脱炭素関連銘柄7選! 投資家の注目を集めているテーマは?
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世界的に「脱炭素」の流れが加速する中、脱炭素を含む環境産業の市場規模は今後拡大が続く見込みで、脱炭素関連銘柄は株式投資の銘柄選びの際の有力な選択肢になりつつあります。この記事では脱炭素の動きの基礎知識や関連銘柄、注目のテーマなどを解説します。
目次
1.「脱炭素」とは?
1-1. 脱炭素の概要
1-2. 脱炭素が注目されている背景
1-3. 脱炭素ビジネスの規模、将来性
2. 脱炭素はビジネスの裾野が広い注目のテーマ
2-1. パワー半導体
2-2. 半導体(マイコン・プロセッサー・MRAM)
2-3. 再生可能エネルギー
2-4. アンモニア関連
2-5. 洋上風力発電
3. 脱炭素銘柄7選
3-1. ティアンドエス(マザーズ/4055)
3-2. エフオン(東1/9514)
3-3. ENECHANGE(マザーズ/4169)
3-4. グリムス(東1/3150)
3-5. エスプール(東1/2471)
3-6. イーレックス(東1/9517)
3-7. サニックス(東1/4651)
4. 脱炭素銘柄に投資をする場合の注意点
4-1. ビジネス自体が確立されていないケースもあり不安定
4-2. 大企業が多く、中小型株の銘柄だとあまり対象銘柄が無い
5. まとめ:魅力的な中小型株の銘柄が今後登場するケースもある
1.「脱炭素」とは?
そもそも脱炭素とは、どのような状態をゴールとして定めているのでしょうか。
1-1. 脱炭素の概要
脱炭素は、二酸化炭素(CO2)などの「温室効果ガス」の排出量と、森林による吸収分などがイコールとなる状態をゴールとします。つまり排出量と森林による吸収分などが実質的に差し引きゼロになれば、脱炭素という目標が達成されたことになります。
脱炭素は「カーボンニュートラル」(炭素中立)とほぼ同様の意味 目的で使われており、2050年までのカーボンニュートラルを目標として表明した国が、2021年4月時点ですでに126ヵ国・地域に上っていることには注目したいところです。
つまり世界はいま、脱炭素に向けて急速にギアを上げているわけです。日本もこの126ヵ国・地域に含まれており、日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しています。
1-2. 脱炭素が注目されている背景
脱炭素が注目されている背景には、人類としての脱炭素の必要性の高さがあります。温室効果ガスの排出量が増える限り気温は上がり続け、温暖化がもたらすさまざまな気候変動が人類の生存を脅かすと言われています。
人類はこれまでの発展の歴史の中で、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を燃やし続けてきました。そして自然の生態系に吸収されない二酸化炭素が大気中に残り、その結果として地球の表面大気の温度が上昇していると、「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)によって結論付けられています。
上記のような必要性から、世界的に脱炭素の動きが最近になって一層加速し、投資テーマとしての注目度も高まっているわけです。脱炭素は息の長いテーマということもあり、中長期的な目線での投資先としても関心が高まっています。
1-3. 脱炭素ビジネスの規模、将来性
脱炭素に関連するビジネスや市場の規模は、各国政府による積極的な財政出動もあり、今後長きにわたって拡大の一途をたどると考えられています。
環境省が2020年7月に公表した「環境産業の市場規模・雇用規模等に関する報告書」によれば、脱炭素に関連するビジネスを含む環境産業の国内市場規模は2018年時点で105兆3,000億円。そしてこの市場規模が、2050年には133兆4,674億円まで拡大すると推計されました。
この報告書では、「環境汚染防止」「地球温暖化対策」「廃棄物処理・資源有効利用」「自然環境保全」の4つのカテゴリーにおけるそれぞれの市場規模も推計しており、その中で2050年に最も市場規模が大きなカテゴリーが「地球温暖化対策」となっています。
このことは、温暖化対策に関連する脱炭素ビジネスが非常に有望であるという、ひとつの根拠となるでしょう。
2. 脱炭素はビジネスの裾野が広い注目のテーマ
「脱炭素」と一言で言っても、そのビジネスの裾野は非常に広く、さまざまなテーマに細分化できます。
2-1. パワー半導体
脱炭素の有力なテーマのひとつが「パワー半導体」です。
パワー半導体とは、モーターや照明などの電圧や電流の制御などを司る半導体のことで、パワー半導体によってさまざまな機器の省エネ性能を高めることが可能になってきます。このことから、パワー半導体は「省エネの黒子」などとも呼ばれることもあります。
現在、世界的にガソリン車からEV(電気自動車)へのシフトが進んでおり、この自動車の電動化においてもパワー半導体が省エネのキーデバイスとなります。また再生可能エネルギーの分野でもパワー半導体の需要が今後増え続けるとみられています。
こうした中、パワー半導体で世界最大手の独・インフィニオンテクノロジーズは、新たに16億ユーロ(約2,100億円)を投じてオーストリアに新工場を立ち上げるなど、事業投資を活発化させています。
