)には思惑的に物色が向かったと見られます。

日米ともにEV(電気自動車)関連のニュースが続々

業種別では第2位となっている電気機器には、半導体関連やEV(電気自動車)関連の好調さが関係していそうです。機械株も含みますが、5月の月間株価上昇率ランキング5位のテセック(6337)を筆頭に、テックポイント・インク JDR(6697)、岡本工作機械製作所(6125)、テラプローブ(6627)など半導体関連として位置づけられている銘柄が顔を揃えています。

加えて、5月は自動車メーカーのSUBARU(7270)が2022年半ばに同社初のEVを発売すると発表したほか、同じく三菱自動車(7211)も、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)の販売台数を倍増させるとの計画が伝わりました。

さらに米国のバイデン大統領は、EV向けの大規模予算案について必要性を強調、日本政府もEVの普及に向けて、2030年までに急速充電器を3万基設置する目標を掲げるなどEV関連のさまざまなニュースが出現した時期でもありました。芝浦電子(6957)、ASTI(6899)といった関連銘柄も実際に大きく上昇しています。

なお、上半期全体に目を向けると、5月に入り急伸した銘柄が、月間株価上昇率76.8%を記録した4位のジー・スリーホールディングス(3647)です。同社は、太陽光発電を軸に再生可能エネルギー事業を展開しており、脱炭素の流れの中で関心が向かいやすい条件が整っていたなか、4月の高値を突破しました。投資妙味が意識されていた局面で、「非常時における容易な電源確保」に着目したマグネシウム電池事業を新たに開始すると発表し、短期資金を巻き込んでの大幅上昇となりました。

気をつけたいのは、ランキングの集計期間である5月は決算発表シーズンでしたので、テーマ性のみではなく、業績面や中期経営計画の発表に伴う成長期待などで買いが集中した企業も含まれていることです。

ただ、定期的に株価の上昇率データの振り返りを続け、傾向を探すことで、投資のヒントを見つけられる可能性は十分にあります。5月のパフォーマンスを検証した結果、ジャスダックを優先的に、サービス、電気機器、情報通信、小売、輸送用機器といった業種の銘柄を見ていくと、その中に将来の「お宝株」が眠っているかもしれません。

そのほか、市場の話題になるレベルの急激な業績好転を見せた企業の同業他社などに先回りしておくのも古典的ですが有効な戦略です。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)