株式投資でリターンを狙うポートフォリオ戦略のポイントとは?


投資活動は、預貯金などの安全資産よりも大きなリターンが狙える半面、元本が保証されないため損失を被るリスクもあります。そこで異なる値動きをする複数の金融資産に分散投資することにより、リスクを抑えリターンを安定させることが期待できる「ポートフォリオ戦略」が投資を行っていくうえでのポイントとなります。

なかでも株式投資は事業の成功や企業の成長などの好材料によって大きなリターンが見込める反面、投資先企業の倒産や事件・事故などの突発的な出来事によって大きな損失を抱えるリスクもあります。そのため、ポートフォリオ戦略により複数の株式銘柄を所有することによりリスクを分散し、自身の投資方針に則したリスクとリターンを設定することが重要といえるでしょう。

目次

1. 株式投資のポートフォリオとは?

 1-1. 分散投資の効果

 1-2. ポートフォリオとは?

 1-3. 株式投資でポートフォリオを組むメリット

 1-4. 株式投資でポートフォリオを組む際の注意点

2. リターン重視のポートフォリオを組むには?

 2-1. リターンが魅力? 中小型成長株とは

 2-2. 中小型株のメリット(魅力)

 2-3. 中小型株のデメリット(リスク)

3. 中小型株を中心としたポートフォリオ戦略のポイント

 3-1. リスクを抑えたいなら複数銘柄に分散投資する

 3-2. 相関性のある銘柄構成を避ける

 3-3. 独自性が高く参入障壁を築けている銘柄を保有

4. ポートフォリオは定期的に「リバランス」でメンテナンスしよう

 4-1. リバランスとは?

 4-2. リバランスのタイミング

 4-3. リバランスの注意点

5. まとめ:株式のポートフォリオにもさまざまな種類がある

1. 株式投資のポートフォリオとは?

資産運用では、現預金・株式・債券・不動産など異なる性質の金融商品への分散を行い、その組み合わせ比率がポートフォリオと呼ばれています。株式は企業の規模や経営状態・事業内容などにより有する性質が大きく変化します。そのため、株式の銘柄を選別するだけでも複数の金融資産へ投資をするのと同じように分散の効果が得られるほか、さらに株式投資だけでポートフォリオを組むことによる独自のメリットもあります。

1-1. 分散投資の効果

分散投資は、複数の金融商品や銘柄に投資することによってリスクをコントロールする投資戦略です。この分散投資が指す「分散」には、いくつかの意味があります。

まず考えられるのは、現預金・国内外の株式・投資信託・債券・不動産・金や原油などのコモディティといった「資産」の分散です。例えば、株価が大きく値下がりしたとしても、他の資産を保有していれば損失は限定的で済む可能性があります。

ほかに、ドル・コスト平均法などで購入タイミングをずらして金融商品の高値掴みのリスクを抑える「時間」の分散、為替相場や紛争などの地政学的リスクに備えるために、投資対象地域を先進国や新興国など国内外のさまざまな「地域」への分散投資もあります。

1-2. ポートフォリオとは?

「ポートフォリオ」は、金融資産の組み合わせのことです。具体的な銘柄・金融商品について、何をどれくらい保有するかを定めるもので、戦略的に分散投資を実践するためには重要な考え方です。意味が近い用語として「アセット・アロケーション」がありますが、こちらは大まかに投資資金をどの資産にどんな割合で配分するか、その比率を示すものです。

例えば、投資対象を株式のみとした場合の分散投資は、まずアセット・アロケーションにより国内株式・先進国株式・新興国株式といった投資地域や、時価総額や流動性の違いによる大型株・中型株・小型株への投資比率を検討し、実際にどの企業の株式を購入していくかを選別するのがポートフォリオとなります。

1-3. 株式投資でポートフォリオを組むメリット

株式投資でポートフォリオ戦略に沿って銘柄を選別するメリットは、リスクコントロールがしやすいなどさまざまあります。また見落としがちなメリットとして、金融資産のほかに預貯金や手持ち資金といったキャッシュポジションも把握しやすくなることもあります。

現預金を全く持っていない場合、ポートフォリオを変更する際に金融資産をいったん売却する必要がありますが、利益を確定してしまうと所得税・住民税が課税されてしまうため金融資産を再取得する資金が目減りしてしまいます。

また現預金は必要以上に所持していても、現在の金利条件では利息収入をほとんど生まないため、投資パフォーマンスを押し下げる要因ともなってしまいます。ポートフォリオを組むことで金融資産と預貯金の適切な配分を維持することでリスク・コントロールに役立てることができます。

1-4. 株式投資でポートフォリオを組む際の注意点

株式投資において多くの銘柄を組み込んでいってしまうと、TOPIXや日経平均などの市場平均に近づくことになり、その市場の平均的リターンへと回帰していってしまいます。また、各銘柄の経営状態や事業内容を調査する必要があるため、動向を追いきれず投資判断が難しくなる恐れもあるため、銘柄をあまり多く組み込みすぎないようにしましょう。

また、相関性の高い銘柄を組み込んでしまうと価格変動リスクの低減効果が得られなくなってしまいます。各金融商品・銘柄ごとの相関性は変動するため、リバランス時などに定期的にチェックするよう注意しましょう。

2. リターン重視のポートフォリオを組むには?