2-2. 半導体(マイコン・プロセッサー・MRAM)
エネルギー消費を抑えることにより、脱炭素の達成に近付きます。
自動車が電動化し、EVが自動運転化されると、EVの電池のエネルギー消費はさらに抑えられます。手動運転よりも自動運転の方が、エネルギー効率が高い運転操作をAI(人工知能)によって実現できるからです。
そしてこの自動運転を達成するために需要が高まるのが、車載半導体です。パワー半導体は電圧や電流の制御などを行う半導体のことでしたが、自動運転で必要とされる半導体は、「走る」「曲がる」といった動きを制御する「マイコン」、どのような運転操作をすべきかを判断するための「プロセッサー」などです。
このほか半導体としては、消費電力を抑えつつ電子機器の性能を向上させることが可能な次世代半導体メモリー「MRAM(磁気抵抗メモリ/Magnetoresistive Random Access Memory)」に対する注目度も高まっています。
2-3. 再生可能エネルギー
脱炭素を実現するために不可欠なのが、「再生可能エネルギー」の推進です。再生可能エネルギーである「太陽光発電」「風力発電」「バイオマス発電」などは、発電時に温室効果ガスを排出しないからです。
日本政府も再生可能エネルギーの推進に積極的です。2021年10月には国の「エネルギー基本計画」の見直し案が閣議決定され、2030年度の電源構成における再生可能エネルギーを現在の2倍程度の水準、割合にして36%〜38%に引き上げるという目標を掲げました。
経済産業省はこの閣議決定を受け、関係省庁と連携しながら全力を挙げてエネルギー政策に取り組んでいくことを表明しています。
2-4. アンモニア関連
石油や石炭などの化石燃料は、燃焼させることでエネルギーを生み出します。しかし、燃焼時に二酸化炭素を排出するため、温暖化を加速させる要因となってきました。一方、「アンモニア」は燃焼時に二酸化炭素を出さないため、脱炭素に貢献します。
化石燃料の代替燃料としては水素も注目を集めていますが、アンモニアは水素よりも低コストで発電が可能なこともポイントです。これまでに公表されている試算のひとつでは、アンモニアの発電コストは水素の約4分の1にとどまるとされています。
2-5. 洋上風力発電
先ほど、発電時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーが注目を集めていることを説明しましたが、その中でも特に最近関心が集まっているのが「洋上風力発電」です。洋上風力発電では、発電のための風車を海上に設置します。
これまで風力発電は地上に設置するのが当たり前でしたが、特に日本など山岳地域が多い国では、風力発電で活用できる土地は限られています。一方、海は広大であり強い風が安定して吹くことから、風力発電を増やす切り札として注目されています。
3. 脱炭素銘柄7選
ここまで脱炭素に関する基礎知識を包括的に解説してきました。続いて、日本の株式市場に上場する脱炭素銘柄を7銘柄紹介します。いずれの銘柄も脱炭素の旗手として注目度が高まりつつある企業です。
今後の成長期待度を考慮し、時価総額2,000億円以下の中小型株の銘柄を中心にスクリーニングしました。
3-1. ティアンドエス(マザーズ/4055)
ティアンドエスは、この記事でも紹介した「MRAM」に関連するソフトウェア開発を進めている企業です。MRAMの実用化に向け、この分野でリードする東北大学と研究開発を開始しており、MRAM関連の有望銘柄として注目されています。
▽ティアンドエスの概要
時価総額 | 152億6,640万円(2021年10月28日時点) |
売上高 | 22億6,600万円 |
営業利益 | 3億400万円 |
経常利益 | 3億400万円 |
純利益 | 2億3,600万円 |
年初来高値 | 6,650円(2021年1月7日) |
年初来高値からの騰落率 | −39.8% |
※年初来高値は2021年10月28日時点
※年初来高値からの騰落率は、2021年10月28日終値と比較
3-2. エフオン(東1/9514)
エフオンは、省エネルギー支援事業やバイオマス発電事業を展開している企業です。バイオマス発電も再生可能エネルギー源として大きな注目を集めており、すでにグループで日本国内4ヵ所の発電所を有しています。
▽エフオンの概要
時価総額 | 178億7,181万円(2021年10月28日時点) |
売上高 | 131億4,400万円 |
営業利益 | 25億8,400万円 |
経常利益 | 23億9,700万円 |
純利益 | 16億7,300万円 |
年初来高値 | 1,359円(2021年1月8日) |
年初来高値からの騰落率 | −39.2% |
※年初来高値は2021年10月28日時点
※年初来高値からの騰落率は、2021年10月28日終値と比較
3-3. ENECHANGE(マザーズ/4169)
エネルギーを技術革新により推進し、より良い世界を創出することを掲げているのが、マザーズ上場のENECHANGE。データを活用してエネルギー効率利用を促進するサービスを展開しており、大手企業による採用実績も豊富です。
▽ENECHANGEの概要
