中級者のためのIPO株投資!セカンダリーで上昇率の高い銘柄の特徴

上場前に株を手に入れ、上場直後に売却するIPO株への投資は、ローリスクで大きなリターンを得やすい投資手法です。そのため、サラリーマンや主婦といった株式投資の初心者から経験豊富な投資家まで広く人気を集めています。IPO株への投資は、プライマリーマーケットで応募する方法だけでなく、上場後のセカンダリーマーケットで売買することもできます。今回はIPO株の概要とともに、セカンダリー投資を紐解いていきます。最後に、IPO株の配分を受ける(上場前に手に入れる)ポイントについても解説しますので参考にしてください。

目次

1. IPO株とは?

 1-1. IPO投資とは?

 1-2. IPO投資のメリット

 1-3. IPO投資のデメリット

2. 2020年にIPOした銘柄のパフォーマンスは?

3. 中級者のためのIPO投資!セカンダリーで勝負せよ

4. IPO銘柄で中小型株に投資をする際の注意点

5. IPO株の配分を受けるための5つのポイント

 5-1.ポイント1:なるべく多くの証券会社に口座を開設する

 5-2.ポイント2:抽選で配分してくれる証券会社から応募する

 5-3.ポイント3:IPOポイントを貯める

 5-4.ポイント4:主幹事の証券会社を選ぶ

 5-5.ポイント5:担当者と交渉する

IPO株への投資に挑戦してみよう

1. IPO株とは?

IPOとは、Initial Public Offeringの略で、一般的には「新規株式公開」もしくは「株式公開」と呼ばれます。少数株主に限定されている非上場会社の株式を証券取引所(株式市場)に上場させて、株式市場での売買を可能にすることです。

具体的には、新たに株券を発行して株式市場から資金を調達する「公募増資」や、以前から株主に保有されていた株式を市場に放出する「売出し」があります。

一般的にIPO株とは、このIPOによって公開される株のことを指します。

1-1. IPO投資とは?

IPO投資とは、IPO株に投資することです。具体的には、プライマリーマーケット(公募増資や売出しの公開価格)で購入して、セカンダリーマーケット(公開後の初値など)で売却することを指します。ただし、上場後にセカンダリーマーケットで購入して、タイミングを見て売却することも広義のIPO投資といっていいでしょう。

IPO投資というと、一般的にはプライマリーマーケットで購入する前者のパターンを指すことが多いですが、セカンダリーマーケットで購入する後者のパターンでも、やり方次第では十分に投資妙味があります。

1-2. IPO投資のメリット

ここからは、IPO投資のメリットを解説していきます。
*以下、IPO投資=プライマリーマーケット(IPOの場合は公募増資や売出しなど)で購入して、セカンダリーマーケット(公開後の初値など)で売却することとします

IPO投資の最大のメリットは、ローリスクでハイリターンが期待できる可能性が高いことです。

必ず儲かるとは言い切れませんが、過去のデータを見る限り利益が出る確率は非常に高いといえます。なぜならIPOの公開価格は、割安に設定されることが多いからです。理由はいくつかあります。具体的には、次のようなことが挙げられます。

・IPO銘柄は市場で流通していないので流動性が低く、かつ情報量も少ないため(=リスクが高い)、類似業種に比べてやや割安に評価する必要がある
・上場に必要な株主数を満たすために、多くの個人投資家に買ってもらう必要がある(割安なほうが買ってくれやすい)

公開価格の基本的な決め方は、事業内容が類似する企業の財務指標などと比較したうえで、適正株価を算出し、そこから一定割合をディスカウント(IPOディスカウント)します。

ディスカウントの比率はIPOする企業の知名度や財務状況、上場する市場などによって異なりますが、10〜30%ほどに落ち着く傾向があります。また、購入時に手数料がかからないこともメリットといえます。

1-3. IPO投資のデメリット

IPO投資のデメリットには、当然ながら元本割れのリスクがあることが挙げられます。IPO投資は利益が出る確率が高い投資手法ですが、必ず儲かるわけではありません。

また、IPO投資は人気が高く、なかなか手に入らないこともデメリットといえるでしょう。

対面型の証券会社の場合は「普段からお世話になっている(=たくさんの手数料をいただいている)顧客」や「懐が深くてお近づきになりたい(=今後たくさんの手数料をいただける可能性がある)顧客」などに優先して配分(裁量配分)される傾向があります。

一方、ネット証券の場合は、対面型証券会社のような配分ではなく「完全な抽選」というケースもあります。そのためIPO株を配分されるには、競争率が高くなることが多く、抽選に申し込んでもなかなか当選しません。また証券会社によっては、「配分があるかないか」が判明するまで、口座の資金が拘束されてしまい、他の収益機会を逃してしまう可能性があります。

また、配分される株数は1単元(100株)や2単元(200株)など少ない株数であることが多く、配分を受けることができたとしても、利益の絶対値がそこまで大きくなりづらいこともデメリットといえるでしょう。

2. 2020年にIPOした銘柄のパフォーマンスは?

