マーケットの注目テーマを分析! 「M&A、事業承継」
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改善傾向にあるとはいえ、いまだに全国の後継者不在率は61.5%
注目テーマ「健康・ヘルスケア」で触れたように、2022年は「団塊の世代」が75歳を迎え、後期高齢者となりはじめる年です。そうした年であるということを踏まえて、注目しておきたいテーマが、「M&A」や「事業承継」です。
2021年の全国・全業種約26万6,000社における後継者動向について、帝国データバンクが同年11月に発表しています。これによれば、全国の後継者不在率は61.5%となり、2020年の不在率(65.1%)からは3.6pt改善。不在率の低下は4年連続となり、調査開始以降で最低となったようです。コロナ禍という未曾有の激動の中、後継者決定の動きが強まった面もあるでしょう。
また、政府・与党は2021年12月10日、2022年度税制改正大綱をまとめました。事前の報道にあった通り、法人版事業承継税制について記載があります。同税制は、事業承継を加速させるため、2018年1月から10年間の特例措置として、2023年3月末までに特例承継計画の提出がなされた事業承継について税制面での抜本的拡充を行ったものです。
今回の税制改正大綱にて、コロナ禍で動きが停滞してしまったようなケースも念頭に置き、特例承継計画の提出期限を2024年3月末まで1年間延長しています。同税制の細かい話は本筋ではないので、ここでは割愛しますが、税制を含めた国家の支援に加え、M&Aや事業承継の仲介・助言会社も急速に増加。
さらに、近年は手軽にM&Aや事業承継の手段を検討することができる仲介サイトが登場したり、地方銀行などの金融機関を中心に事業承継に関するアプローチが加速していることもあり、2022年も事業承継の流れは引き続き継続する見込みです。
中核銘柄以外にも、関連する銘柄は事欠かない
M&Aおよび事業承継関連の銘柄としては、日本M&Aセンターホールディングス(2127)、M&Aキャピタルパートナーズ(6080)、ストライク(6196)、フロンティア・マネジメント(7038)などが中核として市場でも位置づけられています。また、M&Aに関する仲介・斡旋・アドバイザリー業務を手掛けるオンデック(7360)も同様です。
そのほか、グループ会社において、幅広い分野における事業承継及び事業再生分野に係る助言・支援サービス・M&Aを展開しているトランスジェニック(2342)、事業承継コンサルティングを提供している山田コンサルティンググループ(4792)、グループにM&Aアドバイザリー会社を持つシグマクシス・ホールディングス(6088)、金融関連のサービスを幅広く展開し、M&A仲介業務とM&Aアドバイザリー業務も実施しているFPG(7148)、老舗の飲食・食品事業者に特化した事業承継・M&Aの支援モデル「老舗承継無償サポート」を提供しているシンクロ・フード(3963)などが挙げられます。加えて、セレンディップ・ホールディングス(7318)、ブティックス(9272)、フューチャーベンチャーキャピタル(8462)、青山財産ネットワークス(8929)、フォーバル(8275)、船井総研ホールディングス(9757)、タナベ経営(9644)など。
「人」「事業」の観点から事業承継サポートするサーキュレーション
また、少しイメージと違う企業としてはサーキュレーション(7379)が挙げられます。同社は、プロ人材を活用した経営・ビジネス課題の解決支援等が中核です。ある種、同質化していく宿命にある企業の「内からの発想」には限界があることが看破され、「外部」の知見・人材を活かして、ビジネスを再加速させる潮流が近年広がっています。そうした現代ならではの主力ビジネスからの派生で、「税」「M&A」の観点から語られることが多かった事業承継を、「人」「事業」の観点からサポートしています。
そのほか、前述しましたが、自身の生き残りをかけて新たなサービスを創出することが急務となっている地方銀行なども、この領域への注力姿勢が鮮明です。メガバンクなどよりも、地方銀行や信用金庫のほうが地場企業との繋がりが強いため、情報も集まりやすく、支援の手は出しやすいでしょう。地方銀行は、数も多く、現在も合従連衡が続いていることもあり、個別の紹介は行いませんが、関連銘柄として見ておいてよさそうです。
ちなみに、社員などが後継者になりたがらない理由のひとつとして、「経営者保証」の問題が挙げられます。経営者としての経験がない人が突然、経営の責任に加え、同時に何億円もの債務を引き受ける決断をするのは現実問題としてかなり厳しいものです。しかし、この点についてもすでに「経営者保証に関するガイドライン」が公表され、事業承継の際に一定の条件を満たすことで、金融機関も経営者保証を外す方向で動くような流れができており、事業承継のハードルを押し下げることが期待されています。
光る技術を持った企業、伝統ある企業など、日本には非上場でも、上場企業以上にビジネスモデルが優れていたり、財務基盤が盤石であったりと、魅力的な企業も多いのです。プロ経営者などの育成も少しずつ進む中、どんな形であれよい企業が長く残り、社会にプラスの影響を与え続けてくれることを期待しています。
文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)