時価総額 | 748億3,175万円(2021年10月28日時点) |
売上高 | 17億1,300万円 |
営業利益 | 5,300万円 |
経常利益 | 600万円 |
純利益 | △1,600万円 |
年初来高値 | 6,050円(2021年10月19日) |
年初来高値からの騰落率 | −9.9% |
※年初来高値は2021年10月28日時点
※年初来高値からの騰落率は、2021年10月28日終値と比較
3-4. グリムス(東1/3150)
グリムスは、省エネ設備や太陽光発電システムの販売を手掛けている企業で、各家庭でエネルギーを自家消費するスマートハウスプロジェクト事業にも取り組んでいます。創業から16期連続増収を記録している優良企業です。
▽グリムスの概要
時価総額 | 631億4,327万円(2021年10月28日時点) |
売上高 | 193億1,100万円 |
営業利益 | 16億5,000万円 |
経常利益 | 17億4,500万円 |
純利益 | 11億2,000万円 |
年初来高値 | 3,205円(2021年9月17日) |
年初来高値からの騰落率 | −16.1% |
※年初来高値は2021年10月28日時点
※年初来高値からの騰落率は、2021年10月28日終値と比較
3-5. エスプール(東1/2471)
物流分野における二酸化炭素の排出量の削減に取り組んでいるのが、エスプールです。環境などに配慮したESG(環境・社会・ガバナンス)のグローバル基準を満たしている企業として、2021年6月には世界的なESG指数 「FTSE Blossom Japan Index」の構成銘柄に選定されました。
▽エスプールの概要
時価総額 | 1,002億6,052万円(2021年10月28日時点) |
売上高 | 210億900万円 |
営業利益 | 22億2,800万円 |
経常利益 | 22億2,900万円 |
純利益 | 15億8,000万円 |
年初来高値 | 1,283円(2021年10月26日) |
年初来高値からの騰落率 | −1.1% |
※年初来高値は2021年10月28日時点
※年初来高値からの騰落率は、2021年10月28日終値と比較
3-6. イーレックス(東1/9517)
イーレックスは日本有数のバイオマス発電事業者です。日本国内で続々とバイオマス発電所の営業運転を開始しているほか、2021年10月にはベトナムのバイオマス発電事業への出資・参画も発表し、勢いに乗っている印象です。
▽イーレックスの概要
時価総額 | 1,521億9,591万円(2021年10月28日時点) |
売上高 | 1,418億8,500万円 |
営業利益 | 157億2,000万円 |
経常利益 | 148億5,200万円 |
純利益 | 62億8,500万円 |
年初来高値 | 3,320円(2021年8月5日) |
年初来高値からの騰落率 | −22.6% |
※年初来高値は2021年10月28日時点
※年初来高値からの騰落率は、2021年10月28日終値と比較
3-7. サニックス(東1/4651)
サニックスは、ソーラー・エンジニアリング事業を通じて再生可能エネルギーの普及・拡大に貢献しているほか、循環型社会の実現に寄与する廃棄物リサイクル事業などを展開しています。経済産業省が発表した脱炭素社会に挑戦する企業リスト「ゼロエミ・チャレンジ企業リスト」に掲載されている企業です。
▽サニックスの概要
時価総額 | 164億8,584万円(2021年10月28日時点) |
売上高 | 494億1,600万円 |
営業利益 | 23億2,500万円 |
経常利益 | 20億9,100万円 |
純利益 | 19億6,500万円 |
年初来高値 | 420円(2021年6月17日) |
年初来高値からの騰落率 | −19.8% |
※年初来高値は2021年10月28日時点
※年初来高値からの騰落率は、2021年10月28日終値と比較
4. 脱炭素銘柄に投資をする場合の注意点
脱炭素銘柄を7銘柄紹介してきましたが、こうした銘柄への投資においては注意点もあります。
4-1. ビジネス自体が確立されていないケースもあり不安定
脱炭素に関連するビジネスは息の長いビジネスですが、ビジネス自体がまだ確立されておらず、いまのところ採算が取れていない事業も多々あります。そのため、株価の値動きが不安定になるリスクも含んでいます。
4-2. 大企業が多く、中小型株の銘柄だとあまり対象銘柄が無い
脱炭素ビジネスは事業規模が大きくなりがちであるため、脱炭素銘柄として数えられる中小型株の銘柄はあまり多くありません。
5. まとめ:魅力的な中小型株の銘柄が今後登場するケースもある
前述の通り、脱炭素ビジネスは裾野が広いものの、いまのところは関連銘柄としては大企業が多いのが現状です。もちろん、かといって中小型株の銘柄が無いかといえばそうではなく、再生エネルギー関連を中心に中小型株の銘柄は存在しています。
一方で脱炭素市場の有望性から、将来的にはかなりの数のベンチャー企業やスタートアップが誕生し、株式市場に相次いで上場する時期も訪れるはずです。
そうしたタイミングでは関連銘柄の相場が大きく値上がりすることも考えられるため、今から脱炭素市場に対するウォッチを始めておきたいところです。
文・岡本一道