それでは、2020年にIPOした銘柄のパフォーマンスを確認してみましょう。2020年に初値上昇が目立った銘柄を5つ紹介します。

銘柄コード銘柄名公募・売出価格初値上昇率
4011ヘッドウォータース2,400円2万8,560円1,090%
4052フィーチャ520円4,710円806%
2987タスキ670円5,060円655%
7352Branding Engineer490円2,920円496%
4056ニューラルポケット900円5,100円467%

ヘッドウォータース<4011>は、なんと初値で売却した場合のIPO投資でテンバガー(株価が10倍になること)を達成しました。

続いて、2019年に上場した銘柄について、初値と2020年終値(2020年12月30日終値基準)を比べてパフォーマンスが良かった銘柄を見てみましょう。

銘柄コード銘柄名初値2020年終値初値対2020年終値
上昇率
4477BASE1,210円9,760円706%
4880セルソース6,020円
(1:3の分割前)
1万860円224%
4488AI inside1万2,600円7万3,400円482%
7065ユーピーアール4,000円
(1:5の分割前)
3,565円345%
4485J TOWER2,620円1万700円308%

ヘッドウォータース<4011>ほどではありませんが、BASE<4477>は初値から700%以上も上昇しました。その他にも、何倍にもなっている銘柄が存在します。

ここまで合わせて10銘柄を紹介しました。これらの銘柄に共通する特徴は、「あまり一般的ではない中小型銘柄が多い」ということが挙げられます。「これらの10銘柄をすべて良く知っている」という人はあまりいないのではないでしょうか。

一般的に中小型株銘柄は時価総額が低いため、IPO時の市場からの吸収金額も小さくなります。IPO株にとって「市場からの吸収金額が小さい」ということも、大幅な上昇が期待できる共通した特徴の1つといえるでしょう。

また、次のような時流や時代のトレンドに対応した事業領域の企業も目に付きます。

・AI関連銘柄
・バイオ関連銘柄
・巣ごもり需要銘柄
・自動運転銘柄 など

このような事業領域の企業は、IPO後の上昇率が大きい傾向にあるといえるでしょう。

3. 中級者のためのIPO投資!セカンダリーで勝負せよ

IPO株の投資は魅力的ですが、その配分は自分の意思で何とかできるものではありません。そこで検討したいのが「セカンダリー投資」です。これは前述のとおり、上場後にセカンダリーマーケット(公開後の初値など)で購入して、タイミングを見て売却する方法のことです。

セカンダリー投資では、実際にどれくらいのパフォーマンスをあげられるのでしょうか。ここからは、2020年にIPOした銘柄で、初値からのセカンダリー投資のパフォーマンスが高い銘柄を紹介します。

▽2020年のIPO銘柄 初値対高値(セカンダリーマーケット)上昇率上位のうち5社
(※2021年6月執筆時点)

銘柄
コード
企業名上場日公募価格初値高値
(終値ベース)
初値
対高値
7317松屋アールアンドディ2020年4月6日910円838円7,690円約9.18倍
7094NexTone2020年3月30日1,700円1,660円1万1,650円約7.02倍
4051GMOフィナンシャルゲート2020年7月15日2,540円6,550円2万9,290円約4.47倍
4493サイバーセキュリティクラウド2020年3月26日4,500円9,210円3万8,050円約4.13倍
4055ティアンドエス2020年8月7日2,800円7,010円2万8,920円約4.13倍

各銘柄ともに1年も経過しないうちに初値から4倍以上の高値が付いています。このように、セカンダリー投資であっても高いパフォーマンスをあげる銘柄も存在します。

これらの銘柄の特徴として注目すべき点は、初値が「公開価格割れしている」か「公開価格からの上昇が比較的低い」ことが挙げられます。上記のようなセカンダリー投資は、初値に対する上昇率がポイントとなります。そのため、発射地点である初値が低いほうがパフォーマンスは稼ぎやすいと考えられます。

もちろん、初値をつけた後になかなか株価が上昇しないIPO銘柄や公募割れしても上昇しない銘柄もあります。上の表はあくまでも最高値で売却できたと仮定した結果論でのパフォーマンスです。