リターン重視のポートフォリオを組む場合、リスクの低い大型株ばかりを購入しても株価上昇によって大きなリターンを得るのは難しいといえます。

そこで、スタートアップ期などで企業の規模は小さいものの今後大きく成長することが見込める企業の株式を取得する「成長株(グロース)投資」と、商品やサービスや経営状態などの情報が適切に株価に織り込まれず、実体に反して株価が割安な状態となっている企業の株式を購入する「割安株(バリュー)投資」といった投資戦略を採用するとよいでしょう。

2-1. リターンが魅力? 中小型成長株とは

株式には発行済み株式数や時価総額、株式の流動性によって大型株・中型株・小型株に区分しており、大型株は発行済み株式数が多いため活発に売買され値動きが比較的穏やかといった特徴があります。中型株は時価総額がおよそ1,000億円〜3,000億円程度、小型株は時価総額1,000億円未満で、時価総額が小さくなるほど値動きが大きくなりやすい傾向があります。

また中小型株のなかでも独自の強みを持ち、今後売上や利益の急増が期待できる銘柄が中小型成長株となります。

2-2. 中小型株のメリット(魅力)

・株価の伸びしろが大きい

株価は、現時点で判明している情報と企業の予想成長率が組み込まれているため、投資家の予想通りの経営状況では株価の大きな上昇は見込めません。また、仮に特定の商品・サービスがヒットしたとしても、大きな資本力で多分野にわたって事業展開していることが多い大企業では、事業収益に与える影響が相対的に小さくなってしまい、株価上昇も限定的となってしまいます。

逆に中小型株などはひとつの商品・サービスのヒットが企業の大きな成長に繋がる可能性があるため、成長性・将来性が見込め、株価の大きな上昇が期待できます。

・時価総額が小さいためプロが入りづらい

保険会社や金融機関などに属する機関投資家は巨額の資金で株式の売買を行っています。そのため、時価総額の小さな企業の株式の取得を行うと、株式市場で購入可能な株式をすぐに買いつくしてしまい資金を効率的に運用できないばかりか、株価の急激な上昇により取得単価の高騰といった弊害も生じてしまいます。こうした事情から、中小型株はプロが積極的に関わってこないというメリットがあります。

・アナリストがカバーしていないことも多く投資チャンスが大きい

企業の経営戦略・状況がアナリストによって分析・発表されていると多くの投資家によって情報が共有され株価に織り込まれてしまいます。先述のとおり中小型株は時価総額の問題で機関投資家が参入しにくいため、アナリストがカバーしていないことも多く、情報が株価に反映されるまでの間に株式を取得することができれば大きな投資チャンスに繋がります。

2-3. 中小型株のデメリット(リスク)

・ボラティリティが高い

ボラティリティとは金融資産の値動きの変動率を指し、一般的にボラティリティが高いほどハイリスクと見なされます。中小型株は時価総額が比較的小さいため、大型株よりも値動きが激しくなる傾向があります。中小型株を取得する際はポートフォリオ戦略によりボラティリティを自身の許容リスク内に収めることが重要となります。

・金利上昇局面では売られる

市中金利の上昇は株価にとっては一般的にマイナス要因と見なされます。特に有利子負債が多い小規模な企業の場合は、金利上昇による資金繰りの悪化や利息負担の増加などが比較的大きく、経営に影響を与えると見込まれるため、金利上昇局面では大きく売り込まれる恐れがあります。

・単一セグメントの企業は、大手企業の参入等でビジネス基盤が崩れる可能性がある

特定の商品・サービスによってビジネスモデルを構成している企業で、充分な参入障壁が構成されていない場合、より資本力で勝る大手企業が参入した場合、市場競争力を維持できずビジネス基盤が崩壊し経営に大きな打撃を受ける恐れがあります。単一セグメントで事業展開をしている企業の株式を購入する場合は、その企業のビジネスモデルにどんな強みがあるのかよく調査することをおすすめします。

3. 中小型株を中心としたポートフォリオ戦略のポイント

中小型株は成長の可能性とアナリストによる情報の拡散速度から、成長株投資・割安株投資の両方の戦略を採ることができます。以下のポイントに注意し、株式銘柄を選別してみてはいかがでしょう。

3-1. リスクを抑えたいなら複数銘柄に分散投資する

中小型株は事業環境や業績の悪化などにより株価が低迷してしまうリスクや、近年多発する自然災害により事業所が被災する恐れもあります。中小型株は大きな成長の可能性を持っていますが、不安定さも持ち合わせています。

こうしたリスクを抑えるためには、単独銘柄に資金を集中させず、例えば1,000万円の投資資金ならば3〜4銘柄に分散して投資するなどの方針を採るとよいでしょう。

3-2. 相関性のある銘柄構成を避ける

不動産と建築など、事業分野が似通っているなどで相関性が強く、市況の変化でポートフォリオ内に組み込んだ銘柄が同じ方向に連動して動いてしまうとリスク分散の効果が減少してしまいます。銘柄を選別する際は過去のチャートなどを確認し、株価が連動していないかをチェックしましょう。

3-3. 独自性が高く参入障壁を築けている銘柄を保有

中小型株の企業のなかでも、ニッチな業種や独自のビジネスモデル、優れたアイデアを事業収益に結び付けられるなどのマネタイズに優れた企業は今後大きな成長が見込めるため積極的に保有することを検討したい銘柄といえます。

しかし、特定のサービス・商品がヒットした場合、他企業がぞくぞくと参入し収益環境が悪化してしまう恐れがあります。特定の資格やノウハウがないと参入できないなどビジネスモデルに「参入障壁」が構築できていると安定した成長が見込めるため、こうした銘柄は長期保有でより大きなリターンが得られる可能性があります。

4. ポートフォリオは定期的に「リバランス」でメンテナンスしよう

株式を含めた金融資産は、時間経過とともに価格が変動し、当初定めたポートフォリオの割合から徐々に外れていってしまい、分散投資によるリスクコントロールの効果が薄れてしまいます。これを防ぐため、当初定めた投資比率に戻す「リバランス」を定期的に行う必要があります。

4-1. リバランスとは?

金融商品の価格変動に伴い、ポートフォリオで定めた投資比率に戻す作業がリバランスとなりますが、実際にはポートフォリオを確認し、値上がりしすぎた金融商品を売却し、値下がりしている金融商品を買い増すことになります。

ただし、値上がりした金融資産を売却して利益確定を行うと、売却益に対し所得税・住民税が課されるため注意しましょう。

4-2. リバランスのタイミング

分散投資を行っていくうえでリバランスは重要なポイントですが、あまり頻度が多いと売買手数料によるコストが大きな負担となってきます。

リバランスは複数の金融資産にまたがる場合は1年を目安に行えば充分ですが、変動の大きい中小型株をメインとしたポートフォリオを組んでいるのであれば3ヵ月程度を目安とし、決算や好・悪材料などで株価が大きく変動し、当初定めた投資比率を大きく外れてしまった場合は都度リバランスを行うとよいでしょう。

4-3. リバランスの注意点

株式投資をメインとする場合、成長によって大きく株価があがることもあれば、逆に決算が悪かったり、事件や不祥事などにより株価が大きく下落する場合もあります。

こうした場合、損失回避の投資家心理により利益確定は早く、損切りは遅くなりがちです。株価が大きく上昇しても今後も成長を見込めるのであれば、保有を継続し「利大損小」に注意していくことが重要といえるでしょう。

5. まとめ:株式のポートフォリオにもさまざまな種類がある

国内外株式や先進国・新興国、大型株・中型株・小型株など、ひとくちに株式といってもその性質は千差万別であり、分散投資の視点からポートフォリオを組む意義は大きいと言えます。最後に、本稿の要点である2点についておさらいしましょう。

・リターンを積極的に狙いたいなら中小型株の銘柄の組み込みを検討する

株式は発行済み株式数・時価総額・流動性の高さによって大型株・中型株・小型株に区分されており、大型株は株価が変動しづらいため、比較的リスク・リターンが低い銘柄といえます。

株式投資でより積極的にリターンを狙いたい場合は、成長などが期待できる中小型株をポートフォリオに組み込むことも選択肢のひとつです。

・定期的にポートフォリオの見直しを

中小型株をメインとする場合、リスク分散の観点から複数銘柄への投資がポイントですが、株価は日々変動するうえ中小型株はボラティリティも高くなっているため、放置していると特定の銘柄に資産が集中してしまい、リスクの分散効果が薄れてしまう恐れがあります。定期的にポートフォリオの見直しを行い、必要に応じてリバランスを行うよう心がけましょう。

文・菊原浩司