注目銘柄「日本エマージェンシーアシスタンス」(JQ・6063)を分析
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世界中にネットワークを構築。医療関連のオンリーワン企業
日本エマージェンシーアシスタンスは、世界各国で提携関係にある約1万5,700件の医療機関と約3,100件の海外プロバイダーを活用し、世界中どこでも顧客が困ったときに解決の手助け(アシスタンス)をする会社です。主力の医療アシスタンス事業に加え、ライフアシスタンス事業との二本柱を展開。なお、医療アシスタンス事業では、海外旅行保険付帯のアシスタンスサービス、法人向けアシスタンスサービス、学校向け医療アシスタンスサービス、救急救命アシスタンスサービス、国際医療コーディネートサービス、訪日在日外国人向け緊急対応型アシスタンスサービスなどを提供しています。
同社事業においては、医療機関ネットワーク網の構築が必須であり、これが新規参入障壁となっており、海外で病気やケガをした患者からの電話受付、医療機関紹介から搬送までをワンストップで実施できる会社は、日本企業で同社だけのようです(同社調べ)。
直近の決算は、5月14日の大引け後に発表した2021年12月期の第1四半期決算です。売上高が前年同期比20.4%減の6億7,700万円、営業利益は同2.7%増の7,400万円、最終利益も同20.7%増の5,800万円で着地しています。
厚生労働省や自治体の外国人診療に関する相談窓口事業が貢献したほか、法人との直接アシスタンスサービスは前年同期比で売上が増加したものの、サービス全般で新型コロナウイルスの影響が大きく、医療アシスタンス事業の売上高は同23.6%減に。堅実なサービス提供が評価されたほか、コストコントロールに努めたことで厳しい事業環境の中でもライフアシスタンス事業の売上高は同5.4%減とマイナス幅が抑えられました。
無配転落ながら過去には安定配当も。復配に期待
利益面では、業務量に合わせて従業員の休業を導入し、コスト抑制を図ったことで増益を確保しています。なお、2021年12月期通期について会社側は、連結業績に与える未確定な要素が多いとして、現段階では非開示としています。
また、配当については、事業に対する新型コロナウイルスの影響が大きいこともあって、2020年12月期は無配、2021年12月期については未定としています。ただ、それ以前は年間5円の安定配当を続けており、早期の業績安定化による復配が投資家の待ち望むポイントでしょう。
同社は、新型コロナウイルス関連とアフターコロナ関連の両側面から、注目できる企業です。実際、変異株を含むコロナ禍の中で、企業の海外進出に伴う安全配慮義務などの要請は強まっており、新型コロナウイルス感染症対策、海外進出再開への準備のためのニーズから、法人向けアシスタンスサービスは堅調に推移しています。冒頭で触れたとおり、海外拠点の同社従業員が現地医療事情に精通していることや、有事の際の対応力の面で強みを有していることが引き合い増加の背景にあります。
厚生労働省からの事業受託を発表
また、3月31日付で同社が発表したとおり、厚生労働省から「入国者等健康フォローアップセンター業務」を受託。新型コロナウイルス関連の事業受託で株価が急伸した銘柄もこれまでに散見された中、追加の事業受託の思惑が向かう局面もくる可能性がありそうです。
事業構成的にも、アフターコロナの局面での引き合い拡大による業績急回復がより期待されるところです。たとえば、すでに医療ツーリズムの領域では、中国からの患者受け入れの再開を期し、中国オフィスでの営業活動、WeChatなどのSNSツールによる広告宣伝を強化しているようです。
加えて、海外旅行保険付帯サービスなどもコロナ禍が終息することで、必然的に回復していく可能性が非常に高く、各国の新規感染者および渡航を巡る状況を注視しておく必要があります。「困った人を助ける」=事後提供型サービス中心の現在の事業構造から、将来的には「困る事態を避ける」=事前提供型サービスも取り入れた構造への転換を目指す方針を掲げており、新規の事業開発動向などにも関心が集まりそうです。
過熱感も冷め、そろそろ押し目買いのタイミングか
株価動向については、1月8日につけた771円を安値に上昇する75日移動平均線を支持線としたトレンドを形成していました。4月には厚生労働省から「入国者等健康フォローアップセンター業務」を受託したことが材料視される形から、連日のストップ高を交えた上昇により、4月5日には2,035円まで急伸しました。その後は急ピッチの上昇に対する過熱警戒感から調整を見せましたが、概ね1,250~1,900円辺りでの推移に。6月の調整局面で75日移動平均線を割り込み、底入れが意識される1,250円に接近。押し目狙いのタイミングに入ったと考えられます。
また、週足では13週移動平均線を割り込んだものの、26週移動平均線が支持線として機能しており、こちらも押し目狙いが意識されます。信用残高は4月以降に積み上がる格好ですが、好材料を受けての反応であることから、すぐさま需給悪化につながる可能性は低そうです。5月安値とのダブルボトム形成からのリバウンドとなれば、目先的には25日、75日移動平均線が位置する1,550円辺りがターゲットになりそうです。さらに、これをクリアしてくるようであれば、レンジ上限の1,900円処から、4月高値2,035円突破が射程に入ります。
文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)