注目銘柄「ユニバンス」(東2・7254)を分析

自動車向けおよび産業機械車両向け の駆動系ユニットの専門メーカー

ユニバンスは、1937年創業の駆動系ユニットの専門メーカーです。駆動系伝達機構や変・減速機ユニットといった製品のほか、ギヤ、シャフト等の単品製品を生産・供給しており、米国、インドネシア、タイの3カ国に工場を構えています。ちなみに、同社は自動車向けの印象が非常に強いものの、農業トラクターやクローラー、コンクリートミキサーなど産業機械 車両向けの部品も手掛けています。

なお、顧客の中では日産自動車、Ford Motor Companyおよび本田技研工業への依存度が高く、最新の2021年3月期実績において、3社合計の販売高は317億8,800万円、総販売実績に対する割合は68.7%となっている状況です。

社名のユニバンス(UNIVANCE)には、独自(UNIQUE)の技術力で開発した駆動系ユニット(UNIT)等の商品を世界(UNIVERSAL)のユーザーに届ける、常に前進を続ける(ADVANCE)技術者集団(UNITED)という意味が込められています。また、「常に今よりも高きものに」を創業の精神として尊び、「わたくしたちは人間尊重をもとにたえまない革新を通じ、人びとの幸せづくりに貢献します」という企業理念を掲げて事業活動を展開しています。

2022年3月期は、黒字転換と増配が視野に

2021年3月期については、売上高が前期比17.8%減の462億4,900万円、営業損失は6億6,100万円、最終損失は13億1,300万円で着地しています。新型コロナウイルスの感染拡大により、同社顧客である自動車メーカーが軒並み著しい操業低下に陥る事態となったことが最大の要因です。特に年度当初から上期にかけての影響が大きく、下期に徐々に市場環境が回復したものの、上期の落ち込みをカバーするには至りませんでした。ただ、期初計画に対しては、2021年2月9日付で上方修正を発表した通り、構造改革の効果発現なども相まって大きく上ブレする結果になりました。

2022年3月期の見通しは、売上高が480億円、営業利益は20億円、最終利益は14億円を計画しています(※「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等を適用するため、前期比較はなし)。単純比較では、前期から増収、各利益段階で黒字転換する見通しです。変異株を含め、新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、ワクチン普及による経済活動正常化の動きが徐々に見られているものの、依然として不透明な状況が続くものと会社側は予想しています。半導体不足の影響もあって、日系自動車メーカーの6月の中国新車販売が苦戦するなど、足元においても依然として不透明な状況にあるとはいえ、基本的に同社を巡る環境は復調傾向がコンセンサスとなっています。

なお、配当については、2020年3月期、2021年3月期の業績苦戦を映して、2期連続での減配となっていました。ただ、構造改革も進捗し、新型コロナウイルスの影響が軽減する見通しであることもあって、2022年3月期は2018年3月期水準と同額となる年間6円(中間3円、期末3円)に設定しています。

EVに加えて、再生可能エネルギーのテーマ性も

そのほか、同社は「新規事業の創造(非自動車、非駆動系への進出)」「既存事業領域の拡販(電動系製品の事業拡大、既存商品の拡販)」「既存事業領域の収益力向上」「社会的課題の解決」の4つに取り組んでいく方針を示しています。

同社のEV(電気自動車)関連としてのテーマ性は既に知られているところであり、電動系製品の事業拡大については既定路線です。一方、同社がこれまでの事業展開の中で培ってきた駆動技術を転用し、再生可能エネルギー関連事業に参入することを『日刊自動車新聞』が報じています。風力発電向けの増速機などが対象となると見られており、今後の動向に注目していく必要がありそうです。EV関連のほか、再生可能エネルギー関連としてのテーマ性を強めてくることで、足元での株価バリュエーション面での割安感(PER 4倍台、PBR 0.3倍台)を修正してくる動きに期待したいところです。

(図=編集部作成、提供=楽天証券)


株価は昨年3月に150円を割り込んだものの、その後はリバウンド基調を強め、今年の3月には490円まで上昇しました。7月中旬現在、足元で調整を続けていますが、信用買い残高はこれまでの上昇過程で3倍程度に膨らんでいましたので、大きく買いに傾いた買い方の需給調整と見られます。

株価は底固めから本格リバウンドの態勢へ

同社の時価総額は70億円弱(※7月中旬時点)であるほか、低位材料株との位置づけで見られていることもあり、個人投資家の売買比率が高いと考えられます。そのため、割安な水準ではあるものの、まずは信用買い残高の需給整理の進捗を確認したいところです。

(図=編集部作成、提供=楽天証券)


なお、5月以降は350円辺りで上値を抑えられる一方で、300円辺りでの底堅さが見られてきているほか、信用買い残高は4月のピーク時からは順調に整理が進んでいます。そのため、300円近辺での底固めからのリバウンドのタイミング見極めがカギとなりそうです。足元では25日移動平均線に上値を抑えられていますので、これをクリアしてくるようですと、いったんはリバウンドを試す展開に。さらに、週足では320円近辺に13週、26週移動平均線が位置していますので、これを突破するようであれば、本格的なリバウンド入りのチャート形成となる可能性がありそうです。

文・村瀬智一(RAKAN RICERCA)