注目銘柄「ザインエレクトロニクス」(JQ・6769)を分析

材料豊富なファブレス半導体メーカー。今期は黒字転換へ

取引先には各分野の大手メーカーがずらり

ザインエレクトロニクスは、LSI(Large Scale Integrated Circuit=大規模集積回路)の企画・設計、販売を行うファブレス(工場を持たない) 半導体メーカーです。AI & IoTソリューションも展開しています。優れた人材が集まり、資本、資源を有効に活用し、育ち、力の限り活躍し、豊かな自己実現と社会貢献を目指すという意味を込めて「人資豊燃」という言葉を創業理念としています。

ちなみに、同社は1991年5月に茨城県つくば市でザイン・マイクロシステム研究所として設立。1992年6月にはサムスン電子とのジョイントベンチャーとしてザインエレクトロニクスを設立し、1997年2月に合弁形式による経営を発展的に解消したことを第2の創業として、2001年8月にジャスダック市場に上場し、現在に至ります。

同社は、自社事業の特徴として「取引先の幅広さ」と「製品応用範囲の広さ」を挙げています。液晶パネルの用途は幅広く、同社の取引先にはパソコン、家電、自動車など各分野の大手メーカーのほとんどが名を連ねています。その結果、特定企業に売り上げを依存することがなく、安定した経営基盤と企業ネットワークを実現しています。同時に、ファブレスメーカーであるが故に、技術動向をすばやく取り入れ、タイムリーに新製品を市場投入していくことを可能としています。なお、事業構成はLSI事業とAIOT事業(AI・IoT分野での知的財産を創出しソリューション提供をする事業)の2事業構成となっています。

LSI事業の売り上げは、新型コロナ以前と比較しても成長

2021年11月4日に発表した直近の2021年12月期の第3四半期決算では、売上高が前年同期比42.0%増の31億7,100万円、営業損益は3億3,800万円の黒字(前年同期は3億7,400万円の赤字)、四半期純損益は4億1,000万円の黒字(同3億2,800万円の赤字)で着地しています。

AIOT事業は、一部の顧客向けの製品出荷の後倒しや計画見直し等により通信モジュール製品の出荷が計画を下回って推移したこともあり、前年同期比21.8%減の7億7,800万円と苦戦。しかし、LSI事業の売上高は同93%増の23億9,300万円と好調に回復。新型コロナウイルス感染症拡大以前の2019年(前々期)と比較しても8%の成長となっています。LSI事業では、海外市場向けにおける産業機器市場のトレンドを捉え、中国・台湾・韓国等のアジア市場および北米市場向けの出荷が好調となったほか、グローバルECサイトを活用した小型4Kカメラ等のキット製品(新規設計不要で直ちに使用可能な製品)を販売。また、国内市場およびEV(電気自動車)化が進む中国市場を中心とした海外市場向けの車載純正品市場およびアフター市場向けともに同社の高速情報伝送用LSI製品の出荷が増加したことも寄与しています。

配当は記念配を加え、期末一括(12月)の12円に増配

2021年12月期の見通しは、売上高が前期比52.2%増の43億8,200万円、営業利益は4億1,100万円、最終利益は4億6,700万円を計画しています。2021年10月27日付で会社計画を修正していますが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響が継続する中、LSI 事業において主に国内および中国市場を中心とする海外市場向けの製品出荷が急速に回復。加えて、研究開発活動を順調に進める一方、コスト削減を進めた結果として販管費も期初見込みより大幅に改善される見通しとなったことが背景に。なお、配当(期末一括)は創⽴30周年を記念した3円の記念配当を加え、12円の見込みとなっています。

同社は、2020年2月5日付で2022年12月期を目標年次とする新たな中期経営戦略「5G & Beyond」を策定しています。基本戦略として、日本をはじめアジアを筆頭に世界で高齢化が急峻に立ち上がる中で、特に重要となる「モビリティ(安全・快適性)」「医療(健康年齢維持・未病支援)」「Hyper Automation(自律化・自動化)」などの新たな課題に応えるため同社グループ発のソリューション提供を通じて貢献することを示しています。また、こうしたソリューション提供を加速するため、アライアンスとコラボレーションを一層重視し、M&A やパートナー企業との win-win 協業の機会を模索していく方針です。 具体的には以下の「戦略5ゴール」を設定し、これらを通じた成長ユースケースでの粗利金額を目標年次の 2022年12月期までに倍増を目指しています。目先は研究開発費用が重しとなるものの、産業用IoT、車載カメラ、医療用カメラ等同社が成長のために掲げている方向に事業が進展することで、大きく企業として成長することが期待されます。

  1. 5G無線ブロードバンドルーター、AI & IoTデバイス提供などを通じた、IoTなどのスマート基盤となるデバイス提供による貢献
  2. 先進的な産業用IoTシステムにおけるコネクティビティ・スマート化への貢献
  3. 車載カメラ高解像度化など車載ユースケースへの貢献
  4. 医療用カメラの革新への貢献
  5. Beyond 5G技術(300GHz 電波活用技術)や8K画像伝送技術等の市場適用による新規の成長ユースケースへの貢献

25日移動平均線の突破が本格リバウンドのサイン

(図=編集部作成、提供=楽天証券)
(図=編集部作成、提供=楽天証券)


株価は2021年10月半ばまでは800~900円辺りでのもち合いを形成していましたが、その後はレンジ上限での推移から、10月下旬にはマドを開けての上昇を見せました。25日移動平均線を支持線としたトレンドのなか、11月22日には1,232円まで上昇する場面も。足元では25日線を割り込み調整を見せているものの10月の上昇局面で開けたマド上限水準が支持線として機能しています。直近では25日移動平均線水準での攻防をみせており、同線突破からのリバウンドが意識されてきそうです。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)