一方で2020年の実績からも、セカンダリー投資でも十分に利益が狙えることがわかるはずです。

4. IPO銘柄で中小型株に投資をする際の注意点

IPO銘柄で中小型株に投資する際の注意点には、どのようなことが挙げられるのでしょうか。

中小型株が上場することが多いのは、マザーズ市場やジャスダック市場といった新興企業向けの市場です。このような新興市場に上場している銘柄は、株価のボラティリティ(変動幅)が高く、株価がジェットコースターのような動きになることも少なくありません。

日経平均株価採用銘柄の株価動向と同じ感覚で、中小型株に投資することは控えたいところです(もちろん、日経平均株価採用銘柄でもジェットコースターのような動きをすることはありますが、新興市場のほうが起こりやすい傾向にあるということは認識しておきましょう)。

また、金融機関のアナリストがカバーしていない銘柄もあり、市場参加者には個人投資家が多いため、銘柄への評価が大型株以上にばらつくこともあります。それゆえに収益チャンスが大きいともいえますが、買われるときも売られるときも、大型株以上の「行き過ぎ」が発生しやすいのが新興市場です。

5. IPO株の配分を受けるための5つのポイント

セカンダリー投資は方法によって十分に利益を狙えるとはいえ、やはり多くの人は、プライマリーマーケット(公募)でIPO株を手に入れたいはずです。

では、IPO株の配分を受けるためにはどうすればよいのでしょうか。最後に、IPO株の配分を受けるための5つのポイントを解説します。

5-1.ポイント1:なるべく多くの証券会社に口座を開設する

IPO株の配分を受けるためには、幹事証券に口座を開設する必要があります。したがって、なるべく多くの証券会社に口座を開設し、「IPO株に応募する回数」を上げることが重要です。とくに抽選の場合は確率の話になりますので、当選確率を少しでも上げられるよう毎回欠かさず応募するようにしましょう。

5-2.ポイント2:抽選で配分してくれる証券会社から応募する

対面型証券を中心に、裁量配分が認められている証券会社では、証券会社にとって優先度が高い顧客にIPO株が配分されがちです。そのため、証券会社にとって優先度が高い顧客にならないと配分が回って来にくいといえるでしょう。

一方で、公平な抽選で配分してくれる証券会社もあります。当然のことながら、資金量の少ない一般的な個人投資家の場合は「証券会社にとって優先度が高い顧客」にはなりにくいため、公平な抽選で配分してくれる証券会社から応募するのが近道です。

IPO株は、基本的に1社単独で配分されるわけではありません。「引受シンジケート団」といって、複数の証券会社で引き受けることが一般的です。そのため、引受シンジケート団の中で、公平な抽選を行っている証券会社から応募をするとよいでしょう。

5-3.ポイント3:IPOポイントを貯める

証券会社によっては、「IPOポイント」を設定している場合があります。IPOポイントとは、IPO株の抽選や配分に外れた回数に応じてポイントが加算されるポイントプログラムサービスです。

貯めたポイントは、次回以降のIPOの際に使用することで当選しやすくなります。このような証券会社で抽選に参加し続ければ、落選してもポイントが貯まり、次回以降の当選確率を上げることができるでしょう。

5-4.ポイント4:主幹事の証券会社を選ぶ

企業がIPOを行うときは、複数の証券会社が引受シンジケート団を形成すると述べました。その引受シンジケート団のリーダー的存在が「主幹事」の証券会社で、その名の通りIPO引受におけるメインの証券会社です。

一般的に、IPO株はこの主幹事証券会社に最も多く配分されるため、その主幹事証券会社を中心に応募することにで、配分される確率を高めることが期待できます。

5-5.ポイント5:担当者と交渉する

ここまで何度も述べている通り、裁量配分が認められている証券会社では、証券会社にとって優先度が高い顧客にIPO株が配分されることが多くなっています。裁量配分が多い傾向の証券会社であれば、担当者と交渉することで、IPO株を配分してもらえるかもしれません。

もちろん、担当者も仕事ですから、担当者にメリットがないお願いは聞いてもらえない可能性もあります。担当者と交渉するときは、担当者がいま何を求めているか理解し、そのニーズを満たしてあげることが重要です。

あくまで一例ですが、証券会社の担当者は以下のような項目においてノルマを抱えている場合がある点は、押さえておくとよいでしょう。

・手数料
・新規資金
・保険やラップなど特定の金融商品

IPO株への投資に挑戦してみよう

IPO株に投資するときは、まずはプライマリーマーケットでの配分を狙い、外れたらセカンダリーマーケットで売買すべきか考える、という順で挑戦してみるとよいでしょう。ここまで解説してきた通り、2020年の実績からも、セカンダリー投資で利益を狙うことは十分に期待できます。この記事を参考にしながら、あなたもIPO株への投資をしてみてはいかがでしょうか。

文・菅野